大きなストレスを抱えているときは体調が崩れがち。疲労やイライラを感じたり、体重が増えたりもするけれど、その原因は体内のストレスホルモンにあるみたい。でも、そう聞いて不安になると症状が悪化するので落ち着いて。それに、ストレスによる体重増加は生活習慣の改善で抑えられる。

米国のウェルネス施設Pritikin Longevity Centerの指導者で内分泌学者のマリア・テレサ・アントン医学博士によると、最近よく聞く“コルチゾール失調症”は造語であって、そのような疾患は存在しない。にもかかわらず、「その間違った情報に振り回されている人は多い」そう。そのため、この記事では、ストレスホルモンの働きとストレスホルモンが体重に影響を及ぼす理由、そしてコレステロール値の上昇に伴って現れるサインを説明してから、コルチゾール値を自分でコントロールする方法を見ていきたい。

コルチゾールとは?

健康管理支援サービス9amHealthのチーフメディカルオフィサーで内分泌学者のアヴァンティカ・ウェアリング医学博士によると、コルチゾールはストレスを管理するために体内で分泌される大事なホルモンの1つ。「コルチゾールは体内に常在しますが、その量は時間帯や全体的なストレスレベルに応じて増減します」

ウェアリング博士いわくコルチゾールは血圧と血糖値にも影響を与える。「ストレス下の体は平時より多くのエネルギーを必要とするので、コルチゾールは肝臓と筋肉を刺激します。そうすると、グルコース(ブドウ糖)が作られて血中に分泌されるため、体のエネルギーニーズが満たされます」。コルチゾールが分泌されると血圧も上昇するので、心臓からより多くの血液が吐き出され、素早く筋肉に送られる。ウェアリング博士によると、これはすべて体をストレスフルな状況に備えるため。

米メモリアル・ヘルマン・ヘルスシステムの内分泌学者アンドレス・スプレンサー医学博士によると、コルチゾールのレベルは1日を通して変化するもので、そこには多数の要素が関係している。通常、コルチゾールの産生は私たちが目覚めるより早く始まる。そのおかげで私たちは、体内のシステムが準備万端の状態で1日を始められる。そして、コルチゾールの産生量はストレスの少ない夕方から夜にかけて減少する。「人間の体は、概日リズムに沿った活動、つまり日の出と共に始まって日没と共に終わる生活を好みます。ですから、コルチゾールのレベルも、日中にピークを迎え、私たちがリラックスして眠る頃には下がっているのが自然です」

スプレンサー博士によれば、病気や偏った食生活、寝不足などの外的要因で体がストレスを感じていると、コルチゾールの産生量が一時的に増加する。精密医療クリニックThe Comite Center for Precision Medicine & Healthy Longevityの創設者で内分泌学者のフローレンス・コミテ医学博士によると、コルチゾールレベルは、ストレスだけでなく運動や感染症、肥満や薬の影響も受ける。

コルチゾールが体重に影響を与える仕組み

スプレンサー博士によると、平時あるいは正常な状態でコルチゾールが食欲に影響することはない。「でも、寝不足や心配しすぎでストレスを感じると、コルチゾールの産生量が増加して、過剰な空腹感をもたらします」。コルチゾール値が高い状態が長く続くと、体重増加、インスリン抵抗性、2型糖尿病、高血圧のリスクが高まる。

アントン博士いわくコルチゾールで体重が増える理由は複数あって、その1つはコルチゾールが代謝に関係しているから。「コルチゾール値が長期にわたって高くなると、高カロリーの食品に対する食欲が増し、おなか周りに余分な脂肪が蓄積します」。また、コルチゾールがインスリンを効率よく使う体の能力を抑制するので、インスリン抵抗や体重増加につながる可能性もある。

ストレス下の体としては、来るべき病気やケガに備えて、カロリーと脂肪をできるだけ溜め込んでおきたいところ。そのため「ストレス下で大量のコルチゾールが分泌されると食欲が増進し、体内で作られるグルコースの量が多くなります」とウェアリング博士。「グルコース値が上昇すると、体はインスリンの分泌量を増やさなければならなくなるので、結果的に余分なグルコースが脂肪として貯蓄されます」。コルチゾール値が高くなると、おなか周りに脂肪が付いて体重が増えるのはこれが理由。

コルチゾール値が高いことを示すサイン

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MirageC//Getty Images

ウェアリング博士いわくコルチゾール値は、ストレスが原因で高くなるケースと、体がコルチゾールを作りすぎて高くなるケースがある。「コルチゾールの過剰産生・分泌が続くと、腹部、顔、首に脂肪が付いて体重が増えることがあります。それに加えて、ニキビや筋力の低下、皮膚の変化や頭痛が生じることもあります」。診察の結果、コルチゾールの過剰産生・分泌が疑われる場合には、高い確率で血液、唾液、尿の検査が行われる。

一方、ストレスでコルチゾール値が一時的に高くなっているときは、疲労を感じ、健康的な食生活や運動を続けていても体重が減りにくくなる。「この場合は病院でコルチゾール値を調べるまでもありません」とウェアリング博士。「生活習慣の改善で十分にストレスを減らせるケースが多いです」

アントン博士によると、コルチゾール値が高いときは一般的に次のような症状が現れる。

  • 体重の増加(とくに腹部)
  • 疲労
  • 筋力の低下
  • イライラ
  • 集中力の低下
  • 慢性的なストレス

体内のコルチゾール値が慢性的に高い状態は、クッシング症候群を引き起こすことがある。コミテ博士いわくクッシング症候群は、肩の周辺に脂肪が溜まる、顔が丸くなる、皮膚に紫色の線が現れるといった症状を特徴とする疾患で、「高血圧、骨粗しょう症、糖尿病を引き起こすこともあります」

コルチゾール値を正しく測定するには、血液、尿、唾液の検査が必要になる。「コルチゾール値は1日を通して上がったり下がったりしますから、唾液を1日4回採取してパターンを特定するのがもっとも正確な方法ですね」とコミテ博士。

一方、コルチゾール値が低すぎるのも、慢性自己免疫疾患のアジソン病の存在を示していることがあるので注意が必要。「アジソン病の症状には、低血糖、低血圧、体重減少、脱水、筋力低下、腹痛などがあります」とコミテ医師は説明する。

コルチゾール値を安定させるには?

ウェアリング博士によると、コルチゾール値を自分で下げて安定させる方法はいくつかある。「これには、毎晩十分な睡眠を取る、頻繁に体を動かす、マインドフルな呼吸エクササイズや瞑想をする、栄養たっぷりでバランスのいい食生活を送ることなどが含まれます」。とりわけ、抗酸化物質が豊富な色とりどりの野菜とフルーツを取り入れた健康的な食事をしていれば、体内の炎症が収まって全体的なストレスが減る。

コミテ博士によると、瞑想、ヨガ、マッサージ、散歩といった回復力の高い習慣でストレスを管理すれば、睡眠の質が向上し、ストレスが軽減するので血糖値も安定してくる。アントン博士の話では、ある程度の境界線を引いてでもセルフケアを優先し、必要に応じてサポートを求めることも大切。

コルチゾールによる体重増加を防ぐには?

コルチゾールは体重増加の一因とはいえ、パズルの1ピースに過ぎない。「体重管理は、遺伝、代謝、生活習慣、環境といった多数の要素に影響される多面的なプロセスです」とアントン博士。でも、バランスの取れた生活を送りながらストレスとコルチゾールに対処すれば、体重を管理して、全体的な健康状態を改善するのも不可能なことじゃない。

ただし、副腎による過剰なコルチゾール産生が原因でコルチゾール値が上昇している場合は、医師の診断と治療を受けないと体重増加を防げない。「ほとんどの人は仕事や寝不足でコルチゾール値が少しだけ上昇します」とスプレンサー博士。「でも、その状態が長期化すると、体重が増えたり体重が減らなくなったりします」。その場合は、それが恐らく自分のライフスタイル、食生活、睡眠習慣の現れで、全体的な健康状態がよくないことを認識する必要がある。

生活習慣を改善するのに遅すぎるということは絶対ない。スプレンサー博士は1日に少なくとも7~8時間の睡眠を取り、ヘルシーな(地中海式やプラントベースの)食生活を送り、週に5日は30分の運動をするよう勧めている。
 

※この記事は、アメリカ版『Prevention』から翻訳されました。

Text: Madeleine Haase Translation: Ai Igamoto

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Madeleine Haase

Madeleine, Prevention’s assistant editor, has a history with health writing from her experience as an editorial assistant at WebMD, and from her personal research at university. She graduated from the University of Michigan with a degree in biopsychology, cognition, and neuroscience—and she helps strategize for success across Prevention’s social media platforms. 

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伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。