背筋を伸ばそう!

姿勢が悪いと首が凝ったり、肩が痛くなったりするのは周知の事実。そして最近の研究により、前かがみになっていると不平不満が増えることも分かってきた。だから、いますぐ顔を上げて! 姿勢の悪さが引き起こす意外な問題と、その対処法を見ていこう。

1.気分が落ち込む

米サンフランシスコ州立大学の研究チームが学生たちに廊下を猫背で歩くかスキップで進むように指示したところ、猫背で歩いた学生にはスキップをした学生よりも著しい気分の落ち込みと活力の低下が見られた。

でも、姿勢の専門家で著書に『Healing Yoga for Neck and Shoulder Pain』を持つヨガインストラクターのキャロル・クルコフ氏にとってはまったく驚くことじゃない。「姿勢と感情のつながりは私たちの言語にも表れていて、英語圏では意気地のない人をスパインレス(背骨がない状態)、意志の強い人をバックボーン(背骨そのもの)と言ったりします」

対処法:胸骨の真ん中にヘッドライトが付いていることを想像してみて。クルコフ氏によると、このヘッドライトは、あなたが座っているときも立っているときも前を照らしていなきゃダメ。その状態で頭を肩の中心に置き、アゴを上げずに頭を天井に向かって伸ばす。

2.キャリアアップが遠のく

前かがみの姿勢は、あなたの物の見方ばかりか、あなたという人物の印象にも悪影響を与えてしまう。「前かがみになり腰が曲がった状態で人のオフィスに入るのは避けたほうがいいですね。生き生きした印象を与えることができませんから」と話すのは、著書に『Posture, Get it Straight』を持つジャニス・ノヴァック氏。「姿勢を改善するためには、背中の真ん中の筋肉を鍛えなければなりません」

対処法:職場で猫背になりたくないなら、自分のデスクで次のエクササイズをしてみよう。肋骨の底を寛骨から3~5cm持ち上げて、左右の肩甲骨を寄せて下げる。この状態でシャツの襟と裾にリボンをピン止め。ノヴァック氏によると、このリボンがピンと張った状態を10分キープするといいそう。

3.お通じが悪くなる

「縮こまった姿勢でいると、腸も折り畳まれてしまいます」と説明するのは、カイロプラクティック、エクササイズ、マッサージなどの両方を組み合わせて姿勢を矯正するプログラムBodyZoneの考案者で、著書に『Stand Taller, Live Longer』を持つスティーブン・ウェイニガー氏。「そうすると、お通じが全体的に悪くなります」

対処法:ウェイニガー氏によると、ヨガとピラティスは体幹を鍛え、お通じを改善したいときにオススメのエクササイズ。コブラのポーズはとくに効果的。うつ伏せになって前腕に頭を乗せたら、おでこを浮かせて胸に体重をのせながら上を見る。頭を少し後ろに傾け、腕を誰かに引っ張られている感じで伸ばしながら、おなかをマットから離していく。

4.死亡と病気発症のリスクが高まる

オーストラリアの論文によると、25歳以降は(ソファで前かがみになりながら)テレビを1時間観るごとに寿命が21.8分縮んでしまう。また、座っている時間と健康状態の関係性を調べたイギリスの研究では、座っている時間がもっとも長い人はエクササイズをしていても糖尿病の発症リスクが倍以上になり、循環器疾患の発症リスクが147%も上昇するという結果が出ている。

対処法:この問題を防ぐべく、ノヴァック氏がテレビを観ながらでもできるエクササイズを勧めてくれた。方法は至って簡単ー手と腕を使わずに椅子から立って、ゆっくり動きをコントロールしながら座るだけ。「シンプルなエクササイズではありますが、下半身の筋肉を維持するのに役立ちます」

5.太って見える

ノヴァック氏によると、座っていると本当に太って見える。「現代人はもはや座ることが仕事です。でも、猫背になると内臓が落ちてきてしまうぶん太って見えます」

対処法:この場合も「立ち上がって動くだけです」とノヴァック氏。「立っていれば座っているときよりもカロリーが20%多く燃え、筋肉が鍛えられて、代謝がよくなり、骨密度が高くなります」

6.血行が悪くなる

ウェイニガー氏によると、私たちの体内では液体とガスが行ったり来たりしているので、長時間(にとく脚を組んだ状態で)座っていると血行が悪くなり、血圧が上昇するだけでなく、クモ状静脈が生じてしまうこともある。

対処法:ウェイニガー氏いわく下半身の血行改善には次のエクササイズが効果的。立った状態で姿勢を正し、片足を上げて太ももを床と平行にする。ヒザの伸ばしすぎに注意しながら立っている方の脚をロックして、強めの呼吸(自分の息で横隔膜を押し下げるイメージ)を5回したら反対の脚でリピート。

7.ストレスが溜まる

米ハーバード大学の研究では、参加者が胸を開いて背筋を伸ばすようにしたところ、テストステロン値が20%上昇し、コルチゾール値が25%低下した。逆に猫背でいた人はテストステロン値が10%低下し、コルチゾール値が15%上昇した。これは自信の低下とストレスの増加につながる。クルコフ氏によると、前かがみで座るのはさらに悪い。「胸で浅い呼吸をしていると、肺は体に十分な酸素を供給するため、いつも以上に速く動かなければならなくなります。また、その酸素を運ぶために必要な血液を供給する心臓もスピードアップを強いられます。ストレスで呼吸が浅くなり、それがストレスを増幅させるという悪循環です」

対処法:電話が鳴ったときや信号が変わったときは、それを合図に穏やかな腹式呼吸でストレスを撃退しよう。おへその下に手を当てて息を吸い、おなかが膨らむのを感じられれば深い複式呼吸ができている。「酸素交換がもっとも効率的に行われる肺の最深部まで空気を取り込みましょう」とクルコフ氏。その状態で息を吐けば、おなかが再び収縮し、ストレスが体から出ていく感覚を得られるはず。

 

※この記事は、アメリカ版『Prevention』から翻訳されました。

Text: Keely Savoie Translation: Ai Igamoto

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伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。