ワインを飲みすぎたり、スクラブで肌を擦りすぎてしまったにしても、顔がむくんでうれしい人はいない。でも、顔が腫れぼったくなる原因に心当たりがないときは? もしかすると、別の問題が起きているのかも。
テネシー州ナッシュビルを拠点とする家庭医のローラ・パーディ医学博士によると、たまに顔がむくむくらい大した問題ではない。ストレスを溜めていたり、水分が不足していたり、メイクをしたまま寝たり、お酒を飲みすぎたりするとむくみはカンタンに発現するもの。
でも、より深刻なのは、アレルギー反応によって突然顔が腫れてしまったとき。その場合、ワシントン大学医科大学院で皮膚科学と健康科学の教授を務めるアダム・フリードマン医学博士いわく、ステロイド外用薬で治療が可能なケースもあるが、通常は民間療法では治せないという。
重度の血管浮腫やアレルギー反応によって引き起こされる突発性の腫れがそのひとつで、顔と呼吸器の粘膜が影響を受けると呼吸困難に陥る可能性があり、命に関わる緊急事態にもなりかねない。
また、ニューヨーク市を拠点とする皮膚科医のマリサ・ガーシック医学博士によれば、顔のむくみは感染症、疾患、薬の副作用など、さまざまな原因によって引き起こされる。
顔のむくみで診察を受けたほうがいいときは?
触ると痛い、むくみが激しい、あるいは発熱、発疹、灼熱感、関節痛などの症状を伴う場合、これらは感染症による症状でもあるため医師の診察を受ける必要がある。パーディー医学博士いわく、むくみが悪化したり、むくみが何日も続く場合にも病院へ行くのがベスト。
乾癬を専門とする皮膚科医のファラナク・カマンガー医学博士によると、顔のむくみに加え、激しい痛みや呼吸困難、嚥下困難、喉の圧迫感、かゆみ、蕁麻疹、失神を伴う場合、これらは早急な処置が必要な重度のアレルギー反応による症状かもしれないので、すぐに医療機関を受診する必要がある。
自分のことを一番よく知っているのは自分しかいないということを、常に忘れてはいけない。病院に行くべきか迷っているなら、きっとそれは行くべき。
顔がむくんだときに考えられる11の原因
1. 副鼻腔感染症
副鼻腔の粘膜(目の間や額、鼻、頬骨の後ろの空気で満たされた空間)が炎症を起こしたり感染したりすると、鼻詰まりを起こすことがある。
鼻詰まりによる圧力によって、目の周りが痛くなったり、鼻から黄緑色の分泌物が出たり、激しい頭痛や顔のむくみが発現することもある。
大抵の感染はウイルスによるもので、必ずしも抗生物質が必要になるとは限らない。ガーシック医学博士によれば、副鼻腔感染症は数日から数週間ほど続き、症状は自然に治るもの。ジョンズ・ホプキンス大学医学部の医学准教授であるロザリン・スチュワート医学博士は、安静に過ごし、十分に水分を取り、市販の抗ヒスタミン薬を試してみるように勧めている。
2. 歯周膿瘍
歯が欠けていたり未治療の虫歯があると、スチュワート医学博士いわく、細菌が歯髄(歯の内部の柔らかい部分)に侵入して増殖しやすくなる。この感染症(歯周膿瘍)になると、歯の周りや歯茎に膿が溜まって腫れを伴うため、歯が猛烈に痛み、顎ラインが大きく腫れてしまうとか。
ガーシック医学博士によれば、歯周膿瘍は一般的に歯科医に診てもらう必要がある。抗生物質が処方されるか、場合によっては感染した神経を除去する根管手術が必要になるケースもある。腫れが治るまで数日から数週間かかるが、その間は塩水でうがいをし、市販の鎮痛剤を利用することで毎日をよりラクに過ごせるかもしれない。
3. クッシング症候群
コルチゾールはストレスホルモンの一種だけれど、血圧や血糖値などを調整する大切な役割もある。だが、副腎皮質から過剰に分泌されるとクッシング症候群を引き起こす可能性があり、顔が丸くなったり、皮膚にあざができやすくなったり、体毛が濃くなったり増えたりするという特徴的な症状が現れる。
パーディー医学博士いわく、クッシング症候群は年間2万件未満ほどしかない非常に稀な疾患ではあるが、国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所(NIDDK)によると、クッシング症候群の影響を受ける女性は男性より3倍も多く、炎症を和らげるグルココルチコイドを服用している人にとくによくみられるという。
「顔の腫れを改善するためには根底にある問題に対処することが重要で、腫れが治るまで数か月かかることもあります」とガーシック医学博士。
クリーブランド・クリニックによるとクッシング症候群は、コルチゾールの数値が高い原因に応じて異なる方法で治療する。グルココルチコイドを服用している人は、医師が投与量を減らす可能性があり、腫瘍の場合は手術や放射線療法、または化学療法(がんの場合)が必要になることもある。処方薬のケトコナゾールもまた、コルチゾールの分泌を遅らせるのに有効だとか。
NIDDKによれば、クッシング症候群を治療せず放置しておくと、心臓発作、脳卒中、2型糖尿病の発症につながる恐れがある。
4. アレルギーがある
スチュワート医学博士いわく、食べものや花粉に対するアレルギー反応は、目が真っ赤になり、ティッシュの箱がすごい勢いで空になるだけでなく、とくに目と鼻の周りに腫れを引き起こす。フリードマン医学博士が言うには、アスピリンやイブプロフェン、心臓や血圧のための特定の薬もまた、薬物に対するアレルギー反応を起こすことがある。
アレルギーによる腫れは、通常蕁麻疹として唇とまぶたに現れる(まさに、映画『最後の恋のはじめ方』のウィル・スミスみたいに)
血管浮腫を患う人で呼吸困難を伴う場合は、緊急外来を訪問する必要がある。そうでない場合は、フリードマン医学博士いわく、抗ヒスタミン薬が効果的。症状の度合いによっては推奨用量より多い量やエピネフリンが必要になるケースもあるため、どちらにしても医師の診察を受けることを勧めている。
アレルギー反応の多くは、接触皮膚炎(新しい石鹸やローションなど、アレルギー反応を起こす物質に触れることで起こる反応)の一種であり、フリードマン博士いわく、腫れやその他の症状は、アレルゲンに接触して通常24〜36時間後に発現する。
この場合は幸いにも応急処置がある。まずはアレルギー反応を起こす原因を排除し、炎症を和らげて腫れを抑える市販のアレルギー薬(ステロイド外用薬など)を利用する。ガーシック医学博士いわく、数日から数週間で治るのが一般的で、症状が重い場合は、経口ステロイドを医師に処方してもらう必要があるかもしれない。
5. 密かに日焼けしている
紫外線を浴びていないつもりでも日焼けはしている。「毎日さらされている紫外線は、日々蓄積されていきます」と話すのは、マウントサイナイ病院の皮膚科で美容と臨床研究のディレクターを務めるジョシュア・ツァイヒナー医学博士。「これは赤みだけでなく、腫れも引き起こします」
毎日日焼け止めを塗り、日焼けを予防すること。すでに日焼けをした場合は、軽めの保湿ローションを塗って肌を落ち着かせるように。腫れを抑えるには、イブプロフェンなどの抗炎症薬を利用することもできるが、ガーシック医学博士が言うように、大抵は自然に治まるもの。もし日焼けが不快感を伴う場合や、数日経っても改善しない場合は、皮膚科医を受診する必要がある。
6. 蜂窩織炎(蜂巣炎)
蜂窩織炎とは、顔(あるいは、体のあらゆる場所)が急速に膨れて熱く赤くなる細菌性の皮膚感染症のこと。
蜂窩織炎のもっとも一般的な原因は細菌感染であり、通常は、ブドウ球菌やレンサ球菌によるもの。カマンガー医学博士いわく、これらの細菌が虫刺されや切り傷、傷口から皮膚に侵入して感染するとか。湿疹や乾癬、水虫のような真菌感染症などの慢性皮膚疾患がある人は、皮膚バリアが損なわれているため蜂窩織炎に罹りやすいそう。糖尿病患者もまた、血流が悪く、免疫機能が落ち、末梢神経障害(脳と脊髄の外にある神経が損傷する際に起こる症状)に陥りやすいことから蜂窩織炎を起こしやすく、気づかないうちに損傷を受けたり皮膚が破損してしまうこともある。
このような症状が現れ、とくに腫れが広がっている場合は、できるだけ早く緊急外来を受診するべき。治療は比較的簡単で、1週間ほど抗生物質を服用すると、数日から数週間の間に症状は消えるはず。
7. おたふく風邪
懐かしい感じがするが、近年またおたふく風邪が流行り始めている。「最近では、とくにワクチン接種率が低い多数の地域で発生しています」とカマンガー医学博士。おたふく風邪は、スクールや大学など、人混みの多い環境でいとも簡単に感染するため、予防接種を受けていない人やMMR(麻疹、おたふくかぜ、風疹)ワクチンを2回分受けていない人は、おたふく風邪にかかるリスクが高い。
パーディー博士いわくこのウイルスは、咳、くしゃみ、唾液を介して人から人へ感染する。米国国立医学図書館によれば、おたふく風邪にかかると頭痛や発熱、筋肉痛などの症状に加えて、耳下腺部が腫れ上がる。この腫れは唾液腺に感染することで現れ、症状がよくなるにつれて腫れも引いていく。
唾液検査や血液検査を受け、おたふく風邪と正式に診断された場合に自分ができることは、回復を待つだけ。アメリカ疾病対策予防センター(CDC)によると、ほとんどの症例では2〜3週間で回復する。ガーシック医学博士いわく、その間に痛み止めや抗炎症薬を服用したり、腫れているところに湿布を当てることで症状を和らげることができる。
8. 甲状腺の調子が悪い
喉の中にある蝶のような形をした甲状腺は、代謝と体温を調整するホルモンを分泌しているが、その分泌量が少なすぎる場合には、代謝の変化により皮下組織(つまり、甲状腺)が大きくなることがある。「甲状腺機能低下症を患う人の中には、顔面の腫れを含め、粘液水腫を経験する人がいます」とガーシック医学博士。
おそらく、寒気や脱力感を感じたり、肌の乾燥や生理不順などの身体的な変化に気付き始める。
病院で血液検査を受け、必要に応じて薬が処方される。この腫れは、根本的な問題に対処することで緩和する。
9. 結膜炎
目の周りが腫れているなら、瞼の裏側を覆っている膜(結膜)が感染していたり、炎症が起きている可能性がある。つまり、結膜炎かもしれない。
「結膜炎の大抵の原因はウイルスですが、アレルギーや細菌、コンタクトレンズが原因で発症することもあります」と説明するのは、アトランタに拠点を置き健康を専門とする家庭医のクリスタマリー・コールマン医学博士。「腫れに加え、充血や涙目、かゆみを伴います」
結膜炎の治療法は、ウイルス性か細菌性によって異なるそう。「ウイルス性結膜炎は一般的に支持療法で治療され、快適さのために冷湿布や人工涙液が用いられます」とコールマン医学博士。「細菌性結膜炎の場合は、抗生物質の点眼薬が必要です」
10. 酒さ
ツァイヒナー医学博士によると、自覚の有無にせよ、酒さは特定のトリガーによって再燃し、暑い気候や辛い食べもの、アルコール、精神的ストレスはすべて、顔面紅潮や灼熱感、腫れを引き起こす原因になる。
「酒さによる顔の腫れは、必ずしも自然と改善するものではありません。ですが、気温の変化など特定の要因で酒さの症状が悪化することに気付くはずです」とガーシック医学博士。
酒さの症状を抑えるためには、低刺激性のクレンザーや保湿剤を使用し、毎日日焼け止めを塗ること。皮膚科医に酒さの炎症を鎮めるクリームや錠剤を処方してもらうこともできる。ちなみに酒さによる腫れは、数週間から数ヶ月続くことがある。
11. ステロイドを服用している
救急医療医のチラグ・シャー医学博士いわく、ステロイドを処方されていて顔がむくんでいる場合、クッシング症候群による症状の可能性がある。
顔が丸く膨らむのはクッシング症候群を示す兆候でもあるが、処方されたステロイドを服用した結果としてクッシング症候群を引き起こしてしまう場合もあるとか。つまり、高用量でステロイドを服用していると、より重大な副作用を招く恐れがあるということ。
通常は、ステロイドの服用を中止するとすぐに腫れが治ることもあれば、腫れが引くまでに数週間から数ヶ月かかることもある。どうしてもステロイドを服用する必要があり、副作用があなたに悪英異教を及ぼしている場合は、ステロイドの用量を減らせるかどうか、医師に相談してみよう。体液貯留を最小限に抑えるためにも、塩分の摂り過ぎには十分気を付けて。
顔のむくみを解消する方法
「むくみの原因にもよりますが、これらの対処法は顔のむくみを改善できる効果が期待できます」とガーシック医学博士。
- 肌をやさしく扱う。「肌をさらに刺激したり、むくみを悪化させないためには、肌への刺激が少ないスキンケアを使いましょう」とガーシック医学博士。
- 市販の薬を利用する。抗炎症薬(イブプロフェンなど)は有効で、その腫れがアレルギーによるものならとくに、抗ヒスタミン薬を服用する必要がある。アレルギーが重症でない場合は、抗ヒスタミン薬で腫れやかゆみを軽減することができる。呼吸困難が起きた場合はすぐに緊急外来へ。
- 冷やす。朝起きて顔がむくんでいるときは、パーディー医学博士いわく、アイスローラーや冷たい湿布を当てて腫れを抑えるようにするといいそう。時間がなければ冷水を顔にかけるだけでも変わるはず。
- 塩分を控える。「塩分の多い食事は体液が増えるので、むくみが悪化する可能性があります」とガーシック博士。
顔のむくみを予防する方法
顔のむくみを予防する方法は、むくみを治療する方法と基本的には同じ。
- トリガーを避ける。カマンガー医学博士いわく、食べものやアレルゲン、環境要因(極端な温度や刺激の強い化学物質)など、顔のむくみを引き起こす原因を特定して、それをなるべく排除、または回避するように努めること。
- アレルギー管理を徹底する。アレルギーがある場合は、アレルゲンを避け、市販の抗ヒスタミン薬を服用したり、重症の場合は医療治療を受けるなどして、効果的にアレルギーを管理するための対策を取るようにしよう。
- 肌を守る。肌に優しいクレンザーや保湿剤を使用して、少なくともSPF30の日焼け止めを塗ること。
- 水分補給を怠らない。脱水状態は顔のむくみの一因となるため、パーディー医学博士は1日に少なくとも11.5カップ(2.7ℓ)の水を飲むように勧めている。
※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: WOMEN'S HEALTH EDITORS MEDICALLY REVIEWED BY LAURA PURDY, MD Translation : Yukie Kawabata
短大卒業後バンクーバー、メルボルンで2年留学した後、外資系客室乗務員として勤務。2018年に退職後、翻訳者としてフリーランスに転身。アメリカで統合栄養学を学んだ経験もあり。