信号機は、色を分けて進むべきか止まるべきかを教えてくれる。緑は「ゴー!」赤は「ブレーキを踏め」ってこと。そして黄色だけは、ドライバーの自己判断。そこから黄色がベージュに変わり、TikTokで新しいデート用語が登場した。それが「ベージュフラッグ」というもの。

レッドフラッグが警告サインで、グリーンフラッグが有望サインなら、ベージュフラッグは恋愛関係における黄色信号のようなもの。相手の特徴に決定打となるほどの問題ではないけれど、ちょっと変わっていて関係を進めるペースを落としたり、慎重になったり、考え直す必要がある要素を示している。それがあなたにとっては面白かったり、可愛いと思えたり、疑問に思えたり、イライラさせられたり、ただ驚くほど奇妙で言葉を失うほどのものかもしれない。

友人や家族にベージュフラッグを掲げることもできるけれど、ほとんどの場合は恋愛関係で使われる。最近TikTokユーザーの間では、パートナーのベージュフラッグにまつわる話題で大盛り上がり。それは、些細な問題(わざと大きなオナラをするなど)から超マニアックな癖(会話中にアニメ声で話し始めたり、朝食にはパスタか缶詰スープの二択だったり、ケナガマンモスに異様なほど恐怖心を抱いているなど)まで多岐にわたる。ちなみに#beigeflagsのハッシュタグが付いた投稿は、現在7億回以上も閲覧されている。

でもここで、ちょっと疑問が湧いてくる。ベージュフラッグの概念とはそもそも、人の変わった癖をからかうためのネタ? 対立に発展するような言動じゃないの?

ベージュフラッグは黄色信号と同様に、ハンドルを握っている人次第。「ベージュフラッグは、興味深い個性の一部でもありますよ」と話すのは、グループセラピー施設「Group Therapy LAとGroup Therapy NY」を創設した臨床心理学者のカラ・ガーデンスワーツ博士。「それが必ずしも問題を意味するものでも、変わり者だからと言って悪人を意味するわけでもありません」

パートナーのちょっと変わった癖をどれくらい真剣に受け止めるべき? 心を開いて受容するべきか、慎重に進むべきか、それとも方向性を変えるべきか、専門家に詳しく聞いてみた。

ベージュフラッグの正確な意味とは?

ベージュフラッグは当初、マッチングアプリのプロフィールに関する警告サインとしてSNS上に出回り、その恋人候補がつまらない人である可能性を示唆するものだった。でも途中から、その定義が新しい意味を持つようになり、今ではまったく奇妙な特徴を示すサインになっている。

ここで正直になろう。誰にでも少し嫌なところはあるし、変わった習慣や奇妙なこだわりくらい誰もが持っている。誰かと深い関係を持つとき、相手のベージュフラッグは、それ以外がとても素敵な人なら見過ごせるもの。「つまり、個性的な特徴のことです。その人を、他の人とは少し違う、ユニークな存在にする要素です」とガーデンスワーツ博士。「個性的な癖をポジティブな要素に受け取るかネガティブな要素に受け取るかはあなた次第で、単純にいいか悪いかという話ではありません」

歯磨き粉をチューブの真んなかから絞ったり、歯磨きをした後に洗面台がいつも汚れているなど、少しイラッとするようなことで「ベージュフラッグ」になりえるけれど、それが別れのきっかけになることはおそらくない。あるTikTokユーザーが言ったように、ベージュフラッグとは「3秒固まってまた関係を続けていく要素」みたいなもの。

ニューヨーク在住の家族療法士であるキャスリン・スメリング博士によると、恋愛に関することは基本的に主観的なので、ベージュフラッグとされるものも人によって異なる。例えば、寝室で巨大なラマのぬいぐるみと遊んでいるのは控えめに言っても珍しい。でもそれを誰もが問題視するわけではない。人によって受け止め方が違うってこと。

ベージュフラッグで関係を終わらせるべき?

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Olga Rolenko//Getty Images

ベージュフラッグは非常に主観的であるため、初めて知り合った相手に対し、ちょっとした些細かつ攻撃的ではない違いですぐに別れを判断するのはまだやめておこう。

「相手の変わった癖を知ることは、将来のパートナーを理解する過程の一部にすぎません」とスメリング博士。「ベージュフラッグは進行中の旗であり、関係を進めるか終わらせるかを決めるときではありません。自分の気持ちを確かめながら進めていく段階です」。それよりも、もっと重要な部分で意見が一致しているかどうかを優先するべき(例えば、一時的なカジュアルな関係を求めているのか、真剣な交際を求めているのかなど)。

でも最終的に、相手のベージュフラッグがたとえ無害でも耐えられないと気づいたなら、それはそれであなたが悪いわけではない。相手の習慣や特性にイライラしたり、我慢できなかったり、それが生理的にゾッとするような癖であれば、「関係を終わらせる選択肢を選んでもなんの問題ありません」とガーデンスワーツ博士。

ただ、恋愛関係では、あなたが相手のベージュフラッグを我慢しているのと同様に、相手もあなたのベージュフラッグを我慢しているという事実を忘れずに。大事なのは相性。「カップルにはいつも伝えていますが、相手のよいところだけではなく、どれほど相手のネガティブな要素やベージュフラッグを受け入れる覚悟があるかということが、結婚するということです」と話すのは、テキサス州を拠点とするパートナーシップのセラピスト、カイ・ヤング。

「相手と自分には、必ず似ている部分と異なる部分があります」とガーデンスワーツ博士。「その違いが赤信号でない限り、お互いの違いや個性を許容することは、恋愛関係においてごく普通のことです」

ベージュフラッグとレッドフラッグの見分け方とは?

残念なことに、TikTokで共有されているベージュフラッグはすべてが笑える内容ではない。相手の嘘をつく癖やいじめ癖、ガスライティング(誤った情報で相手を心理的にコントロールすること)行為について投稿している人もいる。それらはハッキリ言ってレッドフラッグ。あなたのことを尊重せず、あなたの意見に聞く耳を持たず、あなたを不安にさせ、不健全な行動(依存症があり、助けを求めることを拒否するなど)をとるようなら、ガーデンスワーツ博士が言うように、それは許容できないので早く立ち去ること。

また、最初は無害に思えたベージュフラッグも、行動がエスカレートしたり、見方が変わったりするとレッドフラッグに変わることがある。スメリング博士は、夫が大好きなバンドの追っかけをして世界中を旅し始めたことで、結婚生活に支障をきたし、離婚したというクライアントの例を挙げた。交際を始めた当初は、彼がバンドを追いかける情熱に戸惑いつつ受け入れたものの、結局は2人の関係を悪化させるものとなった。「彼女は彼と人生を共有したかったのですが、彼はほとんど家にいなかったのです」とスメリング博士。

一方で、ベージュフラッグがグリーンフラッグになることもある。「興味や関心が広がり、あなたに成長や豊かさをもたらしてくれる経験となるかもしれません」スメリング博士。「もしかしたら、自分が楽しめるとは思ってもいなかったものに出会わせてくれ、最終的にはそれが大好きになることもありえるでしょう」。例えば、あなたの恋人が『ゲーム・オブ・スローンズ』の全8シーズンを無限ループで楽しんでいるとする(すべてのシーンの展開を逐一知っているにもかかわらず)。そしてある日気付いたらあなたもハマり込んでいて、一緒にファンイベントに参加したりコスプレをし始めるかもしれない。結果がどうなるかは、あなたにだってわからないもの。

ベージュフラッグについて、相手に伝えるべきタイミングは?

もしパートナーのベージュフラッグが本当にイライラするものなら、ヤングは話し合いをする価値があると助言している。

「例えば、『トイレに行く度にいちいち報告する必要はないから』と言えば、相手が『自分でも気づかなかった。気を付けるね』と言ってくれたなら、それは相手が改善に努める意思を示してくれています」とヤング。

「ベージュフラッグがなにかというよりも、大事なのは相手があなたからの不満や批判を聞き入れ、少なくても半分はあなたに合わせようとしてくれる姿勢があるかどうかです」

結局のところは自分次第。まずは自問すること。私は細かいことにこだわりすぎているのか、気持ちを押さえ込んだ結果イライラがたまっているのか。本当のベージュフラッグとは「解決可能な問題」だとヤングは結論付けている。

そこでスメリング博士は、率直かつ優しいアプローチを勧めている。「自分の気持ちを正直に伝えましょう。ただし、『あなた』ではなく『私』という言葉で会話を始めることです」とスメリング博士。「例えば、『私はこう感じている』とか『私はこれが気になっている』という感じで、相手を批判したり責めたりするのでなく、思いやりを持って話すことが大事です」

幸いなことに、本物のベージュフラッグはほとんどの場合がお互いの妥協や受け入れによって解決できるもの。実際に最初は嫌だと思っていた行動が、最終的には相手をもっと愛せる要素になることだってあるから。パートナーの変顔や厳格な寝姿勢、キラキラに対する極度の愛情などに対して、考えが変わったと語るユーザーたちに聞いてみればわかる!
 
この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: BETH SOBOL Translation : Yukie Kawabata

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川畑 幸絵
翻訳者

短大卒業後バンクーバー、メルボルンで2年留学した後、外資系客室乗務員として勤務。2018年に退職後、翻訳者としてフリーランスに転身。アメリカで統合栄養学を学んだ経験もあり。