マイリー・サイラスの楽曲にもある通り「心のように壊れるものは他にない」。元カレにフラれたり、浮気されたり、片想いと分かっていながら告白したりしたあとは心がボロボロ。

どんなシナリオでも失恋は辛い。ろくに食べられず、ろくに眠れず、もう1度だけメッセージが来るかもしれないという期待からスマホをチェックしてばかり。吐きたくなるほど気持ち悪いし、胸が押しつぶされて何百万もの小さな破片に砕かれてしまいそう。その上、チョコチップのアイスをいくら食べても、いいドラマを何本観ても状況が変わらないから、だんだん不安になってくる。「こんな風に感じるなんて、私がおかしいのかな? どうしたら、このイヤな気分を止められる?」

まず、いま現在そんな気持ちでいる人はたくさんいるし、そんな気持ちになること自体も普通だから大丈夫。ただ、先述の症状に1つでも当てはまるものがある人は、失恋病かもしれない。そう、失恋で心身を病むことは本当にあるのだ。

失恋病という言葉は冗談っぽく使われることが多いけれど、実際は生物学的な影響力を持つ精神状態。「心の病として臨床的に認められることはないですが、失恋病になることは本当にありますよ」と説明するのは、臨床心理士で恋愛コーチのシェリー・ゾマーフェルト博士。アメリカ版ウィメンズヘルスから、その症状と対処法についてみていこう。

失恋病とは?

正式な病気として認定されていないとはいえ、失恋病は心身を疲弊させる超リアルな現象。体内のさまざまな反応を引き起こすため、体の病さながらの症状が現れることもある。

「失恋病は病態ではなく生物学的な反応で、動悸、息切れ、腹痛、不眠、うつといった身体的な症状を引き起こすことがあります」と説明するのは、失恋やトラウマを専門とする臨床心理士のサラ・ガンドル博士。「強迫観念、不安、食欲不振も見られるかもしれません」。だから、ろくに食べられず、ろくに眠れずも想定の範囲内。

ゾマーフェルト博士いわく失恋病は「心が深く傷ついて、深い悲しみに打ちひしがれ、好きな人に関する思考や感情と、また一緒にいたいという願望に取りつかれた状態」とされている。

リメレンス(他者に執着する精神状態)という言葉もあるけれど、リメレンスと失恋病は、いずれも身体的・精神的な症状をもたらすという点を除いて大きく違う。「リメレンスと失恋病は、それぞれ異なる概念です」とゾマーフェルト博士。「リメレンスは他者に執着している状態で、愛に似た感情を伴います。でも、実際は夢中になっているだけで、執着と表現されることが多いです」

「リメレンスは、中毒のような激しい執着を見せる点で失恋病と異なります」とガンドル博士。リメレンスは一種の心酔であるのに対し、失恋病は悲しみの同義語に近い。

失恋病の症状は?

ゾマーフェルト博士によると、失恋病の症状として一番分かりやすいのは「好きな人のことを四六時中考えて、恋しく思ってしまう」こと。

失恋の直後は、以下のような身体的・生物学的反応が起こることもある。

  • 眠れない
  • そわそわして落ち着かない
  • 集中力が続かない
  • 涙もろい
  • 胸の痛みや緊張
  • 気分や食欲の変化

ガンドル博士によると、より重度のケースでは、うつや不安の症状が強く現れることもある。

失恋病を乗り越えるには?

woman crouching down in despair with head on her knees
Kathrin Ziegler//Getty Images

残念ながら、失恋病は普通の風邪より治すのが難しい。でも、ガンドル博士とゾマーフェルト博士によると、以下の5つのアクションは辛い時期を乗り越える上で役に立つ。

1.セルフケアを多めにする

セルフケアは失恋のあとにするべきもっとも大事なことの1つ。

具体的になにをすればいいか分からないときは、あなたが幸せになれることやホッとすることをしてみよう。「運動や読書をしたり、日記をつけたり、瞑想やヘルシーな食事を心掛けたり、穏やかな音楽を聴いたりするのはセルフケアのいい例ですね」とゾマーフェルト博士。「このようなアクティビティは気晴らしにもなるので、好きな人から別のことに意識を向けやすくなりますよ」

2.コミュニケーションを遮断して境界線を明確にする

酔っ払って元カレにメッセージを送ったり、好きな人のインスタグラムを執拗に見たりしている人は、一度しっかり境界線を引いたほうがいいかもしれない。ガンドル博士もゾマーフェルト博士も、失恋病の原因から気を反らすと治りが早くなると言う。「その人のプロフィール写真を見たり、その人に連絡したりするのはやめましょう」とゾマーフェルト博士。ミュート、アンフォロー、ブロック、削除、登録解除など、方法はなんでもいいので、とにかく元カレが目に入らないようにして。

ゾマーフェルト博士いわくSNS以外では、好きな人を思い出させるアイテム(写真など)を排除するのも効果的。カメラロールを空にして、写真を燃やし、元カレのパーカーは(着心地がよくても要らないので)古着屋さんにリサイクル。

3.マインドフルネスを実践する

ガンドル博士の話では、瞑想や感謝といったマインドフルネスに取り組むと心が落ち着き、失恋病がもたらす負の思考から解放されやすくなる。マインドフルネスの初心者さんは、ガイド付き瞑想のアプリをダウンロードしてみよう。これまでの研究により、マインドフルネスは失恋によって引き起こされる、または悪化する不安・うつの症状を軽減することが分かっている。

4.友達や家族と一緒に時間を過ごす

辛いときは、あなたのサポートネットワークを素直に頼って。「難しい感情を処理して手放すためには、いまの状況や気持ちを打ち明けることが不可欠です」とゾマーフェルト博士。あなたのことを愛してくれる大切な人と一緒にいれば、気分もよくなってくる。

ガンドル博士が言うように、友達がそばにいないときは電話をして孤独感を和らげよう。

5.専門家の力を借りる

ゾマーフェルト博士によると、失恋病の症状がひどいときや悪化しているとき、先述のアドバイスではどうにもならないと思うときは、カウンセラーやセラピストの力を借りたほうがいい。メンタルヘルスの専門家は聞き役に徹してくれるし、自分で自分を癒すためのスキルも教えてくれる。

失恋病は、どのくらい続くもの?

泣いても泣いても収まらない感情に痺れを切らし、「いつになったら収まるの!?」叫びたくなることもあるかもしれない。

でも、失恋病には正確なタイムラインが存在しない。ゾマーフェルト博士によると、数週間で乗り越えられる人もいれば、数ヶ月から数年かかる人もいる。「失恋病の持続期間は、その人と状況によって大きく異なります」

恋に落ちるまでの時間が人によって違うように、失恋を乗り越えるまでの時間も人それぞれ。症状が長引いて不安なときは、心が癒えるまでに時間がかかるのはまったくもって普通のことで、どんなに時間がかかっても、いつかは必ず癒えることを思い出そう。
 
※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。


Text: Zoë Hecht Translation: Ai Igamoto

Headshot of 伊賀本 藍
伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。