誰にでも疲れることはあるけれど、なにがどうなったら病院へ行くべきなの? パンデミックの負担が大きかったから、いまはみんな疲れているのが普通じゃないの?

疲労は主観的なものなので、どのくらい疲れているのを“普通”とするかは人によって異なるけれど、疲労を理由に病院へ行く人は少なくない(最近のアイルランドの調査では患者の25%に疲労が見られた)。

疲労を訴える人に医師である私が最初に聞くのは「どのくらい正常に機能できているか」ということ。

疲労のせいで日常生活に支障が出たり、好きなことができなくなったりしているのなら、その背景を深く探るべき。今回は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから慢性疲労の要因や慢性疲労かもしれない場合にどうすればよいのかを見ていこう。

慢性疲労の一般的な要因

慢性疲労の要因として、当たり前に多いのは睡眠の質が低いこと。「寝不足が原因ではありません。寝すぎなくらい寝ています!」という患者さんは多いけれど、スッキリ目覚めているかと聞くと、大抵みんな「ノー」という。

これは睡眠の量はともかく、質が低い確かな証拠。睡眠中に呼吸が停止・再開を繰り返す睡眠時無呼吸症候群の可能性も考えられる。無呼吸は放っておくと深刻な問題を引き起こすことがあるため、しっかり調べたほうがいい。

飲酒も睡眠の質を低下させ、朝の目覚めを悪くする。

うつ病も疲労の一般的な要因。絶対に忘れないでほしいのは、気分が落ち込んでいなくても、うつ病の可能性はあるということ。イライラや集中力不足も、うつ病の立派な症状。この事実を知らない人は、自分がうつ病であることに気付けない。原因不明の疲労がうつ病の主症状としてあり、慎重に質問を重ねてやっと、それ以外の症状が明るみになることもある。

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は長期にわたる深刻な疾患で、“普通”の域を大きく超えた極度の疲労を症状の1つに持つ。過去の疲労とはタイプやレベルがまったく違う疲労が現れるものの、初期の段階で診断するのが難しい。

鉄不足、甲状腺疾患、糖尿病、腎疾患、心疾患といった問題も疲労の原因となる。この場合は、その疾患を治療することで疲労感も和らぐはず。

より一般的な病気(風邪など)にも疲労感は伴うけれど、回復後も疲労が続くべきではない。

つまり、「疲労のせいで日常生活に支障が出ているときは、さまざまな要因が考えられるので、医師に相談したほうがいい」ということ。

「日常生活に支障が出る」って、具体的にどういうこと?

exhausted woman and dog sleeping on sofa and rug
Malte Mueller//Getty Images

疲労感の測定に用いられるツールには、エプワース眠気尺度(ESS)やSTOP-BANGスコアがある。どちらも簡単なアンケートなので、家でチェックして結果を医師に見せるといい。

ただし、アンケートで正常な結果が出ても、以下の場合は病院へ。

・疲れすぎて運動できない(定期的な運動は活力を増進させるので悪循環。でも、ME/CFSの人は運動に注意が必要)。

・疲れすぎて外出するのも、友達に会うのも、好きなことをするのも無理。

・寝てもスッキリ起きられないので、しょっちゅうスヌーズボタンを押している。

・テレビを観ながら寝てしまうことが多い。

・いますぐベッドに戻りたいと思いながら1日を過ごしている。

また、疲労に加えて次の“危険信号”が見られるときは、早急に病院へ:原因不明の体重減少、息切れ、頻繁な発熱、排便時の出血、歯茎からの出血、関節の腫れや痛み、過去に経験したことのない症状。

「午後に昼寝がしたくなるのは危険信号ですか?」と聞かれることがあるけれど、これは難しい質問。午後半ばで活力が減退するのは生理学的に至ってノーマル(昼寝が文化の一部になっている国も少なくない)。

もちろん、仕事や勉強、子育てに忙しくしていれば疲れて当然。その場合の疲労というのは、体に問題があることを示すサインというよりも、仕事と休息のバランスが崩れていることを知らせるサイン。

私の疲労も普通じゃないかも......。どうすればいい?

かかりつけ医に相談を。そのあとのステップは、その人の状態や関連要素によって異なる。

深刻な基礎疾患が疑われる場合には、すぐに検査が行われる。

でも、生活習慣に改善の余地があるときは、そこから始める。例えば、アルコールやカフェインの影響で眠れなくなっていないか、睡眠衛生の習慣は築けているか、適度な運動をしているか、砂糖を摂りすぎていないか。

なんらかの疾患が疲労の原因となっている可能性を調べることができるのは、こうした生活習慣上の問題をクリアにしてから。

コロナウイルス感染症にかかったあとの疲労については?

私の中で、“普通の疲労”と“極度の疲労”は違うもの。

普通の疲労はしっかり休むだけで取れる一方、極度の疲労はどんなに寝ても休んでも取れない。

コロナウイルス感染症から回復しても極度の疲労が続いていて、後遺症の心配をしている人は迷わず医師に相談を。

関連要素は複雑かつ人によって違うので、その疲労が普通の域を超えているかの判断は自分だけでなく医師とともにしてほしい。

※この記事は当初、『The Convesation』に掲載されました。

※この記事は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Nikolia Ilic Translation: Ai Igamoto