プレッシャーの大きい仕事や、分刻みの余裕のない家事や育児、コロナ禍による先が見えない不安……。現代人は、強まるばかりのストレスや疲労感をごまかし、日々をなんとか乗り切っている、という人が多いそう。理由は色々あるれど、主な要因は、さまざまな行動における“し過ぎ”が原因となっているとか。今回は栄養士/健康経営アドバイザーでカラダプラスマネジメント株式会社代表である笠井奈津子さん著書の「何もしない習慣」より疲れの原因と改善策をご紹介。(以下「」内・笠井奈津子さん)

みんな誰もが疲れている時代

「食事コンサルをしていると、健康診断の数値を見るまで自分の不調や変化に気づかず慢性的な疲れをためている人が増えていると感じます。ベストコンディションではない状態が当たり前になってしまっていて、自分の変化はおろか、『疲れている』ことにさえ気づけていないのです。とにかく頑張ることをよしとして、当然のように無理をして過ごすこと。これは非常に危険。大切なのは、“まず自分を知って、自分の状態に気づく”ことです」

「何もしない習慣」の具体的なはじめかた方

「自分のトリセツを作ろう」

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ina9//Getty Images

「休むという表現を使うとき、私はただ立ち止まるのではなく『回復する』というイメージで捉えています。ただネットサーフィンをしたり、SNSで時間を潰すのではなく、回復につながる休み方をしてほしいと考えています。疲れやストレスから本当に回復できているかチェックするのはとても簡単。それは“朝、元気に目覚めているかどうか”。本当の意味での回復は、朝の時点でゼロリセットされている状態を指しているのです。

これより先はあなたが日々のストレスから解放され、疲れを癒やし、健康面、そして生活全体を回復させていくことを目指します。以下の7つのワークにトライし、「自分だけのトリセツ」を作っていきましょう。そのトリセツに沿って能動的に休み、心身を回復させ、本来自分が送るべき人生を今から取り戻しましょう」

1日の行動を見える化しよう
【ワーク①】

1日の時間軸に沿って自分の「1日のおもな行動」を具体的に書き出す。その後以下の質問に答えてみて。
今日は何時間寝た? スッキリ目覚められた?
「充電」につながる行動は〇で囲み、気になる「消費」には✓をつけましょう

「睡眠に関する答えがたまっていくと自分に必要な睡眠時間が見えてきます。『充電』につながる行動とは、回復につながる行動のこと。“今日は〇〇の案件で頭がいっぱいだったので、小説を読んで、まったく違う世界にどっぷりつかって気分転換になった”など“こういうときはこうすると充電できる”というのを見える化しましょう。疲れを感じるなど自分の中の『電池』が消費されそうなこともチェック、理由に加えて思いついた改善策も一緒に書いてみてください。

家事にしても、仕事にしても疲れている人のほとんどが「し過ぎ」で疲れています。多忙な人は今の生活の上に頑張って上乗せするのではなく、行動を省くこともしてみてください。マルチタスクになっている行動をできるだけ単純化して疲れをしっかり取りましょう。行動を省き疲れをしっかり取ることで、結果的に仕事や家事の生産性につながることが多いです」

あなたの疲れは「し過ぎ」が原因かも

【ワーク②】

「1日のおもな行動」を振り返り、「込み入ってる箇所」を□で囲んでチェックしてみよう

「囲まれた部分の中に省けるものはないか、「ここまでしなくてはいけないものなのかな?」と感じるような部分を、冷静にチェックすることが大切です」

【ワーク③】

今日し過ぎだなと思ったことはある?

『し過ぎ』の目安のひとつは、“それが自分の人生を豊かにしているか”と問われたときに、即答でYESと言えないこと。“頑張らないといけない”と思ってし過ぎてしまうこともあります。そんなときには執着を手放してあきらめることも大切。年を重ねるほど、心身にフィットするものが変わってくるのは当たり前です。このやり方はもう今の自分に合わないなとあきらめることも大人として必要な認識だと思います。

1日の見える化に始まり、①~③の初回のワークは20分ほどかかりますが、慣れれば1日10分ほどでできる簡単なものです。

①~③の『1日のおもな行動』を記録するワークが1週間ほどたまったら、チェックをつけた消費ポイントやマルチタスクになっているところ、し過ぎている行動を再度振り返り、時間のスライド、もしくは時間を少しカットできないかを考えてみてください。生活の中の重荷をチェックし、引き算できる行動を挙げていくと、自分の荷物を自分で軽くできるようになりますよ」

【ワーク④】

充電ポイントをリストにしよう

「ワーク①で言語化した充電ポイントはそのまま『自分のトリセツ』に加える『充電リスト』になります。自分の充電に役立っている共通する行動を見つけていくと、自分の価値観がはっきり認識できて、日々の選択がとても簡単になっていきます。自分のための充電リストがあれば、「何をしたら自分は回復できるか」が一目瞭然になり、日常の充電ポイントがどんどん増えていくのです。

【ワーク⑤】

原因不明の疲れを抱えている人へ。「食事の9マスリスト」でチェックしよう

「普通に睡眠を取り、特にストレスも感じていないのにも関わらず疲労感がある……。そんなときは『1日のおもな行動』に書き込んでいた食事内容を3日分ほど抜き出して詳しく振り返ることをおすすめします。食事のバランスのよさを見るにはさまざまなチェック法がありますが私は食事内容を主食・主菜・副菜・の3つで考えています」

チェックリスト

「3日分の食生活を振り返り、なにが過不足なのかを把握してバランスが悪いところを調節していくのが大切になります。『主菜』の欄が埋まっているかは要チェック。たんぱく質はセロトニンやドーパミンにも関係しているため、不足するとフィジカル面だけでなく、メンタルの不調につながる場合があります。また便秘なら主食を抜きすぎている可能性も。悪者に思われがちな炭水化物ですが、糖質と食物繊維という素晴らしい栄養素が合わさったものです。腸と脳は密接に影響を及ぼしあっているので、“たかが便秘”として放置しないようにしてくださいね。

また食事の時間も大切。3食とも規則正しい食生活を送るのは難しいですが、タイムマネジメントをするとしたら夕食がおすすめ。“夕食を制するものがすべてを制す”といっていいほど、1日の最後に取る食事時間は体に大きな影響を与えています。消化には3~5時間かかるため、寝る直前に食事をすると睡眠の質を下げることになります。最低20時には終わらせるように意識してみてください」

食事の1週間分のログがたまったら、次の問いで見直してみてください。

【ワーク⑥】

パフォーマンスが高いまま、1日を快適に過ごせた日の食事のリズムは?
「充電できた」と感じられた食事は、どんな内容やシチュエーションだった?

「本来、食事は回復に必要な『充電』そのもの。どんなタイミングで、誰と、どこで、どんな食事をすれば回復できたのかを集めると『自分のトリセツ』が充実してきます」 

自分に問いかける習慣を持とう

「日々のストレスや気持ちのモヤモヤは日々消化していくのがポイント。最後はこのワークにトライしてみてください」

【ワーク⑦】

「今夜寝るまでの間に何をすると気持ちよく眠れそう?」

「この問いにスムーズにアイディアを出せるようになる頃には、あなたはその日の疲れをその日のちに解消できるようになっているはずです。大切なことを忘れてしまったり、無駄にエネルギー消費を繰り返すのを『見える化』で防ぎましょう。

今回は、『なにもしない習慣』の根源として自分の現状を把握する方法を紹介しました。1週間取り組んだだけで自分のボトルネックになっている部分が分かるはず。『自分のトリセツ』を作ることは、自分をマネジメントできるようになること。そして実際に自分をマネジメントすることが回復のための重要な要素なのです」 

「何もしない習慣」では疲れをためない具体的な食習慣や、挫折しがちな習慣の続け方を詳しく解説。ぜひチェックして、疲れ知らずの体を手に入れて!

お話を伺ったのは......

笠井奈津子さん

笠井奈津子


1979年、東京都生まれ。カラダプラスマネジメント株式会社代表。栄養士。健康経営アドバイザー。聖心女子大学文学部哲学科卒業後に栄養士の資格を取得。企業研修では、数百人単位の参加者でも事前に食事記録をチェックし、労働環境にも配慮。コンビニでの買い方など、机上の空論にならないアドバイスを大事にしている。産後、働き方を見直すなかでパラレルキャリアの道を開拓。自身の経験を生かして澤円氏の執筆・講演業のマネジメントに携るなど、各方面で活躍中。

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Aoi Nakashima
エディター

アシスタントエディターとして、主にSNS周りを担当。ウィメンズヘルスを一緒に作るコミュニティー、Fit Girlsのコミュニティリーダーも担う。セレブ・ファッション・フードなどのカテゴリーの中で、トレンドを日々リサーチし、投稿や記事へとつなげる。特技は20年続けた硬式テニス、2023年はサーフィンにも挑戦する予定。座右の銘は“一日一幸”♡