しっかり寝たし、病気でもないし、朝食もとったし、30分の有酸素運動もした。それなのに、なぜか1日を通して時差ぼけのようなだるさを感じてしまうのはなぜだろう――?

現在、アメリカ人の3人に1人は睡眠不足(睡眠時間が7時間未満)と考えられているが、もし十分な睡眠をとっていても常に疲れているように感じているのであれば、それは慢性疲労症候群やライム病、甲状腺の問題、うつ病などのサインかもしれない。あるいは、更年期障害の可能性もある。

こうした病気に当てはまると考えられるときは、医師やセラピストに相談し、診断を受けて適切な治療を受ける必要がある。

しかし、もし身体的にも精神的にもだるさを感じ、その原因がストレスや退屈さではないと思われるのであれば、その原因は意外なところに潜んでいるかもしれない。その場合、シンプルな改善策でエネルギーレベルを向上できるだけでなく、全身の健康にも役立てることができる。

以下で、あなたにその疲れやだるさをもたらしているかもしれない、大きな3つの原因とその改善策を深掘りしてゆく。

1)水分不足

私たちの体は約60%が水分でできており、血液の流れや脳と筋肉の機能、代謝、栄養素を運ぶことなど、体にとって大切な働きをベストな状態で保つために重要な役割を果たしている。

「少しくらい水分量が減っても平気」と思うかもしれないが、ある研究によると、わずか2%未満の減少でさえも日常機能に影響を及ぼす可能性があり、疲労感や集中力の低下、怒りや不安、抑うつを感じやすくなるかもしれないという。

考えられる理由のひとつは、抗利尿ホルモンのアルギニン・バソプレシン(AVP)の産生。脱水状態になると、血液は水分を失って濃くなり始め、視床下部(内分泌系と神経系をつなぐ脳の深部)はAVPをより多く分泌するように促す、とワイオミング大学の運動機能学・健康学准教授のエヴァン・ジョンソン博士は説明する。

「AVPレベルが上がると、腎臓に『体内の水分を尿として排出せず、再吸収しなさい』という信号が送られます」。そうなると、研究によれば、AVPレベルが慢性的に高い場合、倦怠感や憂うつな気分につながる可能性があるということ。

woman drinking water
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改善策:水や炭酸水、コーヒー、お茶など、十分な水分をとること(これらのすべてが水分量としてカウントされる)。昔から言われる「1日にコップ8杯の水を飲むこと」というのは“健康神話”で、摂取量をカウントすることにストレスを感じる必要はないが、この量を目安にすることはできる、とジョンソン博士は言う。

しかし、どれくらい飲んだかを意識するよりも、尿の色をチェックすることのほうが有益で、軽度の脱水状態にあるかを判断することができるそう(喉が渇いたと感じたら、その時点で軽度の段階を過ぎていると博士は警告する)。「もし、尿の色が常に薄い黄色で、1日に6〜8回トイレに行く場合は、水分補給が十分と言えるでしょう」

2)糖質や加工食品のとりすぎ

エネルギーが低下していると感じるなら、(しょっぱい食べ物にも含まれる“隠れ”糖質も含めて)食事の糖質の量を見直すときかもしれない。

「添加糖類は、スイーツや炭酸飲料、エナジードリンクだけに含まれているわけではありません。ケチャップやパスタソース、ドレッシングなどにも多く含まれています」と話すのは、マサチューセッツ総合病院で栄養&ライフスタイル精神科のディレクターを務めるウマ・ナイドゥー医師

ヨーグルトや、ベーグル、マフィン、スコーンといった精製された炭水化物など、私たちの朝の定番と呼べる食品にも、添加糖類は潜んでいる。エネルギーが湧いてくるような気がするかもしれないが、研究によると、エネルギーが湧いてもすぐに燃え尽きてしまうのだとか。

その理由は、糖質や精製された炭水化物が代謝されるとインスリンが大量に分泌され、血糖値の急激な低下につながるため。多くの人にとっては、血糖値の急激な低下が、疲労感(強い眠気)や倦怠感(エネルギーの枯渇)として現れる。

実際に、2019年に行われた31の異なる研究のレビューによると、精製された炭水化物や糖質を多く含む食品を摂取した後、ほとんどの被験者が30分から60分以内に「より高いレベルの疲労感と注意力の低下」を感じたことが明らかになったという。

table with cakes, cookies, cupcakes, tarts and cakepops
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また、人によっては抑うつ気分が誘発されることもあるそう。学術誌『Appetite』に掲載された小規模な研究(糖尿病のない82人の成人が対象)では、グリセミックロード(GL)の高い食事、つまり糖質や精製された炭水化物を多く含む食事をした人は、その後エネルギーが著しく低下し、抑うつ感情が高まったと報告されている。

つまり、午後に元気を出そうとおやつのクッキーを食べても、かえって元気をなくしてしまうかもしれないということ。

また、糖質は睡眠不足と同様に体内の炎症を引き起こすため、気分の低下につながる可能性がある、とナイドゥー医師は述べる。「異性化糖(ブドウ糖果糖液糖)のような添加糖類のほとんどは炎症誘発物質であり、その結果生じる腸と脳の変化は、最終的に抑うつ気分や疲労感につながる可能性があります」

改善策:2022年から、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、企業に対し栄養表示に「添加糖類」の記載を義務付けているので、『アメリカ人のための食生活指針』に従い、添加糖類を1日の摂取カロリーの10%未満に抑えるようにしてみよう(1日の摂取カロリーが2000キロカロリーなら、添加糖類は最大50グラムまでとなる)。

そして、加工食品はできるだけ避け、代わりに全粒穀物や新鮮な果物・野菜など、栄養価の高い自然食品を積極的に取り入れよう。例えば、朝食にグラノーラ(糖質が多い)と加糖タイプのヨーグルトを食べているなら、ブルーベリーと少しのハチミツとシナモンを加えたスティールカットオーツ(ひきわりオーツ)と、プレーンヨーグルト(砂糖無添加)に代えてみることをナイドゥー医師は提案。

happy woman holding wicker basket with fresh greens and vegetables against blue door background with unrecognizable person
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また、ナイドゥー医師は、人工甘味料で代用しないようにとの注意も促している。「通常の砂糖と同様に(体が砂糖を摂取していると勘違いして)舌や腸の味覚受容体が活性化されるため、血糖値の急降下(シュガークラッシュ)を引き起こす可能性があります」

3)ビタミン・ミネラル不足

ライナス・ポーリング研究所のレポートによれば、推奨される1日のビタミンやミネラルの摂取量を多くのアメリカ人が満たせておらず、その結果「臨床的に発見するのが困難な、目につかない症状」だけを経験することになるという。この目につかない症状というのが、倦怠感と気分の変化だ。

気をつけたいビタミンとミネラルはこちら。

  • ビタミンDの不足は、うつ病や不安症と関係する。
  • ビタミンB1(チアミン)、B6、B9(葉酸)、B12は、いずれも低下(あるいは不足)すると、疲労感や怠さを感じたり、気分が落ち込むことがある。B12は、肉、魚、卵、乳製品にしか含まれていないため、ヴィーガンやベジタリアンの人(卵や乳製品を食べているとしても)、クローン病やセリアック病の人(ビタミンの吸収に問題がある)は、十分な量を摂取できないことが多い。
  • 鉄分の不足(特に月経のある女性は出血によって鉄分レベルが低下するため、鉄分の不足が懸念される)は、うつ病につながる。
  • マグネシウムは抗炎症作用があり、うつ病予防に役立つ可能性がある。
  • ビタミンCは重要な抗酸化物質であり、低下すると一般的な症状として倦怠感が現れる。

改善策:虹色の食品(赤、オレンジ、黄色、緑、青の野菜や果物)、ナッツ類、豆類、低脂肪のタンパク質を食べることを意識しよう。とはいえ、特定の食品が食べられなくても問題はない。

multicoloured fruit and vegetables in a black bowl on a burnt surface
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「ほとんどの人は食生活に“隙間”があり、その隙間に注意を払って、他の食べ物で補えるかどうかを確認しましょう。場合によってはサプリメントに頼る必要もあるかもしれません」とナイドゥー医師。また彼女は、ビタミンD生成のために、毎日SPFなしで10分間太陽の光を浴びることを勧めてもいる。

しかし、サプリメントを買い込む前に、必要なものを必要なだけ正確に摂取するために、まずは医師に相談するのがいいだろう。

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

Translation: Ai Ono From Oprah Daily

From: Harper's BAZAAR JP