「内臓疲労」という言葉を聞いたことがあるけれど、症状や対処法までは知らないという人も多いはず。今回は、『医師が教える内臓疲労回復』を監修した、総合内科医の中田航太郎先生に「内臓疲労」の原因とチェックリスト、対処法についてお話を伺った。

(以下「」内、中田航太郎先生)

目次

内臓疲労とは?

「『内臓疲労』とは、“内臓に負荷がかかりすぎているので、休めてください”というサイン。しかし『内臓疲労』に医学的な定義はなく、医療機関では使われていないのです。そのため『内臓疲労』という言葉が指している感覚を①内臓の不調②内臓の不調による全身の疲労感と解釈して説明していきますね」

①内臓の不調
胃の消化機能が低下して胃もたれが起きる、腸の排便機能が低下して便秘や下痢が起きる、など内臓自体の機能が低下し、何らかの「症状」として認識されるもの。
②内臓の不調による全身の疲労感
①のような不調に伴い、全身のだるさや倦怠感を覚え、漠然とした「疲れ」として認識されるような状態を指す。

内臓疲労の原因

「『内臓疲労』の原因は、食べ過ぎや飲み過ぎ、睡眠不足、ストレス、過度なダイエットや運動などさまざま。内臓のなかでも、現代人がとくに不調を感じやすい器官である『脳』、『胃腸』、『肝臓』の3エリアをチェックしていくと、自分自身の体のコンディションをより詳しく知ることができます」

内臓疲労チェックリスト

当てはまるものが多いほど、「内臓」が疲れているかも!

【脳編】

(症状チェック)
□寝つきが悪い、またはよく眠れた感じがしない
□集中できないことや、ちょっとしたミスが増えた
□些細なことでイライラしたり、落ち込んだりする
□一日が終わると、ぐったり疲れ切っている
□最近趣味の活動をしていない、または楽しくない

(行動チェック)
□期限が違う複数のタスクを同時に請け負っている
□考えることが多くて、頭のなかがまとまらない
□休日もメールを見たり、仕事のことを考えたりする
□気づけばスマートフォンを触っている
□最近、大きな生活の変化(転職・結婚・引っ越し等)があった

【胃腸編】

(症状チェック)
□胃の不快な症状(胃もたれ・胃痛・胸やけ・ゲップ等)がある
□すぐおなかいっぱいになったり、気持ち悪くなったりする
□おなかの不快な症状(腹痛・下痢・便秘・おなかの張り等)がある
□排便時、「バナナ型の便がスルッと出る」ことがあまりない
□上記の症状は、午前中や重要な仕事の前によく起きる

(行動チェック)
□毎食腹8分目以上食べている
□食事の時間や内容が不規則になりがち
□アルコール・カフェイン・炭酸・辛いもの・高脂肪食をよく摂る
□風邪薬や痛み止めを常用している
□ストレスを感じることが多い

【肝臓編】

(飲酒チェック)
□週に5日以上飲酒する
□二日酔いになるまでお酒を飲むことがある
□すきっ腹にお酒を流し込むのが好きだ
□自分に適したお酒の度数と量を把握していない
□飲むときにつまみ、とくに野菜をあまり食べない

(脂肪チェック)
□おなかまわりに脂肪がつきやすい
□脂もの(肉・揚げもの・スナック等)が好き
□糖質(米・パン・麺類や甘いもの等)が好き
□食事はまっさきに糖質から食べる
□運動習慣やアクティブな趣味がない
 

内臓疲労の対策

ここからは、実践編。「今回は『脳』、『胃腸』、『肝臓』の3エリアに共通してできる対策をお伝えします。まずは内臓を疲れさせないよう、食生活を見直してみましょう」

【食生活-内臓を疲れさせない食事法-】

①脂肪分の高い食事は控えめに

「脂肪分の多いものは消化吸収の負担が大きく、胃もたれや下痢などの症状が出やすくなります。油でカラッと揚げた天ぷらや脂身の多い肉など、脂っこいと分かりやすいものはもちろんのこと、乳製品やスイーツ、スナックなどのお菓子類も要注意です」

②魚を積極的に食べよう

「傷ついた細胞を修復するにはタンパク質が不可欠です。おすすめは、低脂質な鶏肉や魚介、大豆製品。なかでも魚は良質なタンパク質であると同時に、魚の油に多く含まれる『DNA』『EPA』が血中の脂質を調節してくれることもわかっているので、積極的に食卓に取り入れて」

③肉を食べるなら「鶏むね肉」!

「肉を食べたいときは、肉類のなかでも低脂質で高たんぱくな鶏肉がおすすめですが、鶏皮の部分は脂質が多いため、できればささみなど皮なしのものをチョイスしたいですね。鶏むね肉に含まれる『イミダペプチド』という物質は非常に抗酸化作用が強く、疲労因子を抑制する効果も抜群です」

④炭水化物は「茶色」のものを選ぶ

「糖質は重要なエネルギー源ですが、現代人にとって糖質コントロールは重要タスク。どの食品からどのくらい糖質を摂取するか、よく見極める必要があります。炭水化物を見直したい場合は、白米→玄米、白いパン(小麦粉)→茶色いパン(全粒粉)に変えてみてください」

⑤自分の体質に合ったものを見極める

「特定の糖質を消化しにくい体質をもつ人、香辛料やカフェインなどの刺激を受けやすい人など、腸内環境は人それぞれです。自分の食生活をレコーディングする癖をつけて、何を食べたときにどのような症状が出るのか、医師に伝えられるようになっておくとよいでしょう。食事と自分の体の反応を探求しておくことが、健康に生活するコツです」

⑥現代人の不調は「食べ過ぎ」かも

「結局のところ、内臓の疲れを感じているのなら、『食べ過ぎを控えること』が一番の薬かもしれません。現代の人の多くは食べ過ぎているケースもあるので、『腹8分目で終えること』『よく噛んでゆっくり食べること』を今一度意識してみてください」

【ストレスケア-心身の疲れを回復させる休息法-】

「ストレスは、内臓をはじめ、全身のコンディションを崩し、心身を疲れさせています。そのためストレスケアの方法を知り、ライフスタイルを整えましょう」

①なにはともあれ6時間寝る

「睡眠時間は心身の修復を行う時間。脳機能維持のためにも睡眠は欠かせないです。睡眠不足のときは、いつもよりイライラしやすかったり、落ち込んだり、普段許せることが許せなかったりしないですか? 睡眠の基本ルールは、極力同じ時価帯に、6時間以上まとめて寝ること

②夜は五感を使ってリラックス

「睡眠にスムーズに入っていくために、寝る前は日中の緊張をふっとゆるめて、リラックスして過ごしましょう。心地の良いヒーリングミュージックをかけてみたり、ストレッチをしたり、アロマなどで落ち着く香りを味わったり、瞑想もおすすめです」

③休日は趣味の時間に

「毎日のストレスを質のよい睡眠で癒やしたら、休日は没頭できる趣味を見つけよう。映画鑑賞、本や漫画、音楽、散歩、ランニング、ゴルフ、ヨガ……。「やらなきゃ」と思わなくてもついやりたくなってしまうものがGOOD。できたら、外に出たりするような趣味がおすすめです」

④ストレッチを行う

「体の緊張をほぐしてあげるのも重要なので、肩甲骨まわりや股関節まわりなど、あまり動かさない箇所を伸ばして、リラックス状態にしましょう」

まとめ

疲れが取れない、なんとなくお腹の調子がよくない、飲んだ翌日は仕事効率が下がる……など、「気のせい」と片付けられてしまいそうな不調は「内臓疲労」が原因かも。自分の体の状態を知り、食生活とストレス対策と向き合ってみて。

■お話を伺ったのは……

中田航太郎先生

中田先生

株式会社ウェルネス代表取締役、医師。東京医科歯科大学医学部卒。早稲田大学文学学術院でのマインドフルネス研究、東京逓信病院勤務などを経て、パーソナルドクターサービス「ウェルネス」を立ち上げる。

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Headshot of Nana Fukasawa
Nana Fukasawa
ウィメンズヘルス・エディター

2018年に「ウィメンズへルス」編集部にジョイン。アシスタントを経て、エディターとして美容、フード、ダイエットなどの記事を担当。流行りそうなヘルシーキーワードをいち早くキャッチすることを心がけている。CBDや筋膜リリース、アーユルヴェーダ、植物療法を学ぶ、自他共に認める“セルフケア マニア”。2023年初めてのハーフマラソンに挑戦。