生理不順やPMS(月経前症候群)などに悩まされている女性も多いのでは? 今回は、”女性が心も体も健やかに”の思いから2002年に健康講座「女性ホルモン塾」を立ち上げた医師・対馬ルリ子さんと美容家・吉川千明さんに伺った。今すぐ知るべき女性の体と不調の対処法とは?

1.生理における”不調”の原因は?

人は性別問わず、男性ホルモン・女性ホルモンを持っている。男性ホルモンは運動・筋肉・気力の質を高めたり、社会性・認知力を上げたりしてくれるもの。女性ホルモンは、妊娠や出産の機能を持つための体を作っている。実は、この女性ホルモンは月経サイクルを促すために体内の中で日々働いているのだ。

女性ホルモンには、「エストロゲン」と「プロゲステロン」と言う二つのホルモンがあり、

エストロゲン→外向き/体を快適にさせてくれる
プロゲステロン→内向的/敏感になり体を守ろうとする

この真逆の性質を持った2つのホルモンが、約1カ月の間、月経サイクルに合わせ体内に分泌される。 エストロゲンの分泌が排卵(生理後2週間程度)に向けてピークを迎えると減少。その後プロゲステロンの分泌が高まり、排卵後1週間でピークを迎えると徐々に減少すると、内膜が剥がれ、月経が始まる。

私たちが日常的に使う「生理」とは”正常範囲”であるという意味。本来は「月経」と呼ぶのが正しい。

このプロゲステロンが 最もピークになる頃から月経までの間(月経前の3~8日間)、PMS(月経前症候群)と言われる症状が出る人が多いと言う。

「国立スポーツ科学センターのトップアスリートを対象にした調査結果によると、7~8割の女性が月経の約1週間前くらいがパフォーマンスを落としていると回答しています。つまり、PMSのセオリー通り、多くの人がプロゲステロンの分泌が高い時に不調を訴えていました。プロゲステロンには体をむくませ、神経質にし、情緒不安定、体調の不安定、過敏、痛み、便秘などをもたらしやすい性質があります。ですが、これは統計な差であり、すべての人がそれに当てはまるという結果ではありません。また、同じ人にとっても、年齢や環境により変化します。

つまり、人によってはエストロゲンが上がるときや、多くの人が体調不良になる時(=月経の始まり)に調子がよくないこともあるということです。つわりが重い人もいれば、全くない人もいる。そんな風に、不調の受け方は個人差があり、ホルモンの変動に対する感受性の問題、生活環境の問題もあります。自覚症状とホルモンのレベルが完全に一致するわけではないのです」(対馬さん)

2. 自己判断で決めない、婦人科の症状

女性の体内では月経の周期にともなって、女性ホルモンのバランスがアップダウンしているために、精神的な浮き沈みや体の不調が男性より顕著に出てくる。ただでさえ日々変動している女性ホルモン。そのバランスは自律神経や免疫と連動しているので、心と体が大きな影響を受けている。

「自分の体のことをしっかり理解して、責任を持ってケアしてあげることが大事です。そのためには月経が始まる10代前半から、自分のかかりつけ医を見つけてください。例えば将来妊娠・出産したいのならば、子宮や卵巣は大丈夫か、貧血や栄養状態は? と、若い頃から自分の体の知識を持つことが重要なのです」(対馬さん)

「今、若い女性でも、生理不順やPMSに悩んでる方が多いと思います。ですが、悩んでるだけで、解決のために行動してない人も多いのではないでしょうか。生理がこないことを楽観的には捉えないで欲しいのです。その症状は、卵巣が働かず、無排卵状態になってしまっていることを示しています。動かない臓器はどんどん退化してしまう。もし、エストロゲンの分泌がないままにしておくと、若いのに骨が弱ってしまうことだってあるのです。その上、生理不順は、1年間放っておいたら、元に戻すにはその2~3倍の期間かかってしまいます。不調を放っておけば、体の老化にもつながってしまいます。また、これから妊娠を考えている人には、その準備のためにも、ちゃんと婦人科に行って、自分の体と向き合って欲しいと思っています」(吉川さん)

3. 生理不順、生理痛、PMSのためにできること

体調不良やだるい、辛い症状、情緒の不安定は、れっきとした体からのSOS。その声に耳を傾け、きちんと対処し、自分の体に責任を持つことが大事だ。

「ピルに対して抵抗ある人もいるようですが、私は低用量ピルを十数年間飲んで、本当にメンタルもフィジカルも安定して元気に仕事ができました。ピルはたくさんの種類があるんです。対馬先生も話していらっしゃいましたが、今のピルは進化型ピルで昔のピルとは大違いです。でも、もし処方されたピルが合わなかったら、ドクターと話し合って、化粧品と同じように、他に合うものを探してみてもいいのです。ピルにもたくさん種類が知られていないのも、とても残念です。ニキビ治療や肌荒れ、多毛症のために処方されるピルもあるんですよ。自費でも保険でも1カ月の処方でだいたい2~3千円くらいで済むので、常用薬としては、そんなに高い薬ではないですよね」(吉川さん)

目に見えないと、煩わしさから、後回しにしてしまいがち。だけど、見えないからこそ、何が起きているかわからない恐怖も大きいもの。ぜひ、自宅のそば、会社のそばでもいいから、かかりつけ医を見つけて、まずはチェックしてもらうことから始めてみよう!

お話を伺ったのは……

対馬ルリ子
女性ライフクリニック銀座・新宿 理事長

医療法人社団 ウィメンズ・ウェルネス理事長/産婦人科医師/医学博士/日本産婦人科学会認定医/母体保護法指定医/日本思春期学会理事/日本性感染症学会評議員/NPO法人女性医療ネットワーク代表理事/日本女性財団代表理事/1984年に東京大学医学部産婦人科学教室入局。都立墨東病院総合周産期センター産婦人科医長。2002年にウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック(現・女性ライフクリニック銀座)を開院。全国約600名の女性医師・女性医療者と連携し、女性の生涯にわたる健康のための情報提供、啓発活動等を活発に行っている。

吉川千明
コスメのみならず、食、女性医療、漢方、植物療法、ファッション、インテリア、旅、とナチュラルでヘルシーな女性のライフステイルを提案する美容家。2002年よりスタートした産婦人科医の対馬ルリ子先生とのセミナー「女性ホルモン塾」は通算150回を超え、女性達にライフステージに合わせたケアの仕方の大切さを伝え続けている。「美しくなれる自然療法」(主婦の友社)「オトナのための女性ホルモンの話」(宝島社)、「これからの美しさの磨き方」(KADOKAWA)など著書多数。

二人の共著に、「女性ホルモン塾」シリーズの第三弾として2020年9月に発行された「閉経のホントがわかる本」(小学館)がある。

(監修:対馬ルリ子)

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Chie Arakawa
ウィメンズヘルス・シニアエディター

タレント・アスリートインタビュー・スポーツファッション・ウェルネス記事などを担当。女性誌FRaUでファッション・スポーツ・ダイエットなどの編集キャリアを積み、その後スポーツライフスタイルマガジンonyourmarkのプロデューサーとして在籍後、2022年までウィメンズヘルス編集部に在籍。