女性一人ひとりの健康に役立つ製品の開発を目指すイギリスのスタートアップ、デイ(Daye)が、世界初となるタンポン型の性感染症(STI)検査キットを発売した。デイはこのキットにより、不安と恥ずかしい気持ちから検査・受診をためらう女性たちがより迅速に診断と治療を受けられるようになればと願っている。

デイの検査キットを使用すれば、アプリケーター付きのタンポンを膣に挿入して採取した分泌液を検査機関に送ることで、膣鏡や綿棒を使用することなく、5営業日以内に結果を知ることができる。

600人以上を対象とした臨床試験を行い、実用化されたこの検査方法は、膣内マイクロバイオーム(細菌叢)の研究においても”画期的なもの”だと称賛されている。

5年を要したこのキットの開発のきっかけは、デイの創業者、ヴァレンティナ・ミラノヴァさんに突然、訪れた瞬間だった。パートナーから、「STIと診断されたので、君もすぐに検査を受けるように」と伝えられたという。

「とても感情的になりましたこのとき彼からは、浮気をしていたことも打ち明けられました」「そのストレスに加え、すぐに検査の予約が取れるクリニックを見つけることもできませんでした。そのため、仕事が休みになる週末まで、待たなければなりませんでした」

「STIの検査を受けられるクリニックの待合室で、何時間も待たされることになりました」

女性の方が、男性よりSTIにかかるリスクは高い 

ミラノヴァさんを“混乱させ、無力感を与えた”この経験が、彼女が科学的な研究を始めるきっかけとなり、それがSTI検査用のタンポンの開発につながったという。

タンポンが発売されたちょうどいま、イギリスではSTIと診断される人が大幅に増加している。英健康安全保障庁(UKHSA)によると、2022年は前年から24%増加していたという。特に女性は生理学的な理由から、統計的に男性よりも感染のリスクが高いことが明らかになっている。

ミラノヴァさんは、2020年には生理痛を軽減する効果が期待できるCBD入りタンポンを発売したデイが今後、「英国民健康サービス(NHS)の財政面の負担を軽減すると同時に、スタッフの労働時間の短縮に貢献することになれば」と期待している。

すでに行った分析調査の結果、タンポンを使用した検査方法の方が「より患者に好まれるものであること」や、「個人と公的制度のどちらにとっても、医療費の負担が軽くなること」がわかっているという。

ただ、この方法を採用することに、懸念を持つ専門家もいる。疫学者のエマ・ハーディングエッシュ博士は『ガーディアン』紙に対し、「STI検査の方法としてタンポンが使用できるとした研究結果が、査読付きの論文として発表されていますが……マイコプラズマ・ジェニタリウムとトリコモナス腟炎が疑われる場合や、性器クラミジア感染症と淋菌感染症の検査に使用する場合のサンプルの採取に推奨されるのは、綿棒や尿(男性の場合のみ)です」と述べている。

デイはそのほか、子宮頸がんの主な原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染の有無をタンポンで調べる検査キットの開発を目指している。

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

From ELLE UK

From: ELLE JP
Lettermark
Naomi May
Acting News Editor

Naomi May is a freelance writer and editor with an emphasis on popular culture, lifestyle and politics. After graduating with a First Class Honours from City University's prestigious Journalism course, Naomi joined the Evening Standard as its Fashion and Beauty Writer, working across both the newspaper and website. She is now the Acting News Editor at ELLE UK and has written features for the likes of The Guardian, Vogue, Vice and Refinery29, among many others. 

Headshot of Ryoko Kiuchi

翻訳者。学業・仕事のため、5カ国の7都市でおよそ10年を過ごす。帰国後は経済・ビジネス関連の文書やニュース記事の翻訳を中心に、ウェルネス系の専門誌やアート関連の書籍、映像翻訳も手掛けるなど、長年にわたってフリーランスで活動。常に新たな情報に触れる仕事柄、心がけているのは、「浅くても、 何でも広く知ろうとすること」。