「パンは体に悪い」「オートミールはヘルシーじゃない」、こんな誤信が生まれても無理はない。去年の春以来、超加工食品は全国紙の見出しを一斉に飾るようになった。「“それは禁煙しようとするのと同じだ”:7人に1人が超加工食品に依存。一体なぜ?」とか、「死に追いやる超加工食品:我々はあまりにも利己的で食べることをやめられない」「専門家が警告:超加工食品から来る不健康の波」など。

事実、平均的なイギリス人は摂取カロリーの50%以上を超加工食品から摂っているという。超加工食品はどこにでもある。買いものカゴ、子どもたちのお弁当、キッチンのパントリー、生活のあらゆる場面に深く浸透してしまっている。

ところで、超加工食品ってなに? これらの食品が、私たちの健康にどんな影響を与えているの? アメリカ版ウィメンズへルスから詳しくみていこう。

超加工食品とは?

正式な定義はないけれど、「超加工食品とは一般的に5種類以上の原料を含み、家庭で作ることができないもの」と説明するのは、『Unprocess Your Life』の著者で栄養学者のロブ・ホブソン。

「保存料、乳化剤、甘味料、人工着色料、香料など、家庭料理では使用されることのない添加物や成分が多く含まれている食品です」とホブソン。

「超加工食品は、基本的に賞味期限が長いんですね。便利で安価で非常に美味しく作られているため、いとも簡単に食べ過ぎてしまいます」


超加工食品一覧

  • アイスクリーム
  • チョコレート/キャンディー/グミ
  • ハム
  • ソーセージ
  • ポテトチップス
  • 大量生産されるパン
  • 朝食用のシリアル
  • シリアルバー/エネルギーバー
  • ビスケット、クッキー、菓子パン
  • 炭酸飲料、栄養ドリンク、乳飲料
  • 惣菜
  • インスタントソース(調味料)
  • フルーツ味のヨーグルト
  • 粉末/包装されたインスタントスープ
  • マーガリン/その他のスプレッド
  • ウォッカ、ラム、ジン、ウィスキーなどの蒸留酒

「加工食品」と「超加工食品」の違いとは?

ボブソンいわく、加工食品には複数のカテゴリーがあり、これが加工食品と超加工食品の区別がつきにくい理由だという。

「最小限の加工が施された加工食品は、栄養成分を保持したまま保存期間を延ばすことを可能にするため、自然な状態に小さな改変のみを加えた食品のことです。冷凍野菜、豆類の水煮缶、湯通しされている穀物類、パスタ(小麦粉と水だけで作られたもの)などが含まれます」とボブソン。

「加工食品原料は、自然由来の食品に採掘、精製、圧搾、抽出などの加工を施したものです。塩、砂糖、バター、ハチミツ、メープルシロップ、オリーブオイルなどがその例です」

「そのため、加工食品は最小限の加工が施された食品に、塩や油、砂糖、その他の加工食品原料を加えて製造されています。塩水漬けの野菜類の缶詰や有塩ナッツ、個包装されていない出来立てのパンやチーズなどがそうですね。調理されたソースや市販のサラダ(ドレッシングなし)、添加物が使われていない自然由来の食材のみで作られた便利な食品なんかもこのカテゴリーに含まれます」とボブソン。

一方で超加工食品は広範な加工が施されており、大半は本来の自然な食材の状態とは随分かけ離れている。通常、これらの食品には添加物、人工香料、着色料、甘味料、保存料が多く含まれている。

超加工食品は体に悪いの?

ultra processed foods
Dawid Jozwiak//Getty Images

超加工食品は糖尿病、肥満、がんのリスクを増加させ、研究は超加工食品をさまざまな慢性疾患と関連付けている。最近の研究では、うつ病や不安、認知機能の低下などのリスクが高まるなど、便利で非常に美味しい超加工食品のさらなる欠点が指摘された。

「最近の研究では、超加工食品の摂取と心血管疾患、2型糖尿病、特定のがん、炎症性腸疾患、うつ病、認知症を含むさまざまな疾患リスクの増加に関連性があることが強調されました」とホブソン。

「中国の第四軍医大学の研究では、超加工食品の摂取量がもっとも多い人は、心臓病、脳卒中、心臓発作のリスクが24%増加することが示されました。超加工食品の適度な摂取は、2型糖尿病の発症リスクが12%上昇することと関連付けられています。さらに動物実験では、超加工食品に含まれる特定の乳化剤が腸内細菌の多様性を変化させることが示唆されました」

ホブソンいわく、この研究で興味深いのは、これらの疾患に関連があるとされる栄養(飽和脂肪、塩、砂糖など)を改善しても、リスクの増加には変化がない点だという。「要するに、超加工食品に含まれる乳化剤や人工甘味料などの添加物に原因があることを示しています」

さらに超加工食品は、食品の構造が変わっているため肥満の一因にもなっている。「柔らかい食感は体が満腹感を感知しにくいため、短時間でカロリーを摂り過ぎてしまいやすいのです」とホブソン。

これは、食べ過ぎや脂肪と炭水化物の比率の偏りにもつながり、そのせいで超加工食品がさらに欲しくなり、中毒性が高まる可能性もあるとのこと。「一部の超加工食品は、特殊な形状と口当たりによって消費量の増加を促すように製造されているものもあるほどです」とホブソンは付け加えた。

もちろん、さまざまな添加物が及ぼす正確な影響とその量を特定するにはさらなる研究が必要であり、「国籍や民族など多様なグループを対象により細かく研究する必要があります」とホブソンも補足している。「ですが、超加工食品の摂取量を減らすことが望ましいということは、明らかに言うまでもないでしょう。とくにイギリスでは、超加工食品が買いものカゴの50%を占めているという現状を考慮すると尚更のことです」

超加工食品に対し、「これを食べろ、あれは食べるな」といった単純すぎるアプローチをとらないことが重要だとホブソンは言う。「食の選択は、予算や利便性など、個人のコントロールには及ばないさまざまな要因が影響しています。例えば、個包装された市販のパンを買う代わりに、手作りのパンや高価なサワードウを選ぶように提案したとしても、それはすべての人にとっての現実的なアプローチではないでしょう。このような勧め方は、パンが主食の人にとっては全体的な栄養摂取量にまで影響を及ぼす可能性があります」

超加工食品を避けるには?

安価で便利な超加工食品を食べないようにすることは、健康のためにできる最良策の一つ。でも、なにから手をつけるといいんだろう? 「超加工食品の種類は膨大です。まずは、なにがいい選択肢なのかを特定するためのスライディングスケールがあると役立つでしょう」とホブソン。

1. まず必要なのは、超加工食品を見分ける能力。そして、自分がいつもなにを食べているのか、自宅のキッチン棚になにがあるかを観察すること。「まずは自分が超加工食品をどれくらい摂取しているのかを知ることがすべての始まりです」とホブソン。

2.  1日の中で、超加工食品にもっとも頼ってしまいがちな弱点ポイントを探す。「例えばそれは、仕事のランチタイムや子どもたちにご飯を食べさせるとき、仕事から帰って料理をする気力がないときかもしれません。まずは、この時間帯から取り組んでいくことをお勧めします」とホブソン。

3.  超加工食品でよく作っている料理を手作りできないか考えてみる。「いくつかレシピを試してみて、食費の節約と疲れた日のために多めに作って保存しておきましょう。一から調理しようとすると、かえってコストが高くつくケースもあります。すぐに食べられるインスタントラーメン、フィッシュケーキ、カレーなどがその例かもしれません」

4. 普段よく使っている調味料やソース、おやつを手作りする。「ケチャップやペストソース、ホットソース、プロテインバーなど。最初は1つで構いません。1つであれ、それを買うより手作りする習慣を身に付けていくことのほうが大切です」

5. すべてを手作りする必要はない。市販のものの中には、はるかに優れた商品もある。「例えば植物性のミルク。穀物、豆類、ナッツに水、少量の塩だけで作られたものもありますし、増粘剤や安定剤などの添加物が含まれているものもあります。大切なのは、原材料名でなにを確認すべきか理解しておく必要があるだけです」

6. 「面倒なこと」だと捉えないで。「ゆっくりとシンプルに始めていくことです。家族みんなを巻き込み、子どもたちに手伝ってもらいながら楽しんで取り組んでください。そして、健康的な食事をとること、家庭料理の重要性について教えてあげるのです。お金をかける必要もありません。常に安く購入する方法もあります。例えば、買いものは1箇所で済ませず、複数の店で購入することで、商品の価格や品質を比較できたり、セール品や特売品を見つけることもできるでしょう」

超加工食品を減らすということは、それらを見分けられるようになること(原材料にも注意を払うこと)。包装された食品や出来合い品を購入するときは、家で使う材料や自分が知っている食材で作られた商品を選ぶようにしよう。

超加工食品の代替品は?

ultra processed foods
igoriss//Getty Images

超加工食品をやめる代わりに、なにを食べるといいの? ホブソンのアドバイスは以下の通り。

  1. 炭酸飲料 → 水、またはハーブティーに置き換える。
  2. 市販のポテトチップス → 野菜チップスを手作りするか、ナッツやシードを食べる。
  3. 賞味期限が長い市販のパン → 食費に余裕がある場合は、焼きたてのパンをベイカリーで買うか、全粒粉のパンを自分で焼いてみる。
  4. よく食べる惣菜やテイクアウトのご飯 → 手作りし、作り置きする。
  5. 砂糖がたっぷり使われた市販の朝食用シリアル → 自家製グラノーラに置き換える。
  6. 市販のフルーツ味のヨーグルト → プレーンのヨーグルトに新鮮なフルーツをトッピングするか、冷凍フルーツと少量のハチミツをフライパンで煮て作ったコンポートをトッピングして食べる。
  7. おやつ → ドライフルーツ、ナッツ、オーツ麦でスナックバーを手作りする。
     

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: ALICE BARRACLOUGH Translation : Yukie Kawabata

Headshot of Alice Barraclough
Alice Barraclough
Nutrition Editor

With nearly a decade of journalistic experience – in print, online and social – at national newspapers and lifestyle magazines, it’s fair to say Alice has tried it all when it comes to health and fitness. From packing herself off to an extreme Aveduric retreat in Sri Lanka and sweat-testing every new fitness fad to running the London Marathon and completing a 70.3 IronMan, Alice now looks after WH’s food content. With a ‘food first’ ethos, she is here to help you decipher exactly which foods will support your health, and which macro-counting, pasta-replacing, intermittent-fasting, 13-day cleanse is just, well, a scam. A keen baker and host, her favourite dessert has to be pavlova (with lots of summer berries and whipped cream, of course).

Headshot of 川畑 幸絵

短大卒業後バンクーバー、メルボルンで2年留学した後、外資系客室乗務員として勤務。2018年に退職後、翻訳者としてフリーランスに転身。アメリカで統合栄養学を学んだ経験もあり。