ビタミンDは、日光によって体内で産生される脂溶性のビタミン兼ホルモンで、体内の主要な生理学的機能の多くを支えている。

ビタミンDの重要な役割の1つは、骨代謝に関係する栄養素(カルシウム、マグネシウム、リン酸塩など)を吸収する腸の能力を高めること。

これまでの研究により、ビタミンDには筋肉の回復を促す役割もあることが分かっている。また、ビタミンDは気分の改善と食欲の調節に大きく関わるセロトニンの分泌量を増やすので、ビタミンDを摂取すると結果的に気分がよくなる。

代謝学専門誌『The Journal of Metabolic Research』掲載の論文によると、165名の男性がビタミンDのサプリメントかプラセボを1年間飲んだところ、ビタミンDを飲んだ男性はプラセボを飲んだ男性よりもテストステロンの産生量が多かった。テストステロンは体組成に深く関わっており、引き締まった筋肉をつくる上では特に重要。よってビタミンDレベルの管理は、健康のためにもパフォーマンスのためにも不可欠と言える。

ビタミンD欠乏症の原因は?

ビタミンD欠乏症になるのは日光を十分に浴びていないときや体内のビタミンDが枯渇したとき。夏の間にビタミンDを溜めておいても、冬の間にサプリメントで補充しないと在庫は底をついてしまう。ランニングなどの運動をする人は、筋肉を回復させるためにビタミンDを使っているので欠乏症に陥りやすい。また、肌の色が黒い人はビタミンDの必要量がもともと多く、冬の間だけ(一般的に推奨される)1日2000IUを摂取しても足りない可能性がある。肌の色が黒い人は1年中サプリメントを摂取する必要があるかもしれない。

ビタミンD欠乏症の症状は?

一般的には、血中のビタミンD濃度が:

・50nmol/L以上なら十分で、骨を含む健康全般を問題なく支えられる。
・50nmol/L未満は低すぎで、骨が弱くなり、健康に悪影響が出るかもしれない。
・150nmol/l以上は高すぎで、健康上の問題が生じかねない。

でも、運動量が非常に多い人は少なくとも75nmol/L、できれば90nmol/Lを維持することが好ましいとされている。血中のビタミンD濃度は、病院だけでなく自己検査キットでも測定可能。

ビタミンD欠乏症の最も顕著なサインの1つは疲労で、ときには糖蜜の中を歩いているような感じがするほど。ビタミンDが不足すると、トレーニング後の筋肉痛の悪化や回復の遅れが見られたり、気分が落ち込んだりすることもある。

ビタミンDを豊富に含む食材は?

もともとビタミンDを含む食材は非常に少なく、脂の多い魚や卵などに限られている。ビタミンDが強化された食品を摂取してもニーズを満たせる可能性は低いので、ビタミンDは本当にサプリメントで補充するべき数少ない栄養素の1つと言える。

1日に必要なビタミンDの摂取量は?

1日に必要なビタミンDの摂取量は血中のビタミンD濃度次第。血中のビタミンD濃度が十分な人は1日2000IUを目安にしよう(特に9月から4月の秋冬)。

血中のビタミンD濃度が50~75nmol/Lの人は1日5000IUを摂取するべき。

血中のビタミンD濃度が30nmol/L未満でビタミンD欠乏症の可能性が高い人は摂取量を増やす必要があるので、医師か栄養士に相談を。

なお、ビタミンDにはD2とD3の2種類がある。D2は植物由来でビタミンDが強化された食品や一部のサプリメントに含まれており、D3は人間の体内で自然に作られ、動物性食品に含まれている。

でも、D2とD3のサプリメントの効果を比較した対照試験のメタ分析により、血中のビタミンD濃度を高めて長時間キープする能力はD2よりD3のサプリメントのほうが高いことが分かっている。

また、ビタミンDのサプリメントはスプレーもカプセルも効果的とされているので、形状は自分の好みと続けやすさで選べばいい。

※この記事は、イギリス版『Runners World』から翻訳されました。

Text: Renee McGregor Translation: Ai Igamoto

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伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。