低アルコール飲料やノンアルコール飲料で飲酒量を減らそうとしている人は世界中で増えており、英慈善団体Drinkawareが発表した2021年のデータによると、英国に住む成人の5人に1人はノンアルコール飲料の力を借りて飲酒量を抑えている。
それもあってノンアルコール飲料の人気は右肩上がり。英国ビール・パブ協会によると、パブにおける低アルコール飲料とノンアルコール飲料の2022年の売上は前年比23%増で、2019年から2倍以上に伸びている。
おかげで世間には多種多様な低アルコール飲料とノンアルコール飲料が存在するし、いまは定番のジントニックもノンアルコールで飲める時代。だから、アルコールが体に与える影響を懸念する人には、“断酒”の代わりに低アルコール飲料とノンアルコール飲料で“減酒”するという選択肢もある。
でも、そうする価値は本当にあるのだろうか。ヘーゼル・ウォレス医師の見解を聞いてみた。イギリス版ウィメンズヘルスから見ていこう。
そもそも低アルコール飲料/ノンアルコール飲料とは?
「一般的に、アルコール度数が1.2%未満のものは低アルコール飲料、0.05%以下のものはノンアルコール飲料とされています。アルコール度数は液体の体積に占める純アルコールの割合を示す数字なので、ワインのボトルに“アルコール度数12%”と書かれているなら、そのワインの体積の12%は純アルコールということになります」
「アルコールの度数とユニットは別物ですが、度数を使ってユニットを算出することはできます。計算式はアルコールの度数(%)×液体の量(ml)÷1000。よって、標準的なラージサイズのグラス(250ml)に注いだアルコール度数12%のワインは約3ユニットになりますが、アルコール度数0.05%のノンアルコールワインは0.0125ユニットにしかなりません」
英国には、アルコール度数が通常より(最低でも30%)少ない“reduced-alcohol”と呼ばれるアルコール飲料も存在する。「でも、この言葉の使用条件を定める英国またはEUの法律はありません」
低アルコール飲料とノンアルコール飲料の製法は?
「化学の授業で習ったかもしれませんが、アルコールは発酵というプロセスを経て作られます。発酵とは、酵母菌を使って糖をアルコールと二酸化炭素に変換すること。低アルコール飲料とノンアルコール飲料を同じ方法で作ることもできますが、完全に発酵されない可能性があります。また、ノンアルコール飲料は、通常のアルコール飲料からアルコールを分離して作られるのが一般的です」
低アルコール飲料とノンアルコール飲料を選ぶことによるメリットは?
1.アルコールの摂取量が減る
飲む量が減れば、そのぶん酔っ払う可能性が低くなるので、睡眠の質が維持されて二日酔いになりにくくなる。その結果、飲んだ翌日をソファの上でダラダラ過ごし、生き返るためにピザを頼むということも減る。
基本的に、飲酒量が減ると健康的な行動が増えると思っていい。
英国保健省のガイドラインによると、飲酒が原因の病気(がん、肝臓や心臓の病気、脳卒中、脳や神経系の損傷)のリスクを上げないためには、男性も女性も、1週間の飲酒量を14ユニットまでにするべき。
1週間でワインかビールを6杯飲めば、それだけで14ユニットになってしまうため、ときどき低アルコール飲料かノンアルコール飲料にすることでユニット数を抑えるというのは有効な策。
でも、低アルコール飲料と知った途端に飲む量が増えてしまう人がいる。これは低アルコール飲料がアルコール飲料というよりむしろ炭酸飲料の代わりとして売られているばかりか、ランチタイムなどで頻繁に飲むことが勧められているから。
2.カロリーと糖質の摂取量が減る
低アルコール飲料とノンアルコール飲料は普通のアルコール飲料よりもカロリーと糖質が低いので、生活習慣の改善に役立つと言われるけれど、これは絶対じゃないし、飲み物、メーカー、ミキサー、摂取量によって大きく変わる。
一例として、BECK’Sのノンアルコールビールは、同社の普通のビールに比べてカロリーは約半分でも糖質量は変わらない。また、ノンアルコールのソーヴィニヨン・ブランは、普通のソーヴィニヨン・ブランに比べてカロリーは少ないけれど糖質が意外と多い。
まずはBECK’Sのビールから。
ノンアルコールのベックスブルー(100mlあたり)
カロリー:14kcal(1本あたり53kcal)
脂質:0g
炭水化物:3.1g(うち糖質0.2g)
タンパク質:0.3g
通常のベックス(100mlあたり)
カロリー:38.4kcal(1本あたり105kcal)
脂質:0g
炭水化物:2.6g(うち糖質0.1g)
タンパク質:0.52g
次にソーヴィニヨン・ブランで比較してみる。
EISBERGのノンアルコールのソーヴィニヨン・ブラン(100mlあたり)
カロリー:22kcal(250mlあたり55kcal)
脂質:0g
炭水化物:4.9g(うち糖質4.9g)
タンパク質:0g
アルコール度数8~13.5%の一般的なソーヴィニヨン・ブラン(100mlあたり)
カロリー:75kcal(250mlあたり187.5kcal)
脂質:0g
炭水化物:3g(うち糖質3g)
タンパク質:0.1g
「ご存じの通り、グラス1杯の赤ワインは健康に良いと言われていますが、アルコールと健康の関係は複雑です」
「適度な飲酒(1日1杯程度)は一部の病気、とりわけ心疾患や脳卒中のリスクを下げるというエビデンスがある一方で、アルコールに安全と言える量はなく、デメリットがメリットを上回ると結論付けた論文も存在します。私は個人的に両方の見解を支持しています。飲みすぎは間違いなく体に悪いですが、ごく少量のアルコールが人体に害を及ぼす可能性は低いでしょう。とはいえ、もともとお酒を飲まない人が心臓に良い可能性を考えて飲み始める必要はありません」
低アルコール飲料とノンアルコール飲料に関する医師の見解
「お酒を飲みたくないときや、1人だけオレンジジュースで取り残されたような気分になりたくないときは、低アルコール飲料およびノンアルコール飲料が役に立ちます。でも、いつも飲んでいるアルコール飲料に“プラスで”飲まないようにしてください。そうしないと、自分の予想をはるかに超える量のアルコールを摂取することになりかねません。とはいえ、ときどき普通のワインやジントニックを飲むことに罪悪感を抱く必要はありませんよ」
「お酒を完全に断ちたい人や絶つ必要がある人はノンアルコール飲料を選んだほうがいいでしょう。飲酒量を減らしたいときは低アルコール飲料が役に立つかもしれませんが、アルコールに関連した問題があるときは低アルコール飲料もノンアルコール飲料も避けたほうがいいですね。そして、自分の飲酒量が気になるときは医師やカウンセラーに相談しましょう」
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Dr Hazel Wallace Translation: Ai Igamoto
ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。