エネルギー産生栄養素の一つである糖質を制限して体重を減らす糖質制限ダイエットは、10年ほど前の流行からいまだにブームが続いており、読者の中にも経験者が多いはず。

「一時的に目に見える数字(体重)で大きな結果が出るのは当然ですが、それは体中のエネルギーが枯渇しただけです。一日で2kg痩せることは、糖質と水分が枯渇し、乾いた体になるだけなので、難しいことでも不思議なことでもありません」

そう語るのは糖質制限ダイエットに警鐘を鳴らすパーソナルトレーナーの林健太さん。

厚生労働省の調査によると、我々のエネルギー摂取量は年々減少傾向。しかも炭水化物(=糖質+食物繊維)摂取比率が減り、脂肪エネルギー摂取比率が増えるという逆転現象も起きている。

糖質の2倍以上カロリーがある脂質の摂取量は増えているのに、総摂取カロリーは減少傾向。それなのに肥満で悩む人が後を絶たないということは、糖質制限ダイエットに矛盾を感じてもおかしくない。

もちろん現実には糖質過多で太っている人も多いが、清涼飲料やお菓子、お米と麺を組み合わせた食事過多などの不摂生は、制限ではなく元の範囲にコントロールして戻すだけ。

「コンビニに行けば糖質オフ商品はもちろん、今ではお米の糖質がカットできる炊飯器まで販売される異常事態です。どこまでも悪者扱いされる糖質ですが、制限せずにコントロールしながら食べてダイエットするほうが、成功率は格段に上がります」

①かぼちゃ

japanese green pumpkin on white background
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「食事指導では根菜類の糖質までカットさせる指導者もいますが、含まれる糖質量はわずか10~15%程度です。しかもそのうちの1/3程度は食物繊維なので、ダイエット中に食べないという選択肢はありえません」

糖質+食物繊維が炭水化物として表記されているものの、その割合までをしっかりと読み取っている人は少ないはず。

食物繊維は糖の吸収を穏やかにする成分としても有名で、様々な食品に添加されている。

「かぼちゃは根菜類の中でもビタミンやミネラルが豊富で、皮や種まで食べることができるホールフード食材です。主食としてはもちろん、おかずやデザートとしても活躍するので、さつまいもをよく食べる人にもおすすめです」

かぼちゃは、さつまいもより糖質が少なく、食物繊維も多い。さらにビタミンAは200倍以上も含んでいるので、糖質=老けるというイメージを持って控えている人は、まずかぼちゃから食べて糖質を補ってみて。

②フルーツ

bowl of fresh fruit grapes, bananas, strawberries, grapes, oranges, and kiwi on white background
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ダイエットでは避けてしまいがちなフルーツも、林さんがおすすめする糖質源の一つ。

古くから”朝の果物は金”と言われるほどで、睡眠中に失われた水分やエネルギー、起床時に大量消費されるビタミンを補うには最適。

「野菜やフルーツはビタミンやミネラル、食物繊維も豊富なので、糖質という一つの栄養成分だけに執着せず全体として捉えることが大切です。また、種類によっては80%以上が水分なので、普段から水が十分に飲めない人も、食事からの摂取源を増やすことにも繋がり、ダイエットにも良い影響を与えてくれます」

糖質の代謝で必要とされる代表的なビタミンB1やマグネシウムは、白米や菓子パンにはほとんど含まれない。

つまり、いくら取り入れる量のコントロールをしても、その後の消化や代謝スピードが異なり血糖値などへの影響も変わる。

積極的に摂るべき糖質は、一つの栄養だけに着目せず、その食材が全体としてどれだけ栄養がありメリットが大きいかを見極めることが重要だ。

③さつまいも

close up of sweet potatoes against white background
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ダイエッターの定番となりつつある糖質源のさつまいもは、血糖値の上昇が緩やかで食物繊維も豊富。満腹感も得やすく調理も簡単なので多用している人も多いはず。

「白米よりも少量で満腹感が得られますが、糖質という点だけに注目すると白米と量はほとんど変わりません。いくらダイエットに向いているからと言って、食べ過ぎたり調理工程で不要な油や砂糖を使ってしまったりしては逆効果になります」

他にも間食などで焼き芋や干し芋を食べる人も多いが、林さんは選ぶ際に一つ心掛けてほしい点があるそう。

「野菜や果物の種や皮には、外敵や厳しい環境から身を守るために作られる抗酸化栄養成分・フィトケミカルが多く含まれています。商品を選ぶ際の一つのポイントとしては皮つきを選ぶことです」

さつまいもの皮の紫色はポリフェノールが含まれている証拠。抗酸化や抗炎症は、普段よりもストレスが大きくなるダイエット生活には欠かせない作用。

他にも皮つきは皮なしと比べてβカロテンが1.5倍、食物繊維が1.3倍にもなるので、長期的に考えるとダイエットにも大きな差が出てくることは間違いない。

④そば

zaru soba
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そばは主食の中でもタンパク質が多く含まれ低脂質。ビタミン類も多く、血糖値も上がりにくい故にダイエットには最適な糖質源と言われる。

しかし、そばの全てを一括りにして考えてほしくないと林さん。

「十割蕎麦や二八蕎麦など、商品でそば粉の割合が違うことはもちろんですが、そば粉の挽き方でも栄養価は大きく変わります。そば殻のまま製粉した、色が黒めの挽きぐるみや田舎そばと呼ばれるものは、お米に例えると玄米のようなそばで、栄養価が最も高くなります」

内層粉から作られる白っぽい麺の更科蕎麦と比べて食物繊維やマグネシウム、鉄や亜鉛は2~2.5倍も多く含まれる。

前述の通り、植物の外皮には多くのフィトケミカルが含まれているため、運動後に食べる糖質源としても栄養価の高いそばは最適。

「そばに含まれるルチンやケルセチンは、錆びない体を作る抗酸化作用はもちろん、血管の弾力性を保ち、血流を促す作用もあります。血流の低下はダイエットに悪影響を及ぼすので、水分も摂れるそばは激しい運動をするダイエッターにもおすすめです」

⑤パスタ

peperoncino half eaten
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パスタは一人前100g当たりの糖質が70g以上。

お米にするとお茶碗大盛一杯にも匹敵する量になるので、ダイエット中には避けるべき糖質かと思いきや、林さんにとってはこれもおすすめの糖質。

「ただし、パスタと一口に言っても原材料は様々です。小麦だけでなく玄米、とうもろこし、こんにゃく、エンドウ豆、大豆、モロヘイヤ、そば粉など、探せば様々な種類のパスタが見つかります」

もちろん栄養の摂りすぎは肥満を招く原因にもなるが、同じ食事でも一つの栄養だけに目を向けず、広い視野で見ることにより、ダイエットの継続率が変わる。

さらに、ダイエット中かつグルテンを気にする人にとっては、選択の幅が狭くなるどころか広くなり、食事のストレスからも解放されるだろう。

「糖質を制限せずにダイエット行うことで、長期的に楽しく継続することにも繋がります。一時的に痩せるだけでないストレスフリーなダイエットをしたい方は、糖質を味方につけることが最大の近道です」

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林健太
NESTA公認トレーナー SIXPADオフィシャルトレーナー

 幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
 卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
 選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/