甘いものや脂っこいものは、おいしい。それに、なぜか食べるのを我慢できなくなってしまう。新たな研究によると、それには心と体が関係しているとのこと。

科学誌『Cell Metabolism』で発表された研究では、「糖分」と「脂質」を欲する2つの神経経路が、別々ではあるが“並行して存在する”ことが判明。これらは腸から脳に信号を送り、アイスクリームやクッキーなどを食べると、報酬系のホルモンであるドーパミンが体内で活性化し、喜びを感じさせるそう。

また、腸と脳をつなぐ迷走神経が、腸の神経細胞を通じて糖分や脂質を引きつける情報を送っていることもわかった。つまり、どんなに自分の意思で避けようと思っていても、無意識のうちに糖分や脂質を欲してしまうということ。

これはそれぞれの経路で起こりうるが、研究では糖分と脂質両方の神経経路が反応すると、いつも以上に多く食べたいという衝動に駆られることも発見された。バランスの取れた食事で満腹感を得ても、その後にデザートを食べる余裕があるのはそのため。

ここでは、この研究結果をもとに、甘いものや脂っこいものを欲してしまう理由と対策について、専門家の解説とともに詳しく説明する。

assorted of glazed christmas and new year donuts on grey table
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なぜ甘いものや脂っこいものを食べたくなるの?

これにはいくつか理由がある。登録栄養士のスコット・キートリーさんは、「糖分と脂質への欲求は、進化生物学に深く根ざしています」と説明。「歴史をたどると、これらの栄養素は希少で、高密度のエネルギー源として不足時に役立ち、生き残るために非常に貴重なものでした」

また、登録栄養士のジェシカ・コーディングさんによると、現代では糖分と脂質は足りているものの、体はまだ欲してしまう状態だという。「糖分は、エネルギーを得られる手っ取り早い手段なのです」と、コーディングさん。そして摂取後は、体が自分をすばやく元気にしてくれる物質だと認識する。「疲れているとき、糖分はとても魅力的に見えると思います。それは、体がすぐにエネルギーを得られると考えるからです」と続ける。

脂質もまた、エネルギーを生み出して蓄えることができる、とコーディングさん。「脂質はより多くのカロリー、つまり、より多くのエネルギーを供給します」と補足する。キートリーさんも、体はエネルギーを蓄えるために脂質を欲することもあるが、それがおいしいものだということにも気づいているのだろう、と述べている。「このような欲求は、実際に栄養が必要かどうかよりも、喜びや報酬を求める脳の欲求であることが多いのです」

woman stealing biscuit, caught in the act
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糖分や脂質が脳にもたらすものとは?

「糖分と脂質は、脳の報酬系を活性化させます」と、キートリーさん。「この活性化が行動を強化し、欲求と消費のサイクルを生み出します」「時間がたつと、脳の化学的な反応や構造が変化し、意思決定や自制心、報酬系そのものの感度に影響を及ぼす可能性があります」

コーディングさんによると、糖分や脂質は、子どもの頃の特定の記憶や、食べ物への愛着を思い出させる作用もあるという。「行動学的な観点から、さまざまな食べ物に『心を落ち着かせる』要素があるのです」

しかし、糖分や脂質を摂取しすぎると脳内でループが生まれ、「常にもっと食べたくなるようになる」と、コーディングさん。それは、パスタやジュースのような炭水化物も同様で、体はさまざまな供給源から即効性の高いエネルギーを求めるようになるとのこと。

不要な糖分と脂質を欲しているときは、どうすればいい?

専門家も、この欲求と闘うのは大変なことだと認めている。そのうえで、キートリーさんは次のことを提案。

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  1. マインドフルな食事にフォーカス。「空腹と満腹の合図に注意を払い、ゆっくりと食事を楽しみ、味わいましょう」
  2. ストレスをためないように心がける。ストレスは欲求の引き金になることがあるため、運動や瞑想、趣味などで解消することが効果的。
  3. 我慢できない食品は避けるか、制限する。糖分と脂質が多く入っている食品は、日頃から身の回りに置かないように。
  4. 7時間以上の睡眠を心がける。「十分な睡眠は、食欲に影響するホルモンの調整に欠かせません」
  5. 水分補給をする。「喉の渇きを空腹や食欲と勘違いすることもあるので、水分補給を続けることはとても大切です」
  6. 大切な人にサポートを求める。友人や家族の支えがあれば、糖分と脂質への欲求と闘うこともできる、とキートリーさんは指摘。「あなたに寄り添ってくれる人たちと、一緒にいるようにしましょう」

コーディングさんは、食欲に悩まされるのなら、食生活全体にも目を向けることを推奨している。「意外かもしれませんが、食欲に悩んでいる人には、炭水化物を十分とっているかを確認します」「一日をとおして炭水化物が少なめの食事をしていると、午後7時頃を過ぎてから、炭水化物や糖分を渇望してしまいます。実は、これはよくあることなのです」

また、十分なタンパク質と良質な脂質をとることも、満腹感を長く維持し、炭水化物の分解を抑える効果もある、と説明。それでも悩みは消えず、日々行っていることが役に立っていないと感じた場合は、登録栄養士に相談してみましょう、とコーディングさんは助言する。

将来的には、過食を止めることも可能になる?

この研究では、何が食欲や食行動をコントロールしているのか、なぜ糖分や脂質の多い食品を我慢することが難しいのかがよりクリアになった。さらなる研究が必要ではあるが、今回の発見は、将来的には過食を根本から止める方法を示唆するものでもある、とコーディングさん。「これは興味深いことです」「私たちは、迷走神経のさまざまな役割や、腸と脳のつながりについて、常に学び続けています。ある特定の食べ物がなぜ魅力的なのかを知ることは、貴重な情報です」

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

From Prevention

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Korin Miller
Korin Miller is a freelance writer specializing in general wellness, sexual health and relationships, and lifestyle trends, with work appearing in Men’s Health, Women’s Health, Self, Glamour, and more. She has a master’s degree from American University, lives by the beach, and hopes to own a teacup pig and taco truck one day.
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 高校生時代にアメリカンカルチャーの影響を受け、大学在学時にアメリカ・シアトルにてホームステイを経験。海外ドラマに関するWEBメディアでライターを務める。海外エンタメ・セレブ、ロイヤルファミリー、ヘルス・ウェルネス記事をメインに、翻訳を担当。手話技能検定3級、世界遺産検定2級、アロマテラピー検定1級を持つ。