ナチュラルフード業界で、ヒマワリの種やごまなどを原料とするシードバターが注目を浴びている。

「シードバターは、ピーナッツバターやアーモンドバターと同じように使えます」と話すのは、スポーツ栄養士のサラ・シュリッチャー。

ナッツバターとシードバターを併用すれば、摂取できる栄養素の幅が広がるし、ナッツの風味に飽きてしまうこともない。今回はスーパーでシードバターを手に取る前に、知っておくべきことを見ていこう。

シードバターとは

ナッツバターと同様、シードバターも生か素焼きのシードを挽いて、滑らかなスプレッドにしたもの。もっとも普及しているのはタヒニ(ごま)、ヒマワリの種(サンフラワーシード)、カボチャの種(パンプキンシード)のバターで、ニッチなものにはスイカの種やヘンプシードのバターがある。ココア、シナモン、チアシードなどが加えられているものも珍しくない。

シードバターの栄養価

いくつかのシードバターに含まれる植物性タンパク質の量は、ピーナッツバターと同等、そしてアーモンドバターよりもやや多い。

「シードバターはアクティブな人、特にプラントベースの食生活を送る人のタンパク質の摂取量を満たす上で間違いなく役に立ちます」とシュリッチャー。

シードバターに含まれるタンパク質は、必須アミノ酸をすべて含む“完全”タンパク質ではないけれど、植物性および動物性の食品で欠けているアミノ酸を補えば問題ない。

「ナッツバターとシードバターの質は同等で、どちらにも筋肉のタンパク質合成と修復を促し、分解を防ぐ分枝鎖アミノ酸(BCAA)が含まれています」

赤身肉や加工肉の代わりに植物性タンパク質を摂取すれば、心臓が元気になることを示す研究結果は増えている。でも、シードバターより豆類のほうが体のニーズを満たしやすいので、肉を食べない人は、できるだけ豆類から植物性タンパク質を摂取して。

シードバターの脂質は、その大部分が不飽和脂肪酸なので超ヘルシー。

「常温で液体化する不飽和脂肪酸は、心臓の健康と認知機能の促進、炎症の抑制に大きな効果を発揮します」とシュリッチャー。

臨床栄養学専門誌『The American Journal of Clinical Nutrition』掲載の研究結果は、飽和脂肪から摂取するカロリーの約10%を不飽和脂肪から摂取するカロリーで置き替えれば、それだけで心機能マーカーの数値が改善することを示している。

シードバター(特にサンフラワー/パンプキン/ヘンプシードバター)は、マグネシウムの優秀な供給源でもある。マグネシウムは骨形成、タンパク質合成、エネルギー産生に不可欠な栄養素。『The American Journal of Clinical Nutrition』掲載の論文によると、マグネシウムはビタミンD代謝(体内のビタミンDを活性状態にすること)に必要なので、マグネシウムが不足するとビタミンDまで不足する。これは、骨にとっても免疫系にとってもよろしくない。アメリカ人の約半数にはマグネシウムが不足しているけれど、食生活にシードバターを取り入れれば、不足が補いやすくなる。

フムスにも使われるタヒニは、リンの宝庫。リンは「ビタミンDやカルシウムと同様、骨の主要な構成要素です」とシュリッチャー。「骨を強くして、ケガのリスクを下げるために必要なミネラルです」

シードには銅も含まれている。銅は、エネルギー産生だけでなく、結合組織と神経伝達物質の形成にも必要なミネラル。シュリッチャーいわくパンプキンシードバターには、血液凝固、骨の健康、代謝に関わる脂溶性ビタミンのビタミンKがとりわけ多い。小規模とはいえ代替治療専門誌『Alternative Therapies In Health And Medicine』掲載の予備調査結果は、ビタミンKを豊富に摂取すると、アスリートの最大心拍出量が増し、結果的にパフォーマンスが向上する可能性を示している。

また、シードバターはナッツバターよりカロリーが低いと言われるけれど、その差は微々たるものなので、1日の総カロリー摂取量には大した影響を与えない。

ただし、シードバターにも種類によっては砂糖が潜んでいることがあるので、ハチミツ、糖蜜、甘蔗(かんしょ)糖などの甘味料が使われていないことを要確認。「でも、ランナーをはじめとするアクティブな人にとっては問題にならない量です」とシュリッチャー。「ワークアウトのエネルギーを補給するために摂取するなら、なおのこと問題になりません」

シードバターの使い方

サンフラワー、ごま、パンプキンのシードバターは、アーモンドバターより価格が低い。でも、通常はピーナッツ製品が一番安い。

シュリッチャーによると、ナッツアレルギーの人にはシードバターが非常にオススメ(ただし、ごまアレルギーの人はタヒニを避けて)。

サンフラワーシードバターは、とろみと風味の点でピーナッツバターに一番似ている。パンプキンシードバターは自然の風味が強く、少し緑がかっている。ピーナッツバターとはかなり違うので、慣れるのに時間がかかるかもしれない。

シードバターはトーストに塗ってもいいし、スムージー、ディップ、ドレッシングに混ぜてもいい。サラダや穀物ボウルにかけるクリーミーなドレッシングにはタヒニがオススメ。サンフラワーシードバターは自家製のエナジーボールと相性がよい。オートミールに加えたりスライスしたリンゴに塗ったりすれば、朝食やスナックがパワーアップする。

結論

基本的に、ピーナッツバターやアーモンドバターが使えるものにはシードバターが使えると思っていいけれど、シードバターを使わなくても、食事の栄養価や風味の面で大損することはない。 

※この記事は、ランナーズワールドから翻訳されました。

Text: Matthew Kadey, M.S., R.D. Translation: Ai Igamoto