運動の有無に関わらずタンパク質は十分に摂りましょう。
良質な脂質をしっかり摂るように心掛けましょう。
ビタミンミネラルは不足しないように注意しましょう。
ダイエット経験のある人であれば、これらの言葉はどれも聞いたことがあるだろう。食べないダイエットではなく、必要な栄養を摂りながら痩せていくことができれば体への負担が少ないのは当然の話。
そんな中でよく基準にされるのが五大栄養素。これらは我々が生きていく上で欠かせない栄養素ではあるものの、実際に不足するとどんな影響が出るのかは、正しく理解していない人も多いのではないだろうか。
ダイエットをする際、不足させず摂るようにとは言われるものの、十分な量を毎日摂取することはなかなか難しい。
しかし、不足状態が続くとどうなるのかを理解すれば、食事への意識も変わってくるのではないだろうか。
そこで今回はパーソナルトレーナーの林 健太さんに、これらの五大栄養素が不足するとどうなるのか。特にダイエット中の人にどんな影響を及ぼすのかを教えてもらった。
特に食べないダイエットを実践しようとしている人や、そういった間違ったダイエットをきっかけに食べることへの恐怖心を持ってしまった人は必読。
①タンパク質不足はエイジングを加速させる
筋肉はもちろん、内臓や髪、爪などあらゆる組織を構成する成分であるタンパク質。さらに小さい組織で言えば、よく聞く酵素やホルモンもタンパク質だ。
これだけ体の大部分を構成する成分が不足するとどうなるか、これは言わずとも想像がつくだろう。
見た目にも大きく関わる組織の構成成分が不足するということは、もちろん見た目も老けてしまう。ダイエットをして美しく若々しく健康的になろうと努力をしているのに、見た目や中身はどんどん老けていく。そんな事態を防ぐためにも、必要最低限のタンパク質は常日頃から摂る努力をしてほしい。
さらにタンパク質は、消化したりエネルギー化したりする際に熱量を発生させる食事誘発性熱産生が非常に高く、その量は摂取したエネルギーの約30%とも言われる。
「つまりタンパク質を十分に摂取することは、体を若々しく保ち、さらには体の代謝も上げてくれるため、最も太りにくい栄養素と言えます。人それぞれ必要量や許容量は違いますが、いつも以上にタンパク質を意識的に摂取することで、さらにダイエットを加速させることは間違いありません」
一日に体重1kg当たり1gは摂取するようにと言われるが、林さんの推奨する摂取量は除脂肪体重1kg当たり2gだそう。
②脳にも影響を及ぼす脂質不足
五大栄養素の中でダイエット中に最も控えがちな脂質。
脂質はたんぱく質や炭水化物と比べても1g当たり9kcalと倍以上のエネルギーを持つことから、優れたエネルギー源として体に貯蓄される。
他の栄養素と比べても太りやすいと言われる所以はここからなので、ダイエット中は特に避けがちな栄養素でもある。
しかし、脂質は細胞やホルモンの構成成分でもあり、脂溶性ビタミンであるAやEの吸収を助ける働きもする重要な栄養素。さらには脳の水分を除いた半分以上は脂質から構成されている。
脂質の中でも悪名高いコレステロールでさえも、脳には非常に重要な栄養素だ。
常日頃からダイエット食を心掛けても、外食などでは想像以上に脂質が多いので、脂肪酸バランスを考慮しなければ不足することは考えにくいが、万が一不足してしまうと肌荒れや脳の働きが鈍る可能性も。
肌のハリツヤを保ちながら美しく賢く痩せるためにも、最低限の脂質は欠かさないようにしておこう。
③賛否両論の糖質論争
糖質は体を最も効率よく動かすためのエネルギー。糖質制限ダイエットの影響で摂らなくても大丈夫、さらには摂らない方がいいという意見もある。
体には筋肉から放出される乳酸やアミノ酸、脂肪細胞から放出されるグリセロールを利用してエネルギー源を作り出すシステムである糖新生が備わっているため、糖質制限ダイエット中でも体を動かし続けることができる。
さらに糖質摂取を厳しく制限したケトジェニックダイエットは、脂肪酸の代謝を亢進させ、新たなエネルギー源であるケトン体を作り出す。
このケトン体が糖質の代わりのエネルギー源になってくれることで、糖尿病やがん細胞の成長抑制など、様々な健康効果も期待されている。
つまり糖質だけが不足した状態が続いても、他の栄養素がしっかり摂れていればエネルギーを作り出すことができるので、動けなくなったりすることはない。
「ただし、必要な栄養やバランスには個人差があります。そのため糖質を制限すると不調を起こしてしまう人を何人も見てきました。特に脂質をうまくエネルギーとして使えない人や、腎臓や肝臓に疾患を抱えている人は、不足させるべきではないでしょう」
④基礎となるビタミン
ビタミンはエネルギーを生み出さない微量栄養素。
これらはダイエットに直接的に関わるというよりも、三大栄養素を滞りなく循環させるための潤滑油のような存在とも言える。
ビタミンB群はエネルギー産生で非常に大きな役割を果たすほか、酵素の働きを助ける補酵素としても働くため、不足すると体内の代謝系の機能が衰えてしまう。
他にもACE(エース)と言われる3種類のビタミンは、抗酸化作用を持つため、不足すると老化を促進したり疲れやすくなったりもする。
つまり三大栄養のバランスを心掛けていても、ビタミンが不足すると体の中できちんと利用できず内臓にも大きな負担がかかる。
そのため、病気などの疾患がなくても異常な倦怠感や疲労感、めまいや頭痛など原因が特定しにくい不調を引き起こす。
特に激しい運動では活性酸素がたくさん生み出される為、ビタミンの消費量も多くなる。ダイエットでトレーニング量が増えた人は、ビタミンBACE(ベース=基礎)を積極的に摂るように心掛けて。
⑤ミネラルは陰の立役者
ビタミンと似て非なる存在であるミネラルは、体内で合成することができない。
カルシウムや鉄に代表されるミネラルだが、通常の食事で摂取すべき必須ミネラルは16種類とも言われている。
ビタミンが三大栄養素を利用するための基礎であるならば、ミネラルは潤滑剤。この二つは切っても切り離せない縁で、一緒に摂取することで吸収をよくしてくれるなど効果も期待できる。
中でもマグネシウムは体の中で起こるほぼ全ての代謝に関わる重要な栄養素。ビタミンとの関わりも深いので最重要と言っても過言ではない。
他にもビタミンそのものの構成成分であるコバルトや、血圧や浸透圧の調整をするカリウムなど、私たちの細胞レベルでの働きを助けてくれるので、ミネラル不足も原因が特定しにくい様々な不調を引き起こす小さな引き金をたくさん握っている。
「ミネラルはビタミン同様に種類も多く、それぞれに役割があります。チームスポーツで一人でも欠けてしまうとチームが弱くなるのと同じように、五大栄養素が欠けると体は弱くなり、逆に一人だけが活躍してもチームとしては強くなりません」
食べないダイエットでの戦力不足が将来の体を弱くしてしまい、様々な病気を引き起こす可能性も十分に考えられるので、食事管理は十分に気を付けて行ってほしい。
幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/