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あれだけ流行った高強度のワークアウトが最近やたら不評なのはナゼ?

ジョギングにバーピー、ピックルボールと選択肢は増える一方。メリットも多いのに誤解されがちな高強度のワークアウトに改めて焦点を当ててみた。

By Caitlin Carlson and
woman exercising wall ball
Hello Lovely//Getty Images

パンデミックでジムが閉まり、週5日のウエイトリフティングが続けられなくなったとき、理学療法士のクリスティ・バーカーは他の人と同じように自宅のリビングをジムにした。体と同じだけ頭もスッキリすることがしたかったので、エンドルフィンによる恍惚感が得られるうえに、狭いスペースでも可、楽しい、あまり器具を使わない、短時間でできるという4つの条件をクリアした高強度のワークアウトを試してみることにした。

あれから3年(早い!)経ったいまでも、専門家たちは高強度ワークアウトを習慣にするよう勧めている。“高強度のワークアウト”と聞いてバーピーを思い浮かべるのは間違っていないけれど、正直少し視野が狭い(気を悪くしないで)。

ここで言う高強度は“衝撃が強い”ということ。米ニューヨーク市立大学リーマン校の運動科学教授ブラッド・ショーンフェルド博士によると、本来“衝撃”は2つの力がぶつかることを意味する言葉。よって、2つの力がぶつかる動作を含む運動はなんでも衝撃が強い、つまり高強度ということになる。

例を挙げると、ジャンプスクワットや縄跳びだけでなく、ジョギングやエネルギッシュなダンスも高強度。そして通説とは裏腹に、高強度のワークアウトは体と脳に“すごく”よい。

残念ながら「高強度のワークアウトには、関節などに悪いというネガティブなイメージがあります」と話すバーカーによると、このイメージを払拭するには、私たち1人ひとりが高強度のワークアウトのメリットと取り入れ方を知るしかない。この記事の存在意義は、そこにある。今回はアメリカ版ウィメンズヘルスから詳しくみていこう。

高強度ワークアウトの評判が悪いワケ

muay thai boxer during training session practicing
Tom Werner//Getty Images

高強度のワークアウトが関節に悪く、痛みのもとになることを示すエビデンスは存在しない。でも、初心者には難しかったり、間違った方法でやると痛みが出たりするようなエクササイズは、次第と悪名が高くなる。

「力と力がぶつかり合うところには、どうしてもケガの危険性があるでしょうね」とショーンフェルド博士。高強度のワークアウトに人為的なミスは付きもの。トレーナーを付けずにジムを使うときやインストラクターの目が届かないほど大人数のクラスでは、とくにヒューマンエラーが起こりやすい。

しゃかりきになる前に正しいフォームを身に付けたり、適切なシューズを履いたりといった予防策を講じないと「ケガをするかもしれません」とバーカー。

ちなみに「理学療法を受けに来る人の大半は(高強度のワークアウトではなく)運動不足による痛みを抱えています」逆に、高強度のワークアウトをしても問題ないことが分かっているなら(“自分の限界を知る”のセクション参照)なにも恐れることはない。むしろ進んで取り入れて。

高強度ならではの大きな見返り

young woman workout in park
urbazon//Getty Images

英バーミンガムシティ大学の生物医科学講師クリス・ハートリー博士によると、高強度ワークアウトの最大のメリットは骨密度が高くなって骨折のリスクが減ること。とくにジャンプは、高齢の女性が骨折しやすい股関節を強くすることが分かっている。「骨は負荷に慣れていきます。そして骨は、負荷をかければかけるほど強くなります」。

英エクセター大学の研究結果も、イギリスでサッカーをする若者は水泳やサイクリングをする若者より骨密度が高いことを示している。飛び跳ねることによってバランスと関節の安定性が向上し、体組成も改善する可能性もある。

補足:プライオメトリクスは高強度ワークアウトの一種で、体を一瞬低くしてから跳び上がる動きを特徴とする。例えば、スクワットジャンプやホップ、ジャンプランジ。

ショーンフェルド博士の研究チームがレジスタンストレーニングとプライオメトリクスが下半身の筋成長に与える影響を調べたところ、どちらにも似たような効果があった。プライオメトリクスは、あらゆる年齢とジェンダーの筋肥大も促進することが分かっている。とはいえ、レジスタンストレーニングは心身に“とても”いいので、ウエイトリフティングからプライオメトリクスに100%切り替える必要はない。ただ、いつものルーティンに飛び跳ねるエクササイズを加えれば、筋肉が付きやすくなり、メンタルヘルスも向上する。

筋トレの内容を見直すついでに寿命を延ばしたいと思っている25歳の若者にとっても、体力をつけていつの日か孫と一緒にマラソンを走りたいと思っている45歳のパパにとっても、更年期に伴う骨の弱体化を防ぎたいと思っている50~60代の女性にとっても、高強度のワークアウトは欠かせない。

「ヒザが悪い」って具体的にどういうこと?

cropped shot of runner woman holding her knee while she having suffering from knee pain and she wearing knee braces for supports to be worn when you have pain in your knee
Boy_Anupong//Getty Images

ヒザの痛みは高強度のワークアウトとひとまとめにされている。でも、事実と作り話をゴチャ混ぜにしてはいけない。衝撃の強い運動では関節と骨にかかる負荷が高くなる。よって、もともとヒザが弱い人(ヒザが悪いと言う高齢者や、骨粗しょう症および変形性関節症の診断を受けた人は除く)が地面を激しく蹴って走れば、その部位に痛みが出てもおかしくない。

だからといって、高強度のワークアウトが絶対NGということにはならない。「レジスタンストレーニングやクロストレーニングで筋肉を付ける前に衝撃の強い運動を始めれば、ケガをする可能性が高くなります」と話すのは、米整形外科専門病院Hospital for Special Surgeryのスポーツ医サマンサ・ストゥーク医学博士。「若い人のなかには、筋肉のバランスが悪いだけなのに“ヒザが悪い”と思い込んでいる人もいます」。大腿四頭筋、臀筋、体幹が弱いせいでヒザに痛みが生じることも。サイクリングのような衝撃の低いエクササイズは、全身のコンディションを整えながら大腿四頭筋と臀筋の筋力を高めるうえで効果的。また、脚を前後に上げるエクササイズは大腿四頭筋、左右に上げるエクササイズは臀筋の強化に役立つ。「ヒザを守る体幹の強化にはピラティスとプランクがオススメです」とストゥーク医師。

そして、どんなエクササイズでもフォームに気を配ること。ジャンプして着地するときはヒザを軽く曲げるといい。鏡の前でスクワットジャンプをして、両ヒザが内側に湾曲する“外反ヒザ(通称X脚)”になっていないかをチェックしよう。外反ヒザだとヒザの内側に負荷がかかるため、関節炎になりやすい。「痛みがあるのは、体が何かを伝えようとしているときです」とストゥーク医師。「しっかり耳を傾けてくださいね」(その内容が予想外のこともある!)

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自分の限界を知る

health care technology concept vital sign sensing
metamorworks//Getty Images

ワークアウトの強度と頻度は完全に人それぞれ。でも、以下のケースでは念のため医師に相談してから高強度のワークアウトを始めてほしい。

  1. 心疾患や脳卒中といった心臓・血管系の問題がある。骨減少症や骨粗しょう症といった骨関係の診断を受けている。
  2. 関節(とくに股関節、ヒザ、足首)のケガをしている、あるいはしたことがある。
  3. 運動をするのが始めて、あるいは長期のブランク開け(座りがちな生活を送っていると骨がこわばる。その状態で急に高強度のワークアウト始めると、骨折のリスクが高くなる)。
  4. 自重スクワットや階段の上り下りで痛みを感じる。

いま頑張れば、あとでいいことがある

young woman boxing in urban setting
BROOK PIFER//Getty Images

人間の骨密度は早くも18歳前後でピークに達する。ハートリー博士によると、骨量はそこから徐々に減少し、更年期が近付くとホルモンバランスの変化によってペースが速まる。だからやっぱり、20代~40代の若いうちから衝撃の強いワークアウトで骨を強くしておいたほうがいい。もともと骨が元気なら、加齢に伴う骨折、骨減少症や骨粗しょう症のリスク上昇を防げる可能性がある。

閉経周辺期や更年期に突入したら、骨密度測定を受けて自分のリスクを把握しよう。仮に骨が弱くても、骨の劣化や骨量の減少に歯止めをかける目的で、高強度ワークアウトの許可が出ることはある。「一定の年齢を過ぎると、衝撃の強い運動で失われた骨量を取り戻すことはできなくなります。でも、衝撃の強い運動で骨のさらなる減少を防ぐことが可能です。閉経後はとくにですね」とバーカー。「衝撃の強い運動を取り入れるのは、早ければ早いほどいいですよ」。始めるのに遅すぎるということはない!

高強度ワークアウトにオススメのシューズ

high angle view of dumbbell and sport shoes
Emilija Manevska//Getty Images

ストゥーク医師いわく高強度のワークアウトには、ラクに歩けてラクに跳べるシューズが不可欠。ある程度のクッション性も欠かせない。
 
※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。


Text: Caitlin Carlson Translation: Ai Igamoto

Headshot of 伊賀本 藍
伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。 

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