みんなが急にクロロフィルウォーターを飲み始めたと思ったら、いつの間にか3-2-8メソッド(ウエイトトレーニング3日+ヨガ/ピラティス2日+1日8000歩)が流行り出した。そして、いまは“スナック&グロウ”の時代らしい。
TikTokユーザーのベッカ(@GlowupwithBecca)が生み出した“スナック&グロウ”メソッドはヘルシーな間食で体重を減りやすくするというダイエット方法で、動画の視聴回数は1700万回を超えている(2023年5月時点)。
人々を惹きつけているのは「おやつを楽しみながら目標に近付ける」という謳い文句。私たちは実際こういうコンテンツに弱く、一般ユーザーが1日の食事内容をシェアする#WhatIEatInADayというハッシュタグが付いたTikTokの動画は68万回以上再生されている。
でも、ご存じの通り、科学的な裏付けがなく個々のニーズを考慮していないネット上のアドバイスを信じるのは危険。にもかかわらず、食生活の改善を目的としてTikTokの流行に乗ってしまってもいいのだろうか? 仮に乗ってみるとしても、ベッカの“スナック&グロウ”メソッドは本当に有効と言えるのだろうか? イギリス版ウィメンズヘルスの調査を詳しくみていこう。
“スナック&グロウ”メソッドとは?
スナック&グロウメソッドの主役は、タンパク質、新鮮な野菜やフルーツ、おやつの3つで構成されるスナックプレート。ベッカが起こした変化の一部を成すこのプレートの内容は、TikTokで惜しみなく共有された。
それに人々が食い付いたのは当然のこと。リサーチ会社YouGovの調査でも、ヨーロッパの消費者の53%は空腹感や欲求を満たすために1日を通して何度も間食をしていることが判明し、現代における間食の重要性が証明された。
スナック&グロウメソッドを取り入れると「間食の内容に気を配るようになり、自分が食べるものをよく考えて選ぶようになります」とベッカ。「このメソッドは重要な栄養素をカバーしているだけでなく、健康的な習慣を築くきっかけにもなりますよ」
ベッカいわくダイエット成功の秘訣は、持続可能で健康的な習慣を促すスナック&グロウメソッドを学び、取り入れることによるマインドセットシフト(考え方の転換)にある。「このメソッドでは、特定の食品を排除したり制限したりする代わりに、自分の気分が上がる要素を取り入れます。現在普及しているダイエットプランや食事法を見ても、その多くが好きな食べものを楽しみながら健康上の目標に近付くという、ハッピーでヘルシーなライフスタイルの構築を促しています」
このメソッドの有効性を示す証拠としてベッカのもとには、スナック&グロウを取り入れたことで、やっと余分な体重を無理なく減らせるようになったというメッセージが頻繁に送られてくる。ここからは、その具体的な方法を見ていこう。
スナック&グロウプレートの作り方
ベッカのスナック&グロウプレートは、基本的な3つの要素で構成される。1つ目はタンパク質、2つ目は新鮮な野菜やフルーツ、そして3つ目は一般的に“おやつ”と呼ばれるもの(チョコレート、チップス、クラッカー、スイーツなど)。
ベッカによると、このメソッドの美点はルールがないこと。よって、それぞれの量も個人のニーズによって決められる。でも、ダイエット中の人は1プレートあたりのカロリーを300kcal以内に抑えたほうがいいらしい。
「タンパク質が5gの日もあれば、20gの日もあっていいんです。気分、ワークアウトの内容、活力のレベルは日によって違いますから。そうやってオール・オア・ナッシング(妥協を許さないゼロか100か)のアプローチから卒業すれば、スナック&グロウプレートを作るのも楽になります」
1.まずはタンパク質
スナック&グロウプレートの1つ目の構成要素はタンパク質。タンパク質は「満腹感を持続させ、筋肉の回復を促します」とベッカ。
米国立医学図書館が発表した論文も、タンパク質は筋肉の増強とケガの予防に役立つので、それを間食にするのはダイエットと代謝系の健康の両方にいいとして、ベッカの主張を裏付けている。
スナック&グロウプレートでタンパク質の摂取量を増やしてからは「1年以上リバウンドしていない」と話すベッカの定番のタンパク源は、クワルク、フムス、プロテインバー、チキンスライス、そしてチーズ。
2.新鮮なものを足す
新鮮な野菜やフルーツもベッカのスナックプレートの大事な構成要素の1つ。これまでの研究により、新鮮な農作物は食物繊維の摂取量を増やすうえで重要であることが分かっている。食物繊維は消化を促し、満腹感を持続させる栄養素。
以前はフルーツだけをスナックにしていたというベッカは、新鮮な野菜やフルーツ、タンパク質、おやつを組み合わせることでバランスが取れるようになったそう。
ベッカいわく数ある野菜とフルーツの中でもとくにカラフルなものを使うといいそう。「そうすればプレートが華やかになりますし、腸の健康にもいいですからね」
3.おやつを添える
スナック&グロウの真の魅力は、リバウンド対策の一環として使われるおやつの存在。米オハイオ大学の論文によると、食事制限の多い“オール・オア・ナッシング”のダイエットでは95%の人が2年以内にリバウンドしてしまう。完全に排除しても意味がないなら、最初から入れておいたほうがいいというわけ。
「私も以前は“オール・オア・ナッシング”のアプローチを取っていて、おやつを一切食べないか、食べたとしてもフルーツしか食べないかのどちらかでしたが、それで気分がよくなるわけでもリバウンドが防げるわけでもありませんでした」とベッカ。「どちらも一時的な“応急処置”に過ぎず、長く続けられるハッピーでヘルシーなライフスタイルではなかったんです」
砂糖や加工食品も、控えめに摂取すればいいと思っている。「ほとんどの人は砂糖が使われている食品や加工された食品が好きですから、それを完全に排除しろと言われても、そう簡単に受け入れられません。まさにこれが理由でうまくいかないダイエット方法は多いですが、スナック&グロウメソッドは現実的かつ持続可能な設計になっているので長期的に続けられます」
ただし、スナックプレートの総カロリーが300kcalを超えないようにしないと、ダイエットのゴールが遠のいてしまうので要注意。
結論
スナック&グロウメソッドの有効性に関しては栄養士の意見が割れており、最終的な結論も出ていない。体重管理栄養士のケイト・ヒルトンによると、このメソッドは、おやつをOKとしているぶん“好きなものを奪われている感”が少ないので、リバウンドを防ぎながら無理なく体重を減らしたい人に最適。
そのおやつにタンパク質と(新鮮な野菜とフルーツに含まれる)食物繊維を加えれば、消化が遅れて満腹感が長持ちするだけでなく、プレート全体の栄養価も高くなる。
その一方で私たちは、イギリス版ウィメンズヘルスのパネリストでスポーツ栄養士のレニー・ゼルウィガーにも意見を聞いた。
「フルーツに脂質かタンパク質を組み合わせる価値はあります。でも、私が個人的に甘いお菓子とフルーツを組み合わせることはないでしょう。血糖値に悪影響が出ますから」
つまり、ダイエットに関して言えば、万人に合うアプローチはないということ。「私たちの体は1つひとつ違うので、このアプローチがベッカに合っているからといって他の人にも合うという保証はありません」
「これが人々を助けたい、支えたいという想いから作られたメソッドであることは確かでしょうが、それを誰が使うのかのも知らずに栄養に関するアドバイスをするのは危険です。また、このメソッドではカロリーを摂取したぶん消費することに重点が置かれていますが、成長期のフォロワーのニーズを考慮していません」
「私が懸念しているのは、すでに必要な栄養を取り損ねている人や間食の心配をする必要のない人がこのアドバイスに従って、自分を強迫したり制限したりするような行動を取ることです」
スナック&グロウメソッドに興味があるなら、まずは専門家に相談し、自分自身の栄養ニーズを理解しよう。また、過度の食事制限をするなどの摂食障害と闘っている人は絶対手を出さないで。
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Megan Hotson Translation: Ai Igamoto
ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。