ダイエットを始めたけれども途中でやめてしまう、挫折の経験があるという人も多いのではないだろうか。頑張ってモチベーションを上げてスタートしたものの、なかなか続かないという人は、ダイエットに嫌悪感さえ覚えているかもしれない。

運動や食事制限etc. ダイエットと聞くだけで自分には無理だと苦手意識を持っている人は、パーソナルトレーナーの林健太さんが教えてくれたモチベーションが続かなくなってしまう原因と、モチーベション維持のコツを理解することから始めてみては?

ダイエットでモチベーションが続かない原因を診断

ダイエットのモチベーションが続かない原因は大きく分けて5つ。あなたはどれが当てはまる?

□なぜ痩せたいか、どうなりたいか目標が明確でない

「モチベーションには二つの意味があります。一つ目は“やる気、意欲”といった意味で、これは時間とともに変化しやすいものです。そしてもう一つは“動機”です。これは始める前にしっかりと決めておくことで変化しにくく、一種のモチベーションの低下防止にも繋がります」

まずは始める意味や理由、そしてゴールを決めることが大切。そこから無理せずに現実的な期間と目標を定めてみよう。


□一人でやろうとしている

家族や恋人、友人へ自分がどのようになりたいかを宣言しておくことで自然と協力を得ることにも繋がるので、周りを巻き込むことは良い方法。

「ダイエットを実践するのはご自身だけで構いませんが、それを公表せずに自分だけで進めていても良い情報や人脈は入ってきません。また、実践して楽しかったダイエット方法などを周囲の人にシェアすることで、周りの人にも感謝され新たなモチベーションにも繋がります」

自分のモチベーションを上げることばかりでなく、成功体験やステップを周囲の人に共有し、ポジティブに巻き込んでいくことが結果的にダイエットを成功に導いてくれるのではないだろうか。


□自分に自信がない/自分が成功できるイメージがない

周囲をポジティブに巻き込むダイエットをするには、まずは自分が成功するイメージを持ちポジティブでいること。「必ずダイエットが成功すると自信をもってほしい」と語る林さん。

「多くのダイエットはネガティブ感情からのスタートだと思いますが、それはスタート地点に置いていきましょう。気持ちと肉体は連動していますので、ネガティブを抱えるだけモチベーションが下がりダイエットも辛くなります。始めたらゴールのポジティブな成功を見据えて行動するだけでモチベーションが下がりにくくなり、成功率も大幅にアップします」

多少うまくいかなかったことや予想外の会食などがあっても、長い目で成功できる自分を見ていれば、モチベーションも下がることなく軌道修正できる。


□完璧にやろうとする

完璧を求めると、ちょっとしたミスや予想外の出来事が大きなストレスとなり、結果的にモチベーションの低下に繋がる可能性が。そういったストレスから心身を守るためにも、林さんが大切にしてほしいと語るのは完璧ではなくメリハリ。

「仕事上避けられない人との付き合いや、家族団らんの食事などイレギュラーは当然起こります。その場も楽しめず、終わってからも楽しめなかった自分に罪悪感を覚えてしまうような場合は、モチベーションが下がるだけでなく、周りにも悪影響になります。まずその場は適度に楽しむことを優先するほうが、先々のダイエットには良い影響を与えます」

完璧ではなくメリハリをつけるというのは、目標の体と生活スタイルに共通して言える。イレギュラーがいつ起こっても気持ちよく楽しみ、それをまたダイエットのモチベーションにできるように普段から準備しておこう。

□正しい方法かどうか検証せず、
とりあえず/やみくもにはじめがち

まずやってみることはとても大切だが、数年~数十年単位で作り上げてきた今の体や環境を変えることは一朝一夕では難しい。

「糖質制限が短期間で簡単に痩せられるというイメージがついた半面、真似をして失敗する人やリバウンドを経験する人も少なくありません。失敗には必ず理由があるので、次に生かせるようにしておくことも大切です。そうすることで検証に変わり、どんどん成功に近づいていきます」

最短ルートで結果を出したい人はまずトレーナーから適切なアドバイスを受け、それに沿って行うほうが効率は良い。


モチベーションをキープして
ダイエットを成功に導くコツ

「ダイエットも二つのパートに分けて考えることが重要です。一つ目は体重を落とす減量期、もう一つは理想の体をキープする維持期です。両期間で方法も違えばモチベーションの維持方法や上げ方も変わってきます。挫折経験がある人は、この二つを混同させたり、行き来したりしていたのではないでしょうか」

減量期だけを長く続けようとしていた、もしくは続けていた人は、モチベーションが低下したり楽しみがなくなっていたのではないだろうか。

また、減量期は乗り越えたものの、維持期がうまく続かずリバウンドしてしまった人もいるかもしれない。まずはこの二つの期間があることを理解し、それぞれ3つのステップで捉えてみよう。

減量期

① 正しい目標と期間を定める

ダイエットの一番の目的といえば減量。この体重を落とす期間は2~3か月を目安にするといい。体重を落とすということは、今まで通りの食生活や活動量ではいけないことは明白。しかしそれを長期間続けることは精神的にも肉体的にも難しい。

そのためにもまずは2~3か月で実現可能な体重を目標に設定してみよう。林さんがすすめる、無理なく実現可能な目安は2kg/月。

「体脂肪1kgあたり7,200kcalと計算すると、エネルギー収支を1日あたり約500kcalマイナスにする必要があります。運動での消費量アップと、食事の工夫や間食を我慢するだけで十分に可能な範囲です」

減量の目的はなんといっても体重の減少ではなく体脂肪の減少。目標の体重に早く到達することよりも、決めた期間で計算通りに減量することが大切。目標と期間を決めた後は、目の前の数字に左右されないという意思も固めておこう。

② 急にやりすぎない

目標と期間を決めても人は焦ったり欲張ったりする生き物。マイナス500kcalと聞いただけで、急に食事量を過度に減らしたり、高強度な運動を無理して行ったりしてしまう人も少なくない。

「糖質制限を行ったことがある人は分かる通り、食生活の大きな変化は体重にも大きく反映されます。結果が簡単に目に見えて表れるので、数字の変化が急激な短期集中ダイエットとも言えるでしょう」

急なイベントや友人の結婚式などで、数日前から急に体重を減らし始めようとする人もいるが、その一日のために一生を棒に振る可能性もあるので注意してほしいと林さん。

「急な食事量や運動量の変化は大きなストレスです。怪我や摂食障害にも繋がりかねませんのでスタートダッシュは不要です。まずはお菓子などの間食や食後のデザートなど、不要なのに食べてしまっていたものを省いていきましょう」

減量期といえども、数日で体に大きな変化をもたらすことは期待してはいけない。

一日食事を摂らなければもちろんその分の体重を大幅に減らすことは可能だが、それは次の維持期に移る前にリバウンドという壁に当たってしまう。

「大切なのは食事の量ではなく質です。胃の満腹感ではなく体の満足感を優先するだけで、本来必要な食事量に抑えることもできます。

そういった食事にシフトすることができれば、その後の維持期もモチベーションに左右されることなく簡単に続けることができます」

モチベーションのアップダウンは心へのストレスも大きい。減量期と言えども目先の体重変化でだけではなく、維持期も見越した食事や運動を整えていこう。

③ 運動習慣をつける

食事制限と合わせて必ず行ってほしい運動。

運動することで様々なホルモンが分泌され、前向きになったり明るくなったり体の内面から変えてくれる。減量期は大きく環境を変えるチャンスでもあるので、新しい運動習慣を手に入れていこう。

「ジムに通うことでモチベーションが上がる場合は別ですが、特別にお金をかける必要はありません。私生活の見直しと家でのトレーニングで十分に成果を出すことができますので、一回に運動できる時間は短くても毎日積み重ねることを心がけましょう」

仕事で疲れて運動する気力が残っていないという人も、まずは10分のスクワットやストレッチからでも始めてみよう。

最初の数日間は大変かもしれないが、継続し習慣化することで基礎代謝や疲れの閾値を上げることにも繋がり、結果的に疲労感の軽減にも繋がる。

④ジムに入会してしまう

徐々に習慣付けていくことも大切だが、それもなかなか難しいという人は思い切ってジムに入会するのも一つの手だと林さん。

「一気に環境を変えるほうがモチベーションもアップして、心機一転頑張れるという人もいます。最近は安価なジムも増えているので、一度チャレンジしてみてもいいのではないでしょうか」

24時間営業のジムが増えており、その中でもジムの特色はそれぞれ。まずは通いやすい場所にあるジムをピックアップしたら見学に行って、これからダイエットを始める自分を鼓舞してみよう。

⑤タイマーで運動時間をセッティング

運動をやらない人の大きな理由は「時間がない」。忙しい日々の中で運動の優先順位を上げることはなかなか難しいものの、わずかな時間でもダイエットは可能だと林さん。

「時間がなければ10分でOKです。長時間の運動を長期間続けることはモチベーション維持も大変なので、自分が集中できる時間から逆算する方法もありでしょう」

実際に林さんが行う運動もタイマーをセットした短時間集中が多いそう。

もちろん強度の高い運動にはなるものの、短時間集中の方が心肺機能の向上など、ダイエットにも良い影響を与えてくれるものもある。


運動は一つじゃない

「毎日の習慣化はとても大切ですが、その全てが同じ運動である必要はありません。今日は筋トレ、明日はランニング。その翌日は疲労が溜まったからストレッチを行うなど、運動に変化を付けることもモチベーション維持の方法です」

やらなきゃいけない運動ではなく、どんな運動だと無理せずできるのか。続けることが大切なので、林さん自身も運動にはよく変化をつけるそう。

「トレーナーと聞くと毎日ジムでトレーニングをしているイメージがありますが、その日のモチベーションが上がらないときはストレッチのみしか行わない、ランニングしか行わない日に切り替えることもあります」

可動域も上がり、疲労感もなくなるストレッチを、次のトレーニングが楽しみになるモチベーションアップ法と考えてみよう。


ダイエットのモチベーションキープに
便利ツールも利用しよう

スマホで利用できるアプリ「myfitnesspal」は、自身の目標とする摂取カロリーやPFCバランスを入力することで上限が設定できるので、あとは日々の食事を入力していきその理想値に近づけていく。加工品であればバーコードを読み取るだけでカロリーやPFCバランスが表示されるので非常に便利。

さらには食事の記録だけでなく体重変化のグラフ、写真による変化や歩行による消費カロリーなども表示できる。友達機能もあるので、一緒にダイエットを頑張る人と繋がり、お互いの進捗や成果を励みにモチベーションを上げていくこともできる。

最も簡単に運動量が確認できるものとして、スマートフォンのヘルスケア機能に日々の歩数が自動的に記録されている。

一日の平均歩数はもちろん、週や月での平均歩数も簡単に確認できるので、継続的なチェックとモチベーションキープが可能。

「歩くスピードにもよりますが、1000歩=約10分と換算できるので、日常的にどれくらいの有酸素運動(歩行運動)をしたか振りかえってみてください。

ジムで運動を頑張ることも大切ですが、日常の活動量を減らさないほうが簡単に長く続けることができます。」

維持期

① メリハリをつける

目標の体重になればその後はそれを維持していくフェーズ。

今までより食事量も増え、会食や飲み会なども気兼ねなく参加できる。しかし、ここからはメリハリが大切になってくる。

今まで頑張った減量期間を無駄にしないためにも、食事も運動もメリハリを大切にしよう。ここからはモチベーションに左右されず、習慣として落とし込んでいくことが非常に大切になると林さん。

「減量期の生活スタイルに、今までの生活スタイルをミックスするイメージです。外食は思いっきり楽しむけれどそれ以外は健康的な食事スタイルを確立する。運動もできるタイミングで集中して行うことで、効率と質を上げ継続しやすい方法を見つけることです」

モチベーションに左右されないメリハリのついた生活からが本当のダイエット。

② 増減幅を知っておく

「尿や便を含めて体は毎日2L以上の水分を排泄しています。仮に2~3か月で2kgの減量に成功したとしても、ある日突然戻ることもあり得るということです。しかしこれは時間をかけて落とした体脂肪が戻ったわけではなく、体内の水分量の変化や胃の残留物によるものなので、日々の体重変化を追いかけすぎてこうした事実を見失わないようにしましょう」

体重が増えるのが嫌だからといって慢性的な水分不足に陥ってしまうと、肌荒れや代謝異常、内臓の機能低下による老廃物の排泄異常など、良いことは何一つ起こらない。

この事実をしっかりと認識しているだけでも体重計の数字にモチベーションが大きく左右されることはない。変動が大きいからといって焦ってまた減量期に戻り、一生終わらない食事管理やストレスを抱えたダイエットに突入することだけは避けよう。

③ 続けられるか

減量期と違い、維持期は長期間になる。今まで我慢していたお菓子や揚げ物を一生我慢することは難しいので、体調や体重を確認しながらどの程度の頻度で食べるかを把握していくことが大切。

「減量期にしっかりと食事バランスの感覚や運動習慣がついていれば、毎日のエネルギー収支に余剰ができてきます。その余剰を会食やデート、チートデーとして使うと無理なく、モチベーションも大きく左右されることなく理想の体を維持できるのではないでしょうか」

好きなものを我慢する食事制限は不要だが、好きなものばかり食べないようにする食事管理は必要。ストレスを溜め込まない食事や運動のゴールデンバランスを見つけ出し、減量期に戻らない生活を身につけよう。

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林健太
NESTA公認トレーナー SIXPADオフィシャルトレーナー

 幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
 卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
 選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/