理想の体を追い求めていくために欠かせない筋トレ。そして、その対極ともいえる運動がストレッチ。

ダイエットやボディメイクにおいて、どちらも大切なことは言うまでもないが、筋トレの比重が大きくなっている人の方が多い、と語るのはパーソナルトレーナーの林健太さん。

「一般的に筋トレは、筋肉を縮める運動で筋力を鍛え、ストレッチは筋肉を伸ばす運動で柔軟性を向上させるという位置付けです。ジムで行う運動となるとやはり前者のイメージが強く、筋トレしか行っていない人も多いのではないでしょうか」

筋肉を鍛えるという点ではどちらも筋トレといって間違いはない。それぞれの不足点を補う役割を果たしており、強くしなやかな筋肉を作り出すには双方のバランスが重要

筋トレに効率的なフォームや重量があるように、ストレッチにも効率化を図る方法がある。筋トレ前後のウォーミングアップやクールダウンだけに行わず、ポイントを抑えて日頃の習慣にすることで、より早く理想の体が手に入ることは間違いない。ストレッチの効果を上げる7つのポイントをご紹介。

【ストレッチのコツ①】体を温めてから行う

close up of beautiful mid adult woman relaxing in bathtub with eyes closed
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「準備運動を行う一つの理由が、筋温や血流を上げてからトレーニングを行うことで、より可動域を大きくするためです。怪我を防ぐことはもちろん、パフォーマンスの向上にもつながります」

もちろんストレッチ自体にも体温や筋温を上げる効果があるので、事前にわざわざ運動の時間を割く必要はない。しかし、極端に体が冷えている時などは、急に、無理に行わず小さな動きから行うといったステップが必要だと考えておこう。

運動後や入浴後など筋温の高い状態は、外部からの引き伸ばしに対する抵抗性が減少するので、ストレッチを行うにはベストタイミング。

【ストレッチのコツ②】伸びている筋肉は意識しない

young woman practicing yoga, touching toes in apartment
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ストレッチを行う際によく耳にするのが「伸びている筋肉を意識すること。しかし、筋肉が意識的にできることは縮むことと緩むことであり、意識的に伸ばすことはできない。

つまり、ストレッチで受動的に伸ばされる必要があるため、別の筋肉を意識するべきだと林さん。

「腕を曲げて力こぶに思いっきり力を入れている時、反対の二の腕の筋肉は弛緩している状態になります。筋肉は単独で収縮と弛緩をしているのではなく、必ず他の筋肉と協調しているので、ストレッチの際は伸ばしたい筋肉ではなく、伸ばすために力を入れるべき筋肉に意識を向けてください」

【ストレッチのコツ③】時間をかけて行う

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急なストレッチなどを行うと、筋肉は速さや長さを検知して損傷を防ぐために、これ以上伸びないようにと縮む信号を発信する(伸張反射)。

しかし、筋肉と骨の移行部でもある腱は、持続的に引っ張られると筋肉の収縮を抑制して緩めることで損傷を防ごうとする。

「何度も勢いをつけて引っ張るようなストレッチでは前者のメカニズムが働きます。後者のメカニズムが優位に働くにはゆっくりと時間をかけることが大切です。

可動域の獲得や柔軟性改善など、ストレッチ本来の効果をしっかりと得るためには、一部位につき30〜60秒程度行うと良いでしょう」

【ストレッチのコツ④】運動前後で方法を変える

people running on a treadmill in health club
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前述の通り、時間をかけて行うストレッチで筋肉は緩む信号が強くなる。すなわち筋肉の出力低下につながるので、運動前に行うストレッチして最適とは言えない。

反対に運動前は、反動をつけるような動的ストレッチを短時間で行うと、伸張反射を高めてパフォーマンス向上につなげることができる。

「運動前後のストレッチは方法も然り、タイミングも大切になってきます。時間をかけてストレッチを行った後に筋トレを行う場合は、少し時間を空けてから行うか、動的ストレッチも挟むほうがよりパフォーマンスの向上が見込めます」

【ストレッチのコツ➄】痛すぎはNG

senior woman has ankle injury
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ストレッチを行う時に強い痛みを感じることで引き起こされるのも伸張反射。つまり、無理に伸ばそうとすると余計に力んでしまい逆効果になる。

「痛い方が伸びている感覚にもなりますが、それは一時的なものです。体は損傷や断裂をしないように危険信号を出し続けるので、なかなか緩める信号に切り替わりません。無理に痛みを我慢するのではなく、心地よさを感じながらも十分な強度を維持することが重要です」

体は硬ければ硬いほど血流も悪く、発痛物質や老廃物などの流れも悪くなる。また、可動域のギャップも大きくなるので痛みを感じやすいのは当然のこと。

痛み⇔緊張の負のスパイラルを断ち切るには、ストレッチのやり始めは焦らず、体が動きやすくなるまでにはある程度時間がかかることを理解しておこう。

【ストレッチのコツ➅】継続する

woman speed walking in fore of city skyline
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運動で最も大切なことは「継続」。

筋肉が一朝一夕で望み通りに手に入らないように、柔軟性もすぐには手に入らない。

「筋トレもストレッチも運動に違いはありません。運動で得られた効果はやめてしまうと徐々に失われるという可逆性の原理があり、続けている間は効果が維持、向上できても、やめてしまうと期待通りの効果を維持することは難しくなります

効果が出るまでに個人差はあるものの、筋トレと比べても手軽にできるため、座りっぱなしで短縮しやすいハムストリングだけでも毎日行えば、腰痛や姿勢不良からの解放につながる。

【ストレッチのコツ⑦】リラックスして行う

young woman spending a relaxing day in her beautiful home
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交感神経と副交感神経(自立神経)は、互いにバランスをとりながら体のあらゆる機能を調節している。前者は特に日中に優位になりやすく、活発になると血圧上昇や筋緊張を促す。

反対に後者は筋肉を弛緩させてくれるので、ストレッチを行う時には自律神経のバランスも重要

ストレッチの効果だけを最大限に得るには、副交感神経優位で行うべきなので、風呂上がりの夜時間がおすすめです。運動後に行えば、心拍数を落ち着かせて安らぎの脳波も増加させてくれるので、ストレッチがさらなるリラックス効果を引き起こしてくれます」



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林健太
NESTA公認トレーナー SIXPADオフィシャルトレーナー

 幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
 卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
 選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/