つらくて長い1日を終えたあと、大きなグラスで赤ワインをグイッと飲めたら幸せだよね? でも、そのあとに訪れる頭痛は厄介。そう、赤ワインのせいで頭が痛くなることは本当にある。一体なぜ? 通説に反して、その原因は“タンニン”にあるわけじゃないみたい。

2023年11月20日、科学専門誌『Scientific Reports』に掲載された米カリフォルニア大学デービス校の論文によると、赤ワインを飲んだあとの頭痛には、赤ワインに含まれる特定のフラボノイド(天然の化合物を形成する植物性栄養素)が関係している。

そのフラボノイドとは、野菜やフルーツに含まれる(もちろんワインの原料となるブドウにも含まれる)抗酸化物質のケルセチン。医学情報サイト『Medical News Today』によると、ケルセチンの分子はアルコールと同時に摂取されると体内で形を変えて、アルコールが代謝される方法を変えてしまう。その過程で毒素が産生されて、頭痛が生じるという仕組み。

もっと言うと、アルコールとケルセチンを同時に代謝する人の体内には、大量のアセトアルデヒドが蓄積する可能性がある。米カリフォルニア大学デービス校の公式ホームページに掲載された記事の中で、同校ブドウ栽培・醸造学部のアプラミタ・デヴィ博士研究員が説明したところによると、アセトアルデヒドは顔面紅潮、吐き気や頭痛を引き起こすことで「よく知られる毒素であり、刺激物であり、炎症性物質である」。

また、同校ブドウ栽培・醸造学部の名誉教授でワイン化学者のアンドリュー・ウォーターハウス博士は同記事の中で、ケルセチンが血流に乗るとグルクロニドという別の物質に変換されて、アルコールの代謝を阻害すると説明している。

同校の論文によると、赤ワインは他の種類のアルコール飲料よりもケルセチンの濃度が高い。また、ケルセチンの含有量は、ワインの製造方法だけでなくブドウが浴びた日光の量によっても変わるので、ワインの種類が違えばケルセチンの含有量も違うそう。

今回の研究結果を裏付けるため、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校は、ケルセチンの含有量が非常に多いワインと非常に少ないワインを比較するヒト対象の臨床試験を行う予定。

しかし、この研究結果を考慮しても、赤ワインを飲んだあとの頭痛には謎が多い。例えば、赤ワインを飲んだあとに頭が痛くなりやすい人と、そうでない人がいる理由も分かっていない。でも、同校の研究チームの仮説が正しいと証明されれば、それをベースに「こうした大事な問題に取り組めるようになるでしょう」とウォーターハウス博士は述べている。
 
※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Njera Perkins Translation: Ai Igamoto

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伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。