ワインが心臓に良いかどうかは議論が分かれる。米国心臓協会は、最新の食事指針でアルコールを控えるのは心臓によいとしているどころか、アルコールは微量でも心臓に悪いという報告書まで発表している。一方、心臓によいことで知られる地中海式ダイエットでは、ときどき赤ワインを飲むことが勧められる。そして、米国心臓協会が発表した最新の調査結果は、食事の際にワインを飲むと2型糖尿病のリスクが下がることを示している。結局のところ、ワインは体によいのだろうか。

2022年のヘルスカンファレンス(正式名称はEpidemiology, Prevention, Lifestyle & Cardiometabolic Health Conference)で米国心臓協会が発表した研究結果によると、同協会は適度な飲酒が2型糖尿病の新規発症に関係するかどうかを調査するため、UKバイオバンクが提供した約312,400名分のデータを分析した。調査の対象となったのは2006~2010年の間にアルコールを飲用したと自己申告した人々で、調査チームは、この人々を11年近く追跡していた。なお、ここでいう適度な飲酒とはワインや他のアルコール飲料を女性で1日1杯、男性で1日2杯まで。

この調査の開始時に糖尿病、心血管系疾患、がんを罹患している対象者はいなかった。ただし、対象者の平均年齢が56歳で半数強が女性だったことはまだしも、95%が白色人種の成人であったことは、この調査の最大の問題点。いまの時点で、今回の調査結果が他の人種にも当てはまるかは分からない。

調査期間中に2型糖尿病を発症したのは約8,600名だった。調査チームは、食事の際にアルコールを摂取すると、それ以外のタイミングでアルコールを摂取したときよりも、2型糖尿病の発症リスクが14%低くなると結論付けた。

アルコールは健康によい?

この調査結果は毎晩1杯やることを正当化しているわけじゃないけれど、ビールや蒸留酒よりはワインを選んだほうがよさそう。ただし、ワインの効果は食事の際に飲んだ人だけに見られた。逆に、ビールや蒸留酒の摂取量が増えると、2型糖尿病のリスクも高くなることが分かった。

食事中に飲むワインが2型糖尿病に与える具体的な影響を特定するには、さらなる研究が必要になる。また、米国心臓協会の前会長ロバート・H・エッケル医学博士が言うように、今回の調査ではワインを飲んだ時間帯とワインとともに摂取した食事の栄養価が考慮に入れられていない。

「アルコールは両刃の剣。摂取の仕方次第で有害にも有益にもなります」と語るのは、米テュレーン大学肥満研究センターの生物統計学者で今回の論文を執筆したハオ・マ医学博士。「過去の研究は、飲酒量に焦点を当てていたため、結果に一貫性がありませんでした。具体的な飲み方、例えばアルコールを摂取する時間帯に焦点を当てた研究は、極めて少ないのが現状です」

適度な飲酒が糖代謝などの面でプラスに働くことは、これまでの研究で明らかになっている。でも、適度な飲酒で2型糖尿病のリスクが下がるかどうかを調べた研究は、これが初めて。「私たちは、アルコールを摂取するのが食事と一緒かそうでないかによって、2型糖尿病のリスクが変わるかどうかを調べました」

飲酒は長きにわたり、高血圧、肥満、脳卒中、乳がん、肝疾患、うつ病などのリスクを高めるとされてきた。

「初発2型糖尿病のリスクが下がるのは、食事と一緒にワインを飲むからではなく、ワインに含まれている抗酸化物質のおかげかもしれません」とエッケル博士。「ワインの種類(赤か白か)を特定し、このような効果が現れるメカニズムを検証する必要はありますが、今回の調査結果を見る限り、アルコールは食事と一緒に摂取したほうが良さそうですね」

でも、ワインだけで2型糖尿病を防げると思ってはダメ。エッケル博士によると、2型糖尿病の予防には栄養管理、運動、睡眠、禁煙、体重管理も非常に重要。


最後に

米国心臓協会によると、いまの時点で飲酒の習慣がない人はない状態をキープするべき。逆に、飲酒の習慣がある人は控えめに飲むことを意識して、飲むならワインにするべきかをヘルスケアの専門家と話し合ったほうがいい。

「今回の調査結果から言えるのは、飲酒の影響を受ける基礎疾患がない人なら、医師に相談の上、食事と一緒に少量のワインを飲むことで2型糖尿病が防げるかもしれないということです」

エッケル博士によると、2型糖尿病を防ぐ上で何よりも大切なのは健康的な体重の維持。米国疾病予防管理センターは、18歳以上の成人に週150分の運動を勧めている。

※この記事は、アメリカ版『Prevention』から翻訳されました。

Text: Arielle Weg Translation: Ai Igamoto