熱中症が気になり外出を控えるほど暑かった夏がようやく過ぎて、一安心。ところが、1年でもっとも過ごしやすい季節の秋だったはずが、11月初旬に東京都心では2日連続の夏日に。さらに、その一週後には12月並みの冷え込みに……。11月に半袖を着ることへの違和感に、体調だけでなく、気持ちまで揺れてしまう人も多かったのでは?

さて、この暑さ。2023年7月には、アントニオ・グテーレス国連事務総長が「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と表現したのが印象的。

地球が沸騰し始めている? これまでと違ってきている季節を経験するにつれ、自分自身の体調や気持ち、そしてワードローブでさえ、これまで通りにはいかないことを感じていることが、地球沸騰と結びついているのだろうか?

「これまでにない暑さ」を体感した2023年だからこそ、年末の今、地球温暖化、さらには地球沸騰化との関連について、最新レポートやそれに基づいた衝撃的な予測とともに思いを巡らせてみよう。

地球温暖化・沸騰化は本当に起きている?

「最も暑い夏」を経験した2023年、このまま地球が沸騰したら起きてしまうこと
Westend61//Getty Images

EUの気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」の発表によると、2023年1月から10月までの平均気温は1940年からの観測史上、過去最高となり、2023年が記録上、最も暑い年となることが確実。また、WMO(世界気象機関)は2024年はさらに暑くなる可能性があるとしている。

では、その原因は?

「IPCC」という言葉を耳にしている人も多いかもしれない。これは、世界中の科学者が参加し、5~6年ごとにその間の気候変動に関する研究から得られた知見をまとめた「気候変動に関する政府間パネル」評価報告書のこと。もっとも新しい第6次評価報告書では、「人間の影響が大気、海洋、及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」としている。

2023年から2024年にかけての気温の高さにはエルニーニョ現象といった自然現象が重なっているものの、人間のさまざまな活動によって温室効果ガスが排出され続けていることが地球温暖化に結びついていることは間違いない。

地球温暖化と異常気象の関連が科学的に明らかに

世界を見渡せば、2023年はハワイ諸島や北アメリカ、地中海沿岸での山火事、リビア東部での集中豪雨など深刻な自然災害が相次いだ。一方、国内でも、豪雨災害が多かったのは記憶に新しい。

これまで、こうした異常気象や災害と気候変動は結び付けて語られなかったけれど、近年、「イベント・アトリビューション」という科学的な手法によって、気候変動が個々の現象にどう影響を与えているのかが明らかにされてきた。

文部科学省内の研究チームが気象庁の研究所の協力によって実施したイベント・アトリビューションによると、7月から8月にかけての記録的な猛暑は地球温暖化の影響がなかったと仮定した状況下では起こりえなかったということ。

また6月から7月上旬に西日本で発生した線状降水帯の総数は温暖化によって1.5倍に増加したと見積もられた。さらに、7月9日から10日の九州北部の大雨を対象にした地球温暖化の影響についての評価では、総雨量が16パーセント増加。この記録的な豪雨によって、九州北部では土石流や土砂崩れが起き9人の方が亡くなった。

「最も暑い夏」を経験した2023年、このまま地球が沸騰したら起きてしまうこと 
ESAM OMRAN AL-FETORI//Aflo
2023年9月、強力な暴風雨に直撃された後のリビア・デルナの様子。

また、9月に、Danielと名付けられたサイクロンがリビアに及ぼした被害はいっそう甚大で、死者は1万1,300人以上に上った。気候科学者グループのワールド・ウェザー・アトリビューション(WWA)の分析では、この災害では、気温が1.2℃低い気候を想定した場合と比べて、降雨の発生確率は最大50倍、降雨の強度は50%増加したという。


もし、地球が沸騰したら起きてしまうと予想されること

グテーレス事務総長の言葉を借りれば、地球沸騰化の時代。このままだと、いったいどんなことが起きてしまうのだろうか? この夏以上に、わたしたちの心身だけでなく、地球全体にダメージを与えてしまうのだろうか。

次にご紹介するのは、国連広報センターが科学的なデータを基に発表した、グラフィックスで見る「気候変動」ファクトの一部だ。

気温が2℃以上上昇すると、サンゴ礁が消える恐れ

「最も暑い夏」を経験した2023年、このまま地球が沸騰したら起きてしまうこと
出典:国連広報センター:グラフィックスで見る「気候変動」ファクト

特に、気候変動の影響を受けやすいとされているのがサンゴ礁。平均気温が1.5度上昇すると70~90パーセントが、2度上昇すると99パーセントが消滅すると言われている。

この1.5度とは、パリ協定(2016年)で示された世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて1.5度に抑える努力をするという目標。気温上昇が1.5度以上になると、連鎖的で後戻りできない気候になる恐れがあるとされているのだ。

山火事の範囲が広がる

「最も暑い夏」を経験した2023年、このまま地球が沸騰したら起きてしまうこと
出典:国連広報センター:グラフィックスで見る「気候変動」ファクト

2023年の夏は、カナダ、中国、地中海沿岸などで大規模な山火事が起きた。カナダでは山火事が660件以上も同時に起きる緊急事態に。これも気候変動の影響とされている。

こちらのグラフィックスは、地中海の夏の平均気温が1.5度上昇すると、山火事で焼失する面積が41パーセント、2度上がると62パーセント、3度上がってしまうと97パーセント増加すると予測されることを示しているもの。

哺乳類の生息域に大きく影響

text
出典:国連広報センター:グラフィックスで見る「気候変動」ファクト

気温1.5度の上昇で哺乳類の4パーセントが 、2度で8パーセントが、 3度で41%が、生息地域の半分を失うという。生息域が変化することによって、絶滅のリスクを大幅に高める可能性がある。

海面上昇は、この30年で2倍以上に

「最も暑い夏」を経験した2023年、このまま地球が沸騰したら起きてしまうこと
出典:国連広報センター:グラフィックスで見る「気候変動」ファクト

世界の平均海水面は、2013年から2022年に年間平均で4.5ミリ上昇。これは1993年から2002年までの2.1ミリ上昇の2倍を超え、過去最高となった。海面が上昇すれば、沿岸に住む数億人の人々に多大な影響を及ぼす。IPCCの報告書によると、2050年には、世界の10人に1人が洪水の起きやすい沿岸部に住むことになるとしている。


この10年は、これから数千年の地球に影響を与える大事なとき

「10年間の行動が未来を決める」とは、やはり、グテーレス国連事務総長が2020年に2030年までの10年間の気候変動との戦いを示して語った言葉。また、IPCCの第6次評価報告書でも「私たちがこの10年に行う選択と行動が数千年にわたり影響を与える」と指摘している。

すでにあらゆる分野で温室効果ガスの排出を減らす努力は続けられているものの、それでもまだまだ。IPCCの同報告では、今世紀末までに2.2度~3.5度上昇する可能性もあるとしている。

観測史上、最も暑い年となった2023年。2024年は地球温暖化対策を自分ごととして行動に変えていく年にしてみない?

From: Fujingaho JP
Headshot of Akemi Ushijima
Akemi Ushijima
News Desk Manager

大学卒業後、フリーランスライターを経て、女性誌エディター、旅雑誌編集長、書籍編集者として、ファッション・ビューティ・カルチャー・フード・旅…とジャンルを問わず女性たちが気になるヒト・モノ・コトなんでも取材。最近、アート展に向かうとき、いつも重たい頭がすっきり軽くなっていることを発見。好きなものは、コーヒーと本と猫。福岡県出身。