そんなわけで、シンガポール在住の筆者は培養肉を実食してきた。
現在のメニューは「サンドイッチ」と「パスタ」の2種類。共に18.50シンガポールドル(税抜き)。筆者は、サンドイッチをチョイスした。どちらのメニューでも、培養肉は揚げられ、フライドチキンとして調理されている。
肝心の肉の味は、まさに鶏肉の味だった。他に表現のしようがないほど、鶏肉そのものだった。
見た目は鶏肉、食感も鶏肉、そして味も鶏肉。
もしそのバックグラウンドを知らなければ、きっとそれを「鶏肉」と思うだろう。どれくらいの人が、食事をしながら鶏肉が育てられた場所のことを考えるかは計り知れないけれど、きっとその肉が農場から来たものでは「ない」ということは決して想像できないのではないだろうか。そして、工業団地にある研究所で作られた「培養肉」と聞いたら、きっと驚くに違いない。
味についてはもちろんなのだが、筆者が驚いたのはそのにおいだった。個人的な話になるけれど、シンガポールでよくある話で一般スーパーで販売されている鶏肉が臭いことがある。(例えそれがオーガニックチキンとラベルが貼られて売られていても)食べてはいけない臭さではなく、あくまでも鶏肉のにおいが臭いというものだ。それが、それまでに食べてきたエサの臭いなのか、詳しい理由は分からないけれど、とにかくそういった臭いが培養肉にはない。そういったことを踏まえると培養肉はクリーンな肉なのかも?
筆者が培養肉の取材に訪れた日には、はるばるスイスから取材に来たという撮影クルーにも遭遇した。また、韓国からわざわざ培養肉を食べに来たという青年もいた。こうしたことからも、培養肉が世界的に注目を集めていることが伺える。
このように人々の関心を引く理由の一つは、培養肉は家畜を飼育する必要がなく、将来の食料問題に対する切り札の一つになるかもしれないという期待が寄せられているためだ。
一方で、培養肉の製造は決して新しい取り組みではなく、これまでに業界には何十億ドルも注ぎ込んできたんだとか。しかしながら、新規性を超えたその存続可能性には大きな疑問符がつきものだ。イート・ジャストも決して例外ではない。