パーティーでかわいい子と目が合った。セクシーなバリスタからカフェラテを受け取った。初対面なのに間違いなく何か感じる。会ったそばから惹かれるなんて意味が分からないけれど、胸の高鳴りは嘘をつかない。もしかして、これは一目ぼれ? アメリカ版ウィメンズヘルスから詳しく見ていこう。

心理療法士のアンジェラ・フィッケンによると、一般的に一目ぼれは、初対面の人に会ったそばから強く惹かれることを指す。恋愛ドラマでも、2人の若者がたまたま道ですれ違い、お互いの名前も知らずに恋に落ち、幸せに暮らすというのはよくある話。だから現実の世界でも、そのような展開に憧れてしまうかもしれないけれど、フィッケンいわく一目ぼれのコンセプトは映画やドラマによって過剰に美化されている。現実の恋愛は、そんな簡単なものじゃない。

一目ぼれをすることが絶対ないとは言わないけれど、そのときの胸の高鳴りは高い確率で性的なものに過ぎない。むしろ、初対面の人の前では何が何だか分からないのが普通。「肉体的に強く惹かれている状態が、性的にビビッとくる感覚を伴って“一目ぼれ”と表現されることもあります」と説明するのは、メンタルヘルスケアサービスBarry Happy Couplesのオーナーで認定マリッジ&ファミリーセラピストのローレン・バリー。「こういう気持ちは突然かつ強烈に湧いてくるので、それを恋愛感情と勘違いしてしまうのです」

そうなると、やはり一目ぼれなんて存在しない? そして、一目ぼれから始まった関係は続かない? 専門家に話を聞いた。

一目ぼれとは?

一般的に、恋愛カウンセラーたちは一目ぼれを心酔(よく知りもしない人に心を奪われ夢中になること)と情欲(肉体的な欲望)の組み合わせと考えている。「俗に言う一目ぼれは、心酔と情欲から成るものだと思っています」とバリー。「恋愛感情は、お互いの価値観、共通の意義、敬愛の念といった複数の層から成って」おり、こうした要素が知り合ってすぐの段階で築かれることは少ない。

そうは言っても一目ぼれは、それが恋と思えるような一連の生理学的反応を体にもたらす。「一目ぼれをすると、脳内でホルモンと神経化学物質が分泌されて、心拍数の上昇、発汗、胸の高鳴りといった体の反応を引き起こすことがあります」と説明するのは、リハビリ施設Ocean Recoveryの臨床ディレクターで認定マリッジ&ファミリーセラピストのカレイ・ハートマン。「脳で分泌されるオキシトシン(愛情ホルモン)、ドーパミン(幸福ホルモン)、セロトニンは私たちを幸せな気分にしてくれます」。こうした生理学的な反応が次々に起こると、興奮、情熱、ムラムラ感、自分の手には負えないほど強い感情が同時に訪れ、いきなり恋に落ちたかのような陶酔感を覚える。

脳は情報を超高速で処理しているため、初対面では、その人の正確な人物像を掴めない。にも関わらず私たちは、ハロー効果(心理学における認知バイアスの一種)によって、自分が魅力的だと思う人の性格を良いほうに良いほうに考えてしまいがち。

認定メンタルヘルスカウンセラーでニューロフィードバック&カウンセリングセンター創設者のアマンダ・レヴィソンによると、社会の中で昔から魅力的とされる顔だちの人には、特にハロー効果が起こりやすい。「そのような顔立ちに対しては、脳が自動的によい性格を与えてしまうからです」。あのバリスタが完璧に“見える”のも、あなたが彼を必要以上に美化しているから。

一目ぼれは、あなたの判断力も鈍らせる。「一目ぼれをすると一時的な衝動に駆られ、よく考えたり時間をかけたりすることも忘れて、すぐに行動を起こしたくなりますからね」とハートマン。「その結果、平常心では絶対にしないような決断をしてしまうことがあります」。バーで出会ったばかりの人といますぐに結婚したいと思うのも、あなたの体が大げさに反応し、思考を鈍らせているからに過ぎない。

一目ぼれは本当にある?

恋愛は主観的な経験なので、その答えは「YES」でもあり「NO」でもある。出会った瞬間から“運命の人”であることが分かっていたと言う人もいれば、出会った瞬間にビビッとは来たけれど恋愛感情が芽生えたのはしばらくしてからと言う人もいる。「一目ぼれを立派な恋愛感情とするのか、単なる心酔や情欲とするのかは、その人の解釈や考え方次第です」とフィッケン。

人間関係の学術誌『Personal Relationships』に掲載された2018年の論文も、一目ぼれ=肉体的に惹かれている状態という考え方を裏付けている。「恋愛感情は主に情熱、親密さ、献身という3つの要素から成っていると言われています」と説明するのは、セックストイの情報サイトSex Toy Collectiveのセクシュアリティ&恋愛エキスパートで性科学者のサラ・メランコン博士。「でも、一目ぼれは、とりわけ情熱的でも親密でも献身的でもなく、むしろ肉体的な魅力を特徴とするという研究結果が出ています」

メランコン博士によると、一目ぼれは“吊り橋効果”によるもので本当の恋じゃない。吊り橋効果とは、恋以外の刺激からくるドキドキを恋と勘違いしてしまうこと。「一目ぼれをしたと言い張る人は、性的な魅力を感じたときのドキドキと、本当に人を好きになったときのドキドキが区別できていない可能性が高いですね」

そもそも、出会ってすぐに惹かれたというだけで恋に落ちたことにはならない。フィッケンいわく恋愛感情は、心のつながり、理解や献身、そして共通の経験を通して少しずつ育まれるもの。出会った瞬間に胸が高鳴り恋に落ちる可能性はあるけれど、落ちない可能性も十分にある。

一目ぼれのサインとは?

一目ぼれは、心酔、情欲、興奮のコンビネーションがもたらす現象。とはいえ、目の前の人に魔法のように引き寄せられて、それが本当の恋に思える(のちのち恋に発展する)ことも。次の4つは、パーティーで出会った彼が単なる憧れ以上の存在であることを示すサイン。

1.強い心のつながりを感じる

知り合ったばかりの人に深いレベルへ引き込まれ、心が強く引き寄せられているとしか言いようのない状況になることも。「初対面の人との間に強烈なつながりを感じて、お互いをもっと知らずにいられなくなるというケースもあります」とハートマン。

2.その人の前では体が明らかな反応を見せる

言い換えれば、とんでもなくドキドキするということ。「一目ぼれをした人には、興奮感、ムラムラ感、心拍数や呼吸数の増加、発汗量の増加、筋肉の緊張が見られるかもしれません」とメランコン博士。

3.なぜか親しみや安心を感じる

フィッケンの話では、初対面なのに、その人をずっと前から知っているような感じがすることもある。SNSで見たことや、1~2回すれ違ったことがあるのかもしれないけれど、妙に親しみを感じるのは一目ぼれのサインかも。

4.その人のことばかり考えてしまい、他のことに集中できない

一目ぼれをすると、その人を中心に自分の世界が回り始める。「他のことに集中できなくなったり、その人の前では笑みがこぼれたり顔が赤くなったり、その人のことで頭がいっぱいになったりするのは、一目ぼれをしたからかもしれません」とハートマン。

一目ぼれが長期的な関係に発展することはある?

間違いなくあるけれど、そのためには明確な意図と努力が必要で、ただよい雰囲気を維持するだけでは不十分。

「最初に感じた魅力や情欲は強力でも、それが長期的な関係に発展するには、その人に対する深い理解、相性の良さ、共通の価値観、長期的な献身が必要です」とフィッケン。「一目ぼれを出発点にするのはいいですが、積極的に2人の関係を進展させていかないと、永続的な絆は築けません」

バリーによると、肉体的な魅力だけがベースの関係には、のちのち問題が生じることも。「これはカウンセラーとしての経験から言えることですが、肉体的な魅力を唯一の理由、あるいは主な理由として付き合っているカップルは衝突することが多いです。世の中には、お互いの体に魅力を感じていれば大丈夫と思っている人が多くいますが、このような考え方はいずれ多くの問題を引き起こします」

肉体的な魅力は時と共に衰えるので、それ以外の土台がないと愛情は育まれない。「一目ぼれをすることはあっても、そこから始まった関係が長続きするとは限りません。肉体的な魅力と情欲でつながっているだけの場合は、時間と共に相手への気持ちが薄れてきます」とハートマン。「でも、2人の心がつながっていて、信頼とコミュニケーションを基礎とした有意義な関係が築けた場合は、一目ぼれから始まった関係も長続きするでしょう」

ビビッと来たからというだけで恋愛における相性がいいとも限らない。「相性がよいかどうか、2人の関係が長続きするかどうかは、最初に感じた魅力というより、共通の価値観や目標、お互いを尊敬する気持ちの有無で決まります」とバリー。「一目ぼれはただ肉体的に強く惹かれている状態で、恋愛というパズルのピースの1つに過ぎません。こうした一時的な状態から長期的な相性を予測するのは、かなり無理があるでしょう」

事実、出会い系サイトのMatchが米国の独身者を対象に行った2022年の調査では、成人の49%が最初は魅力を感じなかった人に恋をしたことがあると答えた。ゆっくり火が付く関係も悪くないし、初対面の人に魅力を感じることがなくても焦る必要はまったくない。

結局のところ一目ぼれはニュアンスの問題なので、あなたが実際にあると言えばあるし、ないと言えばない。あなたがステキな人と出会い、最初のドキドキがおさまって、イチャイチャする時期どころかハネムーンフェーズが過ぎても、お互いに強く惹かれ合っているのなら、それは一目ぼれから始まった真の恋愛。

その一方で、この気持ちはホンモノと思っても、しばらくするとそれが単なる心酔や情欲であることや片想いであることに気付くケースは少なくないし、残念ながら気持ちが冷めてしまうケースもあるけれど、だからといってもう二度と恋ができないわけじゃない。そして、あなたが一目ぼれをした人と一緒に全力で幸せな関係を築いているところなら、未来は明るい。

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Tianna Soto Translation: Ai Igamoto

Headshot of 伊賀本 藍
伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。