“性的な相性”という言葉を聞くとなに(あるいは誰)が浮かぶ? 恋愛ドラマのカップルは、出会ったばかりで最高の一夜を共にしたり、最終回でやっと濃厚なベッドシーンを見せてくれたりするけれど、現実の世界における性的な相性はもっと複雑。
新しいパートナーとは全身から湯気が立つほど情熱的なセックスを期待するかもしれないけれど、1回目から甘い化学反応が起こるとは限らない。著書に『Sex Talks』を持つ心理療法士でセックスカウンセラーのヴァネッサ・マリンによると、多くの人は“初めて”を重視しすぎる。
性的な相性は時間をかけてよくしていくもの。セックスの仕方は人によって違うので、お互いのニーズの満たし方も数回しないと分からない。「誰から見てもセックスが上手い人なんて存在しません」とマリン。「前のパートナーにとってはホームランだったことが、いまのパートナーにとってはファウルということもあります」
でも、一体どんな状況を「性的な相性がいい」と言うのだろう? 性的な相性が育てられるものだとしても、それがあまりに悪いのは破局の原因になるの? アメリカ版ウィメンズヘルスが専門家の意見を聞いてみた。
性的な相性とは?
読んで字のごとくかと思いきや、“性的な相性”は性体験で双方が満足できることだけを指す言葉じゃない。法医性科学者でセックスカウンセラーのトム・マレー博士によると、この言葉には体と心、そして知性の相性や、お互いのニーズと願望を理解して尊重することも含まれる。
「性的な相性がいいというのは、お互いの体、コミュニケーションスタイル、親密度が心地よいということです」とマレー博士。「お互いが満たされる関係を築くために、お互いの感情、望み、ニーズをオープンに表現して話し合えるということでもあります」
このように相性は複雑な構造をしているので、複数の人の間で相性が合わないのは珍しいことじゃない。「なにもかもピッタリの人が見つかることはありません」とマリン。「ピッタリ合っている部分もあれば、ズレている部分もあるのが普通です」
だからといって相性の悪さを受け入れる必要はないけれど、ちょっと相性が悪いからというだけで、それ以外では至って順調な関係を終わらせることはない。
性的な相性がいいことを示すサインは?
マリンいわく以下の6つは、あなたとパートナー(もしくはパートナー候補)の相性がいいことを示すサイン。完璧に合う可能性は低いけれど、これを見れば性欲、願望、考え方などの点で相性がいいか悪いかがなんとなく分かるはず。
- 理想的なセックスの頻度が同じ。言い換えると、どのくらいの頻度なら双方が満足できるか。マレー博士によると、そこにズレがあるときは、話し合いの上、セックスのない日にも官能的なアクティビティやストレッチで親密度を高めるといい。お互いの合意があれば、イチャイチャしたり抱き合ったりするだけでもOK。
- お互いのアイディアや興味関心がオープンに話し合える。ベッドの中ではなにがしたい? 好きなプレイは? どのくらい時間をかける? セックスの定義ってなんだろう? あらゆる点で意見が合う可能性は低いけれど、このような質問を投げかけ合えば、エリアごとの相性の良し悪しが見えてくる。
- セックスを通して感じたいものが似ている。セックスでは、どんな気分を味わいたい? 大切にされている、あるいは尊ばれていると感じたい? それとも偉そうに命令されたり、言葉で貶められたりしたい派? 甘々が好きなのか、荒っぽいのが好きなのか、その中間が好きなのか? マリンによると、大事なのは空想の内容や興味関心ではなく「親密な時間の中で養いたいエネルギー」が似ていること。
- お互いに「NO」を「NO」として尊重している。お互いのニーズは満たされている? お互いの境界線やリミットは尊重されている? これは恐らく、ヘルシーな関係を築く上でもっとも重要。
- 理想とする関係性が似ている。あなたが望む関係性はモノガミー、それともノンモノガミー? この選択は、検査の頻度や避妊器具の使用に関する意見にも影響するはず。
- お互いが性生活に意欲的。お互いが夜の努力を厭わず、セックスに対して前向き? 他の点はまだしも、この点で意見が合わないのは大問題。
性的な相性をよくするためには?
新しいパートナーとのセックスが1回目(あるいは2回目や3回目)から完璧であることを期待するのは、あまり現実的じゃない。
「最初は、お互いがお互いの体を知りません。相手と自分の好みを把握するには時間が必要です」と説明するのは、マッチングアプリ『3Fun』の顧問インティマシーエキスパートで、著書に『All The F*cking Mistakes: A Guide to Sex, Love, and Life』を持つ性教育者のジジ・エングル。「初セックスでガッカリするたびに別れていたら、有意義で安定したパートナーシップに巡り合う確率が間違いなく低くなります」
長年付き合っているカップルでも性的な相性が問題になることはあるけれど、いまの状況にかかわらず、パートナーと性的な相性をよくしていくことは可能。一番いいのはオープンなコミュニケーションを図ること。話を切り出すときは不安や恐怖でドキドキするかもしれないけれど、それで2人の性生活が大きく変わることもある。
「性的な関係においては みんなが満足することを共通の目標にするべきです」とエングル。「不安や恐怖を感じても、用心深さの中に遊び心と好奇心を持って、楽しく話をしてみましょう」
話し合うのは早ければ早いほうがいい。まだセックスをしていない交際の初期段階でするのがベスト。そして、まずはポジティブな話からーパートナーの特技を褒めて「もっとしてね」と頼んだりするといい。
その上で次のシンプルな質問をしてみよう。「普段どんな空想をする?」「セックスで好きなことは?」「好きな体位は?」。ちょっとアブノーマルなプレイのリストを一緒に見ながら、お互いの興味関心が被るものをチェックしてみてもいい。
「セックスの話をざっくばらんにしていないと、あちこちで誤解が生じて、本当は意志の疎通が不十分なだけなのに、性的な相性が悪いような気がしてきます」とマリン。だからやっぱり、不安なときこそ話し合うべき!
性的な相性のよさは必要?
パートナーのことがどんなに好きでも、性的な相性が悪すぎて関係が終わることもある。「性的な相性の悪さは、間違いなく破局の正当な理由になります」とエングル。「性的なつながりは非常に重要なので、その問題がどうやっても乗り越えられないと思うなら、それを理由に別れるのもアリでしょう。その人とは縁がなかったのかもしれません」
毎年多くのカップルが、さまざまな不一致を理由に破局する。離婚時の財産分与を専門とするファイナンシャルアナリスト集団(CDFA)が行った調査でも、離婚理由の第1位(43%)は性格や意見の不一致で、浮気や性的な問題は第2位(28%)だった。
マリンいわく世の中には、「相性がピッタリであることを期待する」か「相性を完全に無視する」かの両極端で、妥協点を見つけられない人が多い。でも、実際のところ相性は、それで人間関係が終わるくらい重要ではあるけれど、常に完璧を要するほど重要ではない。
結局、全ては2人のコミュニケーションと性生活に対する意欲次第。でも、あなたが話し合おうとしているにも関わらず、パートナーが聞く耳を持たないときや軌道修正を拒否するときは、相性云々の前に別れて、お互いに満足のいく関係を築ける人を見つけたほうがいいかもしれない。
※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Sabrina Talbert Translation: Ai Igamoto
Sabrina is an editorial assistant for Women’s Health. When she’s not writing, you can find her running, training in mixed martial arts, or reading.
ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。