ようやくマスク生活の終わりが見え始めたとはいえ、3年間のコロナ禍が我々に与えた影響は大きい。

自律神経の名医であり順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏は、「コロナで誰もが慢性疲労症候群のような状態に陥っている」と指摘する。

「どうすれば、自分の心をととのえられるか」

「前向きに強く生きるためには、どうすればいいか」

「自分で自分の機嫌をとるにはどうしたらいいか」

そこでおすすめするのが自律神経を味方につけるやり方だ。自律神経は、心臓や肺、腸などの働きと密接に関係するまさに「命」そのもの。自律神経が乱れると、体だけでなく心にも不調がでてくる。モチベーションを高め、心身ともに健やかに機嫌よくすごすにはどうすればいいのか。小林教授が推奨する「仕事への上機嫌な取り組み方」を紹介しよう。


午前と午後でやることを切りかえる

自分の機嫌をとるためには自律神経が本来持つリズムに逆らわないように行動することが望ましい。自律神経の交感神経と副交感神経は、お互いにバランスをとり合っているが、朝から正午にかけては、交感神経がピークになる時間帯。

その後、交感神経がしずまり始め、18時から副交感神経が優位となり24時に向けてピークになっていく。

そのため、仕事で集中するのにベストの時間は午前。頭を使う仕事、考える仕事、クリエティブな仕事など、自分の仕事のなかでメインになるような仕事をするといいだろう。

昼食後は特に頭を使わなくてもできるような仕事、単純な仕事をするのが正解。朝一番にメールチェックをする人も少なくないだろうが、いちばん集中できる時間をメールチェックにあてるのはもったいないといえる。

自律神経のリズムに合わせた仕事の割り振りをすることで、仕事も効率よくこなすことができるようになるはずだ。

45分ごとに15分の休憩をとる

人間が集中できる時間にはリズムがある。「15・45・90の法則」とよばれ、最も高い集中力を持続できるのが15分、子どもでも集中できるのが45分、そして、人間が集中力を持続できる限界が90分というものだ。

そこで小林教授がすすめるのは「45分集中して、15分休む」というテクニック。1時間のうち4分の1が休憩時間となるため、最初のうちは「こんなに休憩していいの?」と思うかもしれない。

しかし、実践してみると45分で仕事が普段の1.5倍から2倍はかどることもあるというから驚きだ。

もちろん仕事以外での活用可能。プライベートの語学学習といった学びの機会にもぜひ取り入れて欲しい。ダラダラせずオンオフのメリハリがつくことで心のなかも整理され、機嫌よく毎日を過ごせるようになる。

怒りを鎮めるには階段の昇降が最適

仕事中に不機嫌になるような出来事があったり、怒りが出そうになることもあるだろう。

「怒り」といった爆発的な感情で自律神経が乱れると、3時間くらいは交感神経が優位のまま元には戻らない。

そんなときはまずは大きく深く深呼吸すること、しかし、深呼吸ぐらいではおさまらない怒りはいったいどうすればいいのだろうか?

そんな場合は1〜2階分のフロアの階段を上り下りしてみよう。ゆっくりとリズミカルに行うと、副交感神経が優位となり、心も落ち着いてくる。

逆に急いで駆け上がったり駆け降りたりするとよけいにイライラしてくるので気をつけたい。

忙しいときほど「ゆっくり」動く

自分の仕事に集中しているときに、上司から「ちょっとこれ、急ぎでやっておいて」と頼まれるとあなたはどう感じだろうか?

「なぜいま?」とイライラすることもあるだろう。感神経が刺激され、自律神経が乱れ始める。すると鼓動がはやくなり、行動も雑になり、うっかりミスが発生……ということも起こりかねない。

そんなときは「ゆっくり」動くことを意識してみよう。あわてたり急いだりしているときこそ、「わざとゆっくり」行動することで自律神経をととのえることができる。

たとえばゆっくりと深呼吸をしたり、ゆっくり丁寧に字を書いたり、ゆっくりと歩いてトイレに行ったりするのもおすすめだ。

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自律神経の名医であり順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏による著書『上機嫌の習慣』が主婦の友社より好評発売中だ。今回ご紹介した「仕事への上機嫌な取り組み方」に加え、さまざまなシーンで自律神経をコントロールし、上機嫌に過ごすための方法が書かれている。

<目次>
第1章 朝の上機嫌な過ごし方
第2章 昼の上機嫌な過ごし方
第3章 夜の上機嫌な過ごし方
第4章 仕事への上機嫌な取り組み方
第5章 こころを上機嫌にととのえる
第6章 からだを上機嫌にととのえる

Hikari Inagaki(side dishes)

Headshot of Kiriko Kageyama
Kiriko Kageyama
エル・グルメ編集長/ウイメンズヘルス編集長

『エル・オンライン(現エル・デジタル)』のファッションエディターを経て、フリーランスに。女性ランナーによる企画集団「ランガール」を設立。その後女性誌立ち上げやWebメディアの立ち上げを経て2017年にウィメンズヘルス』日本版ローンチ時から編集長に。2023年夏よりエル・グルメ編集長も兼務。趣味は料理を作って友人たちに振る舞うこと。