ダイエットを行う上で最も大切なことは、健康という土台を崩すことなく目標が達成できるか。

今のダイエットは健康を無視し、いかに短期間で結果を出すかの競争になっていると語るのはパーソナルトレーナーの林健太さん。

「効率よくダイエットをしたつもりなのに、あっという間にリバウンドを経験してふり出しに戻ってしまう。もしくはダイエットを始めた時以上に体重が増えてしまったという人もいるでしょう。

実は効率が悪いように感じる方法こそが、健康を保ちながらリバウンドせず美しさを保つダイエットに繋がります」。

体重という数字だけを落とすことは誰でも簡単にできる。しかし、理想的なライフスタイルを確立して常に満足できる美しい状態をキープしている人はほとんどいない。

「本質を捉えたダイエットにおける体重の変化は微々たるものです。もちろん個人差はありますが、重度の肥満でない限り、まずは肝心なポイントを正しく抑えて、それをライフスタイルに組み込んでいくことが効率化につながります」

健康についてのあらゆる情報があるなかでも、場合によっては予想外なことが肝になるという。林さんが挙げる、5つの例を見ていこう。

①たんぱく質より糖質と脂質

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「筋肉をつけ代謝の良い体にすることはダイエットを行う上で、たんぱく質が大切というのは正解ですが、その代償として糖質や脂質が極端に少なくなってしまうと、せっかく摂ったたんぱく質も体は筋肉の材料よりもエネルギーとして使ってしまいます」

筋肉はエネルギーを使う組織なので過剰な筋肉は体にとってはお荷物。エネルギーとして利用効率の良い糖質や、貯蔵効率の良い脂質が少なければ、筋肉という重い荷物をどんどん荷解きしていく他ない。

「糖質や脂質にはたんぱく質をエネルギーに変えないようにする節約効果もあります。イエットで摂取エネルギーが減っていく場合にはたんぱく質を増やしすぎずにエネルギー源である糖質のバランスもしっかり増やしていきましょう」

特に運動後はプロテインのみではなく、使ったエネルギーを同時に補給できるようにしっかりと食事を摂るようにしよう。

②歩数より歩幅

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厚生労働省が目標とする女性の歩数は8,300歩。ダイエットで日常生活の歩数を記録している人は多いかもしれないが、歩数以上に注目してほしいポイントがあると林さん。

「1000歩の目安は約10分、600〜700mになりますが、大股で歩くことでスピードも上がるので、同じ歩数でもより早く遠くに行けることになります。

仕事(力×距離)を大きくすることが、効率よくダイエットを進めていくポイントの一つです」

身体活動の強度を表すメッツは、歩行速度が上がれば上がるため当然消費カロリーも増える。さらに大股で歩くことは股関節の可動域を上げ、腸腰筋や大臀筋の筋活動量にも影響する。

さらに歩行速度や歩幅は、脳卒中や認知症のリスクとも相関性があるので、健脚の維持は健康寿命の維持にもつながると考えておこう。

③運動より食事

woman mixing delicious superfood salad ingredients with wooden spoons in kitchen
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食事8割、運動2割。

ダイエットにおいての運動と食事の重要度の比率を表し、このように言われることも多いが実際はどうなのだろうか。

「運動と食事はどちらも重要ですが、目的が違います。

運動筋肉の維持や増加を目的とし、食事体脂肪の減少を目的とするので、体重を減らすという目的であれば後者を優先する方が良いでしょう」

運動を優先するあまり、体重を支える膝や足首に過度な負担がかかり、思わぬ怪我や事故につながることもあるので気をつけてほしいと林さん。

これからダイエットで運動を始めようという人は、まずは食事を見直し、運動しても問題のない体重に落とすことが先決。

普段から運動習慣があり2〜3kg痩せたいダイエットであれば、食事を見直すだけで十分だ。

④スキンケアより内臓ケア

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肌年齢は見た目に大きく影響するため、体型と合わせて気をつけている女性も多い。

ちょっとしたホルモンバランスや環境の変化が肌に現れてしまう人は、急に無理なダイエットを始めるのではなく、徐々に食事や運動のバランスを変えていくことが大切。

「腸の環境が肌に密接に関係していることはご存知の方も多いと思いますが、急な食事制限をしてしまうと腸内環境が一気に変わってしまいます。

特にダイエットで陥りがちな動物性たんぱく質の過剰摂取は、肌荒れの大きな原因になります」

食事では糖質を控えてたんぱく質多め、間食や寝る前には筋肉をつけるためにプロテイン。

ダイエットに良いと思っていた食生活で、動物性タンパク質が過剰摂取量になっている人も多いはず。

まずはスキンケアよりも腸に負担をかけるたんぱく質の摂取量を見直して、野菜や果物など食物繊維の多い食材ともバランスよく食べるように心がけよう。

⑤栄養表示よりも食品表示

couple choosing jar of jam
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「ダイエット中は食事に気をつけて、買う時に必ずカロリーを確認する人も多いでしょう。しかし、本当に確認するべきなのは栄養表示ではなく原材料などが書かれた食品表示です。

PFCバランスなど表面的な部分にだけ目を向けず、トータルでその食品の良し悪しを判断する力を養うことが重要です」

栄養表示に記載されているカロリーは、燃やした時に発生する物理的な熱量であり体内でも同じことが起こっているわけではない。太りやすい体質や痩せやすい体質といったものも、人によって生み出されるカロリーが違うことも要因の一つ。

食品添加物や原材料の組み合わせによる体内での影響は、まだまだ未知な部分が多い。

「全ての原材料を知る必要はありませんが、記載数が多いものには注意が必要です。無添加やビタミンC、アミノ酸など体に良いと感じる成分でも安心せず、生鮮食品を自分で調理するように心がけましょう」

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林健太
NESTA公認トレーナー SIXPADオフィシャルトレーナー

 幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
 卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
 選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/