バレンタインデーが近づき、百貨店などでもチョコレートフェアが開催されているが、最近では友人や自分へのプレゼントとしてチョコレートを買う人も多い。

あるアンケート調査によると、チョコレート選びのトレンドは、手頃さや量よりも、質重視の傾向をうかがわせている。

「誰かへのプレゼントとしてはもちろん、自分へのプレゼントとしても質にはこだわってほしいと思います。嗜好品でもあるチョコレートは商品により雲泥の差がありますので、ブランドやパッケージデザインだけでなく原材料にもこだわって選びましょう」

見た目だけではなく、買うときには必ず原材料名などをチェックしてほしいと語るパーソナルトレーナーの林健太さん。自身もよくチョコレートを買うそうだが、必ずチェックする点がいくつかあるという。

「健康への影響は賛否両論あるチョコレートですが、食べる量をコントロールすればメリットが大きくなります。これはチョコレートに限らずどんな食品にも共通して言えることで、適量を見極めることが大切です」

林さんが注目する栄養素や食べる際の注意点を参考に、今年のバレンタインデーは例年よりもさらに質を上げて、自分も周りの人も健康にしてあげよう。

①選び方
a row of chocolate bars
Carmen Martínez Torrón//Getty Images

■ハイカカオ

主原料でもあるカカオの含有量は、チョコレートの質を左右する。

ブラックチョコレートと表記のある商品でもカカオ含有量は様々で、厳密な決まりはないので注意してほしいと林さん。

「原材料は占める重量割合の最も多いものから順に書かれています。ダークチョコやビターチョコという名称でも、必ず確認してカカオマスが最初に書かれているものを選ぶようにしてください」

砂糖が最も多く使われている商品の方が割合的には多いが、質を追求するのであれば第一にチェックしたいポイント。もちろん、カカオマスは砂糖よりも高価な原料なので、価格も上がることは致し方ない。

しかし、カカオ含有率が高くなればなるほど苦みが増し、食べにくいと感じる人も多い。林さんのおすすめはカカオ60~70%程度の商品。

質と味のバランスはプレゼントする側のセンスでもあるので、相手の好みを探りながら選んでみて。

「ちなみにホワイトチョコレートには一切カカオマスが含まれていませんので、チョコレートとは到底言い難い商品です。質を追求するチョコレート選びの選択肢には入れなくても問題ありません」

■シンプルな原材料

「前述した通り、チョコレートの主な原材料はカカオマスと砂糖です。しかし、舌触りを滑らかにしたり、濃厚さを引き出したりするための油脂が添加されている商品も多いです」

カカオマスは加工するとココアとカカオバター(ココアバター)に分かれる。

チョコレートに油脂成分を添加する際は最も相性の良いカカオバターを使うべきだが、コストダウンのために植物性油脂や乳成分が利用される商品がほとんど。

そうすると乳化剤など余計な添加物の使用量も増えていくので、原材料は数が少なくシンプルなものが良いと林さん。

「原材料の種類が多くなれば高品質になりそうな気がしますが、チョコレートは少ないほうが高品質です。カカオマスに重要な栄養成分が含まれていますので、シンプルかつカカオ含有量が多いものが質の良いチョコレートと言えるでしょう」


②注目の栄養

cacao
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■カカオポリフェノール

「チョコレートの有名な栄養成分であるカカオポリフェノールは、前述のカカオマスの原材料比率と共に増加します。ポリフェノールは多くの植物に含まれる苦みや色素の成分で、他にも赤ワインのアントシアニンやお茶のカテキンもポリフェノールの一種です」

ポリフェノールをはじめとする植物由来の栄養成分、フィトケミカルには様々な健康効果が報告されており、抗酸化や抗炎症、免疫増進作用などが代表的。

しかし、カカオポリフェノールの多い商品ほど酸味や苦みが強く、舌触りが粉っぽくなってしまうので、脂肪を含む原材料を多く利用せざるを得ない。

「ポリフェノールは植物が害虫から身を守るために作り出す苦み成分です。チョコレートも質を吟味して、食べ過ぎなければ野菜同様に良い健康効果が期待できます」

良薬口に苦しという通り、多少の苦みこそがチョコレート本来の味と機能的な栄養と言える。

■テオブロミン

テオブロミンはカカオポリフェノールと相関関係にあるので、カカオ成分に比例して多くなる。

また、カフェイン同様に興奮作用や利尿作用があるので、摂り過ぎには注意が必要だが、様々な健康効果が期待されている。

「神経細胞の発生や成長、再生などを促すBDNFは、運動により増加することが分かっていますが、チョコレートを食べることでもその効果が期待されています。BDNFは、記憶を司る脳の海馬に多く含まれているので認知機能向上にも役立ちます」

テオブロミンはギリシャ語で神様の食べ物とも呼ばれる栄養成分。過去にカカオは様々な病気の治療薬としても用いられていたほど。

他にも腸内細菌叢への影響やカフェインとの相乗効果など、様々な研究が進められている今注目の栄養成分だ。

③注意するべきポイント
chocolate nut spread in jar
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■高脂質

高糖質というイメージがあるチョコレート。しかし、質にこだわる際には糖質よりも脂質に注意してほしいと林さん。

「カカオ含有量が多くなると、砂糖の使用量は減りますが、カカオ由来の脂質成分が多くなるので、結果的に従来品よりも高脂質になります。甘味が少ない分、より滑らかな舌触りが美味しさの鍵となるので、購入の際は栄養成分表示を見比べてみましょう」

1g当たりのカロリーは糖質が4kcal、脂質が9kcal。脂質の方が倍以上高いので、甘くないけれども高カロリーな商品もたくさんある。

しかし、チョコレートはもちろん全ての食材に含まれる脂質が肥満に直結するわけではない。

「もちろん食べすぎは悪影響を与えますが、普段から低脂質な食事を心掛けている人にはナッツ同様に良い摂取源となります。ポリフェノールなどのフィトケミカルも肥満防止に良い影響を与える栄養素なので、食事とのバランスを考えて食べるようにしましょう」

脂質も量よりバランスや質が重要。チョコレートを食べすぎた日はお肉を控えるなどうまく調整してみて。

■カフェイン

「カフェインは日頃から気を付けている人も多いと思いますが、普通のチョコレートと高カカオチョコレートでは含有量に4~5倍ほど差がある場合もあります」

コーヒーやエナジードリンクなどは1缶で約100~150mgのカフェインを含む。高カカオチョコレートは板チョコサイズでもそれらの半分程度のカフェインを含む上に、前述のテオブロミンを多く摂取してしまうので、食べ過ぎにはくれぐれも注意したい。

他にも紅茶やウーロン茶、特に玉露には多く含まれているため、プレゼントする相手や自分自身の食習慣とのバランスにも注意しておこう。

「カフェインやテオブロミンは依存性を持つので、摂取欲求を引き起こします。様々な健康に良い影響が報告されている一方で、大量摂取は心身共に悪影響を与えることは間違いありません」

カフェインの感受性は個人差が大きいが、欧州食品安全機関(EFSA)によると、1日あたり400mg以下が推奨されている。

コーヒーや紅茶、緑茶をよく飲む人は、板チョコ半分程度を一日の摂取量上限にしておくほうが好ましい。

④目に見えない注意点
cocoa fruit
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■金属ミネラル

全ての植物は、育つ土壌によってミネラル成分の含有量が異なる。

その為、カカオも生育地域や土壌環境によって若干の違いはあるが、様々なミネラル分を含んでいる。

「カドミウムやニッケルといったミネラルは人体に好ましくないですが、カカオには比較的多く含まれています。つまり含有量と共に、摂取量も多くなってしまいます」

接触性のアレルギーとして最も発症が多いと言われるニッケル。経口摂取によっても発症する可能性があるので、大量かつ長期的な摂取は避けたいところ。

「我々はチョコレート以外の食品からもニッケルを摂取しています。もちろん健康に影響がない量ですが、その量は一日で高カカオ板チョコ一枚分にも及びます。毎日食べるものではありませんが、やはり一回の摂取量は板チョコ半分程度に控えておくほうが良いでしょう」

■チラミン

「チョコレートを食べて頭痛が起こる人は少ないですが、もし起こるようなことがあれば、チーズや発酵食品にも多く含まれるチラミンが原因の可能性があります」

この原因物質であるチラミンは、血管収縮や頭痛、発熱などを引き起こす。カフェイン、テオブロミン同様に感受性には個人差があるものの、交感神経を刺激する毒性物質。

原材料の選び方でも説明した通り、カカオマスはココアとカカオバターに分かれるが、これらの刺激成分は、ココアに多く含まれる。

「チラミンは腸内環境にも悪影響を与えるので、チョコレートは健康と不健康のどちらにも作用する食品だということを抑えておきましょう。どんな食材も、適量を知ることができればメリットがデメリットを上回るでしょう」

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林健太
NESTA公認トレーナー SIXPADオフィシャルトレーナー

 幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
 卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
 選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/