約46万人のイギリス人たちにとって、ヨガは髪をとかしたり、昼食の後にデザートを食べることと同じくらい日常の一部になっているそう。どうやらそれには、正当な理由があるみたい。実際にヨガは、何千年も前から存在する実践と哲学なのだけれど、ヨガの原則がとくに混沌とした今の時代に大きなインパクトを与えているという。うつむいた姿勢でスクリーンを見てほとんどの時間を過ごし、地球の状態にすら不安を感じさせられることが多いから。

ヨガは、精神の健康と幸福に非常に有益であることが数々の研究で示されている。ヨガではゆっくりと深い呼吸を行うため、交感神経系(戦うか逃げるか反応)から副交感神経系(“安静と消化”)への切り替えを促し、これによって血圧が下がり、消化器系の働きがよくなる。ヨガは、うつ病の症状を改善したり、ストレスや不安を和らげる確かな方法として、幅広く受け入れられている。

柔軟性や筋肉の強度が向上するなど、ヨガを定期的に行うことの身体的メリットが多いのは、すでにご存知の通り。だけど、筋力をつけるという点では、ヨガで筋トレと同等の効果を得られるの? 

ヨガは筋トレの代わりになる? この疑問については、イギリスのヨガ講師、サンチャ・レジスターに詳しく訊いてみた。

ヨガは、筋トレの代わりになる?

レジスターいわく、それはあなたが実践しているヨガの種類や筋力をつけたい動機によるとのこと。

例えば、あなたのゴールが「運動を楽しみながら継続し、筋力をつけること」だとしたら、ヨガでその要件を満たせるし、実際に筋トレの代わりとして十分に機能するヨガもある。ヨガで、筋トレと同じ精神的なメリットも得ることはできる。でも、筋トレによる身体的なメリット(筋肉量の増加や強度の向上、骨粗しょう症のリスクを減少するなど)をとくに求めているのだとしたら、答えは少し複雑なものになる。

「ヨガと筋トレは、お互いにどちらかの完全な代わりになれるものではないと思います。多くの面で、お互いを補完し合うものです」とレジスター。「あなたの目標と、それをどのくらいの期間で達成したいのかにもよりますが、定期的にヨガを実践して筋肉や筋力を鍛えることは可能です。自分の体重を使ったり、腕立て伏せなどをヨガに組み込んで難易度を上げることもできますよ」

「この分野の臨床研究はまだ少ないですが、ヨギを含め、たくさんのアスリート選手やフィットネスの専門家たちがヨガをして筋力が向上したと報告しています」とレジスター。

筋力を付けることだけが目的なら、もっとも効率的で適応性が高いのはヨガでなく筋トレ。筋トレには、ウェイトの重量を徐々に上げられる柔軟性があり、常に筋肉に負荷を加えられる。筋トレの経験が浅くても誰もがすぐに始められ、小さな筋肉群にアプローチすることもできる。一方、ヨガで実践する自重を生かした筋トレは、負荷の調整が難しい。経験が浅ければ、最初のうちは取り組めない特定の動きもあるため、筋トレに比べると、筋力の成果を感じられるまで時間がかかるかもしれない。

「とはいえ、ヨガは筋肉の修復を早め、筋肉痛を和らげ、柔軟性を向上し、怪我を予防します。これらはすべて、筋トレの効果を支える重要な要素です」と話すレジスターは、ヨガと筋トレを両方行うことを勧めている。「ですが、なによりも大切なのは、あなたが好きで楽しいと思える運動をすること。どんな目標であろうと、これが継続と達成へのカギです。あなたの幸せやウェルビーイングにも、いい影響を与えてくれるものになるでしょう」
 
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: ABBI HENDERSON Translation : Yukie Kawabata



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川畑 幸絵
翻訳者

短大卒業後バンクーバー、メルボルンで2年留学した後、外資系客室乗務員として勤務。2018年に退職後、翻訳者としてフリーランスに転身。アメリカで統合栄養学を学んだ経験もあり。