「加圧トレーニング」 と聞いて何を思い浮かべる? 圧をかけるなんてキツそう、自分には無縁のトレーニングかも......と感じている人も多いのでは? 今回は加圧トレーニングのメリット・デメリット、トレーニングを行う際の注意点などを加圧インストラクターの川野真介さん(@kawano.shinsuke)に伺った。(以下、「」内・川野さん)


加圧トレーニングとは

「加圧トレーニングは日本発のメソッドです。専用の加圧ベルトで血流を制限&解放することで、普段使っていない毛細血管にも血が行き届き、軽い負荷でも筋肉はハードなトレーニングをしたときと同じような状態になります。そして脳のホルモン中枢を刺激し、成長ホルモンの分泌が促進されます。

つまり、従来のウエイトトレーニングなどでは高い負荷によってしか得られなかった効果を、軽い負荷の運動で、そして短時間で得ることができます。しかも実際に重い負荷をかけているわけではないので、筋肉組織が破壊されることが少なく、関節や靭帯にかかる負担が軽く済みます」

加圧トレーニングのメリットは?

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Bilgehan Tuzcu//Getty Images

①ダイエット効果

「加圧トレーニングを行うと、増大する成長ホルモンによって太りにくい体になります。またトレーニングによって筋肉が増えると、基礎代謝が向上し、脂肪が燃焼しやすくなります。ここに関しては普通のトレーニングと一緒ですが、それを短時間でできるのが加圧トレーニングのよさです」

②血行促進

「加圧と除圧を繰り返すことで、血管の弾力性がアップします。血行がよくなり血流が増えるので新陳代謝が活発になって、冷え性や肩こりの不調が改善することも期待できます」

③回復力アップ

「加圧トレーニングを行うと骨折や肉離れ、捻挫などのケガからの回復が早くなると言われています。個人差はもちろんありますが、成長ホルモンによって筋肉や骨の修復力が高まると考えられているからです。

骨の中には、“破骨細胞(はこつさいぼう)”と“骨芽細胞(こつがさいぼう)”とがあり、“破骨細胞”が古くなった骨を溶かし、“骨芽細胞”がカルシウムなどを付着させて骨を造りながら元通りに修復していきます。このように骨は常に生まれ変わっています。成長ホルモンはこの“骨芽細胞”発生のサイクルを早めてくれるんですね」

④筋力アップ

「軽い負荷で高い効果が得られるので、トレーニングが続けやすいし、効率よく筋力アップができます。ウエイトと違い、低負荷でケガをしにくいところから、老若男女どなたでも実践できるという特徴もあります」

⑤若返り・美肌効果

「加圧トレーニングは、成長ホルモンの分泌を促進させると言われています。成長ホルモンは体の修復を促すと共に、肌のツヤやハリの向上の効果があります。

一週間、実際に妻を被検体にして実験したことがあります。強い圧ではなく、中くらいの圧で、毎日やってみました。一週間のトレーニング前と後で、肌にパックをしてみたのですが、吸収率が大きく変わったことを実感しました。加圧をやってる人は若々しい人が多い印象です」

加圧トレーニングのデメリットは?

①貧血症状のリスク

「血流を制限した状態で行うトレーニングなので、普段の生活で貧血になりやすい方はまずはトレーナーに相談してみてください。慣れない方は片腕にベルトを巻いただけでも倒れてしまう可能性があります。必ず体験で、片腕から、その後に両腕と段階を踏んでトライしてみてください」

②点状出血のリスク

「加圧ベルトを巻いたところから手首や足首までに起こる皮下出血のことを点状出血といいます。腕脚の付け根にベルトをつけて締め付けると、血液の戻りが制限されるため腕や脚に送り込まれた血液が充満し、毛細血管のすみずみまで血液が行き渡るようになります。それが点状出血であり、皮膚に細かな赤い点々として見られます。タバコを吸っていて血管が細い方や、元々血管が弱い方は毛細血管が切れて血液が外に漏れてしまうんです。数日で次第に消失するので心配はいりませんし、トレーニングを重ねていくうちに血管が鍛えられ、出血が起こらなくなっていきます。

特に女性は夏場や結婚式などで肌を露出するような服装をする場合は、トレーナーに相談するべきでしょう。普段出ないという方も、前日の睡眠不足や体調不良などの理由から発症する場合もあります」

③眠気

「個人差がありますが、加圧トレーニング後に抗えないような眠気に襲われる人もいます。激しい運動時の体は“交感神経”により緊張状態に包まれます。終わって解放されると“副交感神経”が働きリラックスした状態に。加圧トレーニングは短時間・低負荷のトレーニングではありながら、ウエイトトレーニング同様、激しい運動をしたときと同じ状態となるわけです。

また、副交感神経が優位になるとき、リラックス状態になり、胃液や唾液の分泌も高まり血管が拡張し手足が温かくなります。眠くなる人は本当に眠くなってしまうので、加圧トレーニングの直後は運転や遠出を避けた方がいいかもしれません」

加圧トレーニングを控えた方がいい人は?

下記に該当される方は原則禁止となります。

・お医者さんに運動を止められている方
・飲酒後の方(前日の飲酒は問題ないですが深酒はさけてください)
・妊娠中の方

以下の方は医師の診断書をお願いする場合もあります。

・高血圧の方
・高脂血症のある方
・糖尿病の方
・血液疾患の方
・静脈瘤の方
・悪性腫瘍のある方
・骨折、脱臼、肉離れ、骨粗しょう症の方
・皮膚疾患のある方
・安静を必要とする方
・体に異常を感じている方
・急性疾患、化膿性疾患、むくみや痛みを感じる方、脳障害のある方

加圧トレーニングは自宅でもできるの?

「市販で加圧ベルトみたいなものが売っています。初回はトレーナーに見てもらい、その後は自身で行うことを推奨するようなものもありますが、基本的には自宅ではやらないことをおすすめします。血流を制限する特殊なトレーニングなので、貧血等で倒れるリスクも伴うためです。貧血はそのもの自体が怖いのではなく、貧血になったときに倒れてケガをするリスクが危険なのです。有資格者の元でのトレーニングが安全でしょう」

加圧トレーニングの効果を最大に引き出すための食事法は?

・食後1~2時間後はトレーニングを控えること
・加圧トレーニング後30分以内に食事はしないこと

「食後1~2時間後は、食べ物の消化をするために胃腸に血液が集中している時間帯です。そのタイミングで全身の筋肉に血液を運んでしまうと、消化不良を起こしたり、気分が悪くなる可能性があります。加圧トレーニング前はバナナなど、消化しやすいものを摂取するのがおすすめです。

トレーニング後は血流がよくなり吸収率も上がるので、食事は30分ほどおいてから摂るのがベターでしょう。脂質や炭水化物の摂り過ぎは控え、タンパク質中心の食事を心がけましょう。タンパク質が足りていない時は、プロテインで補ってあげるのもいいかと思います」

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川野 真介
加圧インストラクター/ 日本ストレッチング協会認定 ストレッチングインストラクター(JSA-CSI)

30代から始めた格闘技で怪我やそのリハビリ、減量、ボディメイクの経験を通じて人体の可能性に強い興味を抱き、
2009年から加圧トレーナーとして活動。並行してコンディショニングストレッチ専門のトレーナーとしても活躍。2019年に川野加圧を独立開業後に加圧トレーニングに加え、スタティックストレッチを基盤にした独自の整体美容ストレッチで著名人から一般層まで幅広い支持を得ている。 

インスタグラム:@kawano.shinsuke

ホームページ:kawanokaatsu.com/trainer/

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Aoi Nakashima
エディター

アシスタントエディターとして、主にSNS周りを担当。ウィメンズヘルスを一緒に作るコミュニティー、Fit Girlsのコミュニティリーダーも担う。セレブ・ファッション・フードなどのカテゴリーの中で、トレンドを日々リサーチし、投稿や記事へとつなげる。特技は20年続けた硬式テニス、最近はランニングとボクシングにも夢中。座右の銘は“一日一幸”♡