近年陰ヨガブームが起こり、その人気が広まってきた。ストレスや疲労、燃え尽き症候群などが増加していると言われる中、体を落ち着かせ、神経を落ち着かせ、固くなった筋肉組織を伸ばすことができるヨガプラクティスは、ハッピーライフへの第一歩かもしれない。イギリス版ウィメンズヘルスより詳しく見ていこう。
陰ヨガって何?
陰ヨガはゆっくりと行うヨガスタイルのこと。ポーズを3-5分間キープさせる。陰ヨガは古代ヨガプラクティスの現代アレンジで、1980年代にカリフォルニアで発祥したとされる。
ポーズを深めるために、プロップ(補助具)でサポートし、リラックスし伸びているところに呼吸を送りながら重力に身を委ねる。心身に効果をもたらすことが目的で、“ナディー”と呼ばれるものを刺激する。ナディーは中国医学でいう経路に似たもので、体内のエネルギーや水、空気、血液、体液などを運ぶ通路だと考えられている。
陰ヨガは誰にでも行えるものだけれど、「体の特定部分に過度な可動性がある人や、関節周りにスペースが多くある人は注意が必要です」と、Loup Yogaの創設者兼ヨガ指導者のルイーズ・デ・メンソン氏は話す。「エネルギッシュな効果を得るために体をフルに使う必要はありません。安全性を確保する道具などで支えるようにしてください」
陰ヨガのメリット
・ストレスや不安を減少
・マインドフルネスの促進
・関節の動きを改善
・柔軟性を改善
・固まった筋肉を伸ばす
・深い落ち着き感の促進
「陰ヨガはヨガのポーズと、エネルギーの流れ(経路)という中国医学理論の素晴らしい融合です」とデ・メンソン氏。「陰ヨガのメリットは体内を流れる特定のエネルギーの通路を刺激することで得られます。近年の多忙な生活によってエネルギーの流れは崩れがちで、中国医学ではエネルギーの“停滞”や“枯渇”と解釈されています」
「これは不眠や無気力、疲労感やめくるめく思考、体の痛みなどさまざまな症状に現れます。エネルギーの通路に目を向けてバランスを整えると、より落ち着いた日常生活が送れるようになるでしょう」
また、呼吸やポジティブ思考を通して、不快感を克服したり、ストレスや不安を軽減させる驚くべき瞑想法でもあるそう。
陰ヨガではかなり長い時間、集中してポーズを維持するための呼吸法を必要とし、また柔軟性や関節の可動性の向上も感じられるようになる。
そのためサイクリングやランニング、その他筋肉を縮めるエクササイズと一緒にすると大きなメリットがある。
「体が硬くて詰まっている場合、ただ筋肉を伸ばすだけでなく、筋膜に働きかける陰ヨガは変化をもたらしてくれるでしょう。もし体がかなり固まっているなら、いくらでも筋肉は伸ばせますが、柔軟性はそんなに変化しないでしょう。筋膜に目を向けゆっくりとリリースしていくことで、筋肉が動いたり伸ばしたりできるスペースが生じます」とデ・メンソン氏は説明する。
そのゆっくりとしたペースのおかげで、どんなに小さな動きでもポーズに変化が起きることや、どのようにしてすべてが一体化していくかなど、自分の体について多くの気づきを感じることができる。
陰ヨガでどうやって気分が落ち着く?
活性化した状態からリラックスへと導いてくれると有名な陰ヨガは、実施した後に気分が落ち着くと言われている。でも、体内では実際何が起こってるの?
「ヨガはチャイルドポーズやシャバーサナなどのポーズや呼吸を通して副交感神経系(“安静と消化”に対応している)を活性化させます」と話すのは、ヨガインストラクターでThe Human Methodの創設者、ナヒド・デ・ベルジオン氏。
「ストレスを感じたとき、体はコルチゾールというホルモンを分泌します。このホルモンによって私たちは危機的状況に向かっていけるようになります。残念ながら、ライオンに追いかけられるのと、上司がイヤミなメールを送ってくるのでは、体はそのストレスレベルを区別をすることができません。つまり、多くの人が日常ベースでコルチゾールで溢れているかと思います。これが神経システムの酷使につながり、疲労や健康障害をもたらしてしまいます」
多忙なスケジュールの中で陰ヨガの時間を確保することは、ストレスからリラックス状態へと体をスイッチさせるのに必要な強壮剤となりうるだろう。
陰ヨガは体のどの部分にフォーカスするの?
陰ヨガは主に下半身を中心とし、あおむけや座位のポーズを行う。ほとんど動きを必要としないスタイルで、ヴィンヤサやアシュタンガ、ハタヨガなどのよりダイナミックなプラクティスと一緒にできるようになっている。
「陰ヨガは静かで瞑想的なプラクティスで、体と呼吸に意識を向けていきます」とデ・メンソン氏は説明する。
「長時間じっとして特定のポーズをとることで、大幅に自律神経の変化が生まれるでしょう。これは昨今の多忙な日常生活においてはなかなか難しいことだと思います。疲労を感じたり、神経が過敏になっている状況から抜け出し、回復や若返りにつながるでしょう」
陰ヨガとリストラティブヨガは同じ?
そうではないそう。体の不調を健康的に回復させる目的としたリストラティブヨガとは異なり、陰ヨガは、筋肉を包む皮膚の下にある結合組織ともいう筋膜のストレッチを目的としている。
どちらもリラクゼーションや呼吸にフォーカスするものの、陰ヨガは激しいストレッチで息を吐き出すことが要求され、心地よさを感じないこともあるそう(とはいえ決して痛みを感じるべきではないので、もし痛みを感じたらすぐに中断しそのポーズはしないようにしよう)。
陰ヨガはどこから来たの?
何千年前に発祥した他の流派もある一方、陰ヨガに関しては1980年代にカリフォルニアで始まった。創始者は一般的にポーリー・ジンクだと考えられており、彼のスタイルはもっと道教ヨガあるいは武道のようなものでさえあったと言う人もいる。今日における陰ヨガは、ポール・グリリーによって創立された。
道教における自然界で二つの対照的なコンセプト、陰陽の考えをベースとしている。陰はスローで、安定、女性らしさなどを象徴する一方、陽はヴィンヤサやアシュタンガ、その他よりダイナミックな動きに見られるように熱く、活動的で男性らしさを表している。
体では、腱、靭帯、筋膜は陰。筋肉や血液は陽として考えられる。ゆえに陰ヨガでは筋膜を伸ばすことにフォーカスする。
陰ヨガするにあたって知っておくべき5つのこと
「陰ヨガクラスで素晴らしいのは、それが意外にもチャレンジングだということです!」とデ・メンソン氏。
1.心地よさを感じないこともある
「陰ヨガはヨガの中でも肉体的にもっともハードなヨガの1つだと思います。決して痛みを感じるべきではありませんが、ポーズは体の張りつめているところに働きかけるよう設計されているので、心地よさを感じないこともあります。そのため、とてもきついと思う場合もあります。筋力に働きかけるのではなく、感覚と調和し解放することを学んでいきます。身を委ねましょう」
2.プロップがかなり必要
ポーズも少なく、ブロックやブランケット、ボルスター(長くてチューブ状のクッション)などといった多くのプロップを準備する必要があるため、特に流れるようなヨガではない。
3.ポーズには違った名前がついている
陰ヨガにはサン・サルテーション(太陽礼拝)もなければ、サンスクリット語もない。このヨガはカリフォルニア発祥だということを思い出してほしい。その代わり、ポーズにはわかりやすい英語名がついている。バタフライ、キャットテイル、ドラゴンなど。
4.体が温まるわけではないので、重ね着を
一般的にペースの速いクラスに比べ、長袖に半袖を重ねたりして、服を多めに着ている人が多い。陰ヨガは静かな動きで、長めにポーズをキープするので体温降下の原因になる。靴下やロングレギンス、上着などが望ましい。
5.陰ヨガ後に激しい動きはやめた方がいい
プラクティスの後はちょっと頭がぼーとするかもしれないことは知っておこう。時に“陰ブレイン”ともされ、もっともリラックスした状態なので、その後あまり激しいことは控えた方がよさそう。
「陰ヨガでは禅を感じます。慣れてくると神経系が変化するのを実感するようになるでしょう」とデ・メンソン氏。
避けるべきこと
ヨガであれ別のものであれ、大抵のプラクティス同様に多くの人が無理してうまくやろうとする。ポーズを深くすればするほど、よくできていると思ってしまう。
ところが、「感覚を感じることができるのであれば、体が準備できていない場所へ無理に押しやる必要はありません」とデ・メンソン氏。「陰ヨガは、自分の体と心に余白を見つけるためのゆっくりと着実なプロセスです」
クラスがスローだからといって、それが簡単ではないことに驚く。筋肉をこわばらせずに、ポーズをしながら呼吸をする準備をしなくてはいけない。
「残念ながら、呼吸を止めることと体にストレスを感じさせることは陰ヨガには有用ではありません」とデ・メンソン氏。「このプラクティスを通してのよい学びは、解放すること。流れるような呼吸と心を落ち着かせることが大切です! 感覚があることが“悪い”という概念にとらわれすぎず、自分が感じることに興味を持って探求してみましょう」
Youtubeで実践。陰ヨガレッスン動画10
自宅にいながら快適にオンラインレッスンを実践してみよう。寝室でオームを唱えながらでも、リビングやキッチンでトライしてみてもいい。動画を実践して、究極にリラックスしてみよう。
お尻の可動性アップ。12分陰ヨガクラス
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セルフケアは単なる流行語ではない。それは自分の心や体、精神に目を向けること。コヤ・ウェブによる30分ヨガクラスで自分をいたわろう。
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このクラスでは後屈、前屈、側曲げ、ひねりなどすべてを少しずつ取り入れていて、固まった筋膜をリリース。プロップを持っていないまたは使わない場合でも、各ポーズでどうすべきか教えてくれる。
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Rebecca Gillam Translation: Asami Akiyama