膝を胸に抱き寄せる「アパナーサナ」は簡単そうに見えるけれど、その名前には「生命力を上昇させる」という意味があり、生命エネルギーそのものである「プラナ」(中国語ではチ、マウイ語ではマナ)と反対の極性を持つと言われている。
つまり、「プラナ」が生命エネルギーであるのに対して、「アパナ」は体からゴミや毒素を取り除くエネルギー。そう考えれば、このポーズが英語で「ガス抜きのポーズ」と呼ばれるのにも納得がいく。
アパナーサナは、お通じを良くするだけでなく、関節を柔らかくするのにもピッタリのポーズ。立ったままつま先にタッチしようとすると背骨が過度に丸まってしまう人も、これなら無理なく腰の筋肉が伸ばせる。その方法をイギリス版ウィメンズヘルスからご紹介。
膝を胸に抱き寄せることのメリットは?
・腰のストレッチになる
・脊柱起立筋が伸びる
・骨盤下部がフラットになり、安定しやすくなる
・ 過度の脊椎前弯症、坐骨神経痛、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア(ヘルニアの方向次第)に関連した筋けいれん(こむら返り)が減る
・上行結腸と下行結腸の状態を整え、血行と便通を促進する(よってガス抜きになる)
膝が抱き寄せられないのはナゼ?
筋肉の問題
1.筋量
筋量が可動域を狭くすることもある。
・大腿四頭筋が盛り上がっていると、膝が胸にピッタリつかない。大腿四頭筋が圧迫される場合には、膝を広めに開くといい。
・腹部が突き出ていると、膝を胸に近づけるのが難しい。この場合も、膝をできるだけ広く(脇の下まで)開くのがベスト。
構造上の問題
1.背骨がねじれている
本来は曲がるだけの腰椎が、膝を引き寄せたときにねじれたせいで怪我をすることもある。このポーズに入る前に、背骨がまっすぐ伸びていることを確かめて。
2.股関節が圧迫されている
大腿骨(太ももの骨)の上端にある骨頭が、寛骨臼(かんこつきゅう:ソケット部分)に深くはまりすぎているのかも。その結果、膝を胸に抱き寄せるとすぐに大腿骨の骨幹部(長い部分)が寛骨臼(かんこつきゅう)のへりに当たり、それ以上動かせなくなる。
また、大腿骨の骨頭が肥大して寛骨臼(かんこつきゅう)にきつくはまっているため、脚が深く曲がらないケースもある。
いずれの場合も、寛骨臼(かんこつきゅう)で引っかかっているのをピンポイントで感じるはず。これは身体構造上(骨)の限界なので、どうにかして変えられるものではない。もちろん、この問題を回避する方法はある。例えば、骨盤を傾けると寛骨臼(かんこつきゅう)のスペースにゆとりができる人もいる。とはいえ、これは人それぞれ。練習を重ねるうちに体の状態が感じ取れるようになるはず。人間の骨格は完全に左右対称ではないため、左右の脚で曲がり具合に差があることにも気付くはず。
3.背骨の位置
どれだけうまく膝を抱き寄せられるかは、腰椎と骨盤の位置によっても変わる。反り腰の人は、仰向けで膝を引き寄せたときに腰が床から浮きやすい。
よくあることとはいえ、それを何とかして避けないと狙った場所(背中の筋肉)が伸びているのを感じない。背骨の中ほどを床にピッタリとつけたまま体を動かし、筋肉が背骨に沿って伸びるポジションを見つけてみよう。
膝を胸に抱き寄せるには?
まずは片脚のアパナーサナ。
仰向けになって片脚を伸ばし、反対の膝を胸に抱き寄せる。背骨をできるだけ自然でフラットな状態にして、首を伸ばす。
腹部や大腿四頭筋が邪魔をするなら、両脇の下で膝を抱えて。
まずは右脚で上行結腸を、次に左脚で下行結腸を圧迫してマッサージすると消化器官に効果的。
続いて、両脚のアパナーサナ。
背中と首を伸ばし、両膝を胸に抱き寄せる。
腹部や大腿四頭筋が圧迫されるようなら、膝を開いて快適なスポットを見つけよう。
膝を広く開くと、鼠径部とハムストリングスの内側もストレッチできる。脊柱起立筋が伸びている感覚をキープするには、おでこを膝に近づけて首の下にスペースを作るのがポイント。
モディフィケーション
尾骨が当たって痛い人は、丸めたタオルや薄いヨガブロックを仙骨の下に置き、おでこを膝に近づけるといい。
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Emma Pritchard Translation: Ai Igamoto