若い頃に書いていた日記には、初恋の相手の情報や思春期ならではの悩みがきっとぎっしり詰まっている。実は大人になっても、文章を書くことで多くのメリットが得られるって知ってた? 研究によると、ジャーナリング(頭に浮かぶことを紙に書き出すこと)には心を元気にする効果があるという。それが、「メンタルヘルス向上のためのジャーナリング」というもの。シンプルで意義のある習慣の一つであり、ストレスや不安、うつ病のマネジメントにも役立つと言われている。

「ジャーナリングは、自分の思考や感情、考えを整理するためのパワフルなツールであり、自己認識、自己発見、自己成長の向上にもつながるものです」と説明するのは、ニューヨーク市に拠点を置く臨床心理士のジェイシー・ウィトマー・ロペス。「私の実務経験では、定期的なジャーナリングがどのように人々の人生を変えるかを目の当たりにしてきました」

ジャーナリングにもいろんな種類がある。健康のためのフィットネスジャーナルや心を穏やかにする感謝日記、旅の思い出を記憶するトラベルジャーナルを趣味にしている人もいる。今では移動中もマインドフルでいられるようにサポートしてくれるジャーナリングアプリもあるとか。今回は、ジャーナリングがメンタルヘルスにもたらす利点とその具体的な始め方、インスピレーションを得るためのプロンプト集を専門家たちが共有してくれた。アメリカ版ウィメンズへルスから、さっそくみていこう。

ジャーナリングの一般的なメリット

ありのままの想いを書き出す特別な場所が持てる以外にも、ジャーナリングには数々の利点がある。学術誌『Annals of Behavioral Medicine』に掲載された研究は、ジャーナリングがストレスの多い状況を乗り越えるのに役立つことを証明した。また、大学生を対象に行った別の研究では、ジャーナリングで自己効力感が上がることが明らかになった。つまり、自分を信じる力が身に付いていくという。さらに書くことは、子どもの行動介入としても研究されているため、子どもに文章を書くことを奨励するのは悪い考えではないとのこと。

ジャーナリングの一般的なメリットは以下のとおり。

  • インスピレーションを得られる
  • クリエイティブな表現力を磨ける
  • 目標管理に役立つ
  • フリーライティングを楽しめる
  • 内省できる
  • アイデアを生み出せる

ジャーナリングのメンタルヘルス上のメリット

一般的なメリットはさておき、ここからは、ジャーナリングがメンタルヘルスにどういった影響をもたらすのかを具体的にみていこう。

1. 感情から自分のことを学び、感情の処理がしやすくなる

「一日の出来事を振り返ることは、いいことも悪いことも含めて、脳が感情を処理したり整えたりするのに役立ちます」と話すのは、フロリダ州オーランドに拠点を置く認定セラピストのマーク・キャンベル。例えば、最近恋人に振られて拒絶感を感じていたり、仕事で燃え尽きているとするなら、自分の気持ちをありのままに書き出し、それを自分で読み返すことで、つらい感情の処理がしやすくなるという。他にも、ジャーナリングは自分が無意識に繰り返している言動パターンを認識することができたり、今をもっと受け入れられるようになったり、自分自身に対する共感力を深められるようにもなるとのこと。

2.  トラウマからの回復に役立つ

ロペスいわく、ジャーナリングはトラウマとなった出来事を処理したり、癒える力に大きなインパクトをもたらしてくれるもの。「研究では、書くことがうつ病や不安、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状を和らげることを示しています」とロペス。「そのことについて考えるだけでなく実際に書き出してみることで、過去の出来事に対する認識や捉え方を変える責任を自分自身が持てるようになるでしょう」。ただ感じることを書くだけで、トラウマが与えるメンタルヘルスへの影響を消せるものではないが、ジャーナリングはセラピーや治療と併せて実践する価値が高い習慣なんだそう。

3.  不安やうつ病の対処法として有効

アメリカ心理学会(APA)によると、不安やうつ病はアメリカでもっともよく取り上げられるメンタルヘルスの問題の一つ。もちろん、書くことがこうした症状を一晩で治せるわけではないが、最近の研究によると、ジャーナリングはうつや不安の症状を和らげ、時間と共に立ち直る能力が向上する。生きる意味を見出すのに苦労していたり、なにに対しても興味が湧かなくなっている場合にも(どちらもメンタルヘルスの問題に直面したときに経験することが多い)、ジャーナリングが有益であることを複数の研究が示している。

4.  治療の進捗管理に役立つ

今セラピーを受けているなら、ジャーナリングは日ごと、週ごとの自分の様子や変化を観察するのに便利であり、キャンベルいわく、自分がとくに改善したいと望んでいる特定の行動にコミットしやすくなるという。「ジャーナリングのプロセスを通じて、過去に書いた文章から過去の自分を振り返ることができ、自分のパターンに気付くことができるでしょう」とキャンベル。

また、ジャーナリングはセラピーのセッションで話した内容を正確に振り返るために活用することもでき、それに対する自分の感情を整理するのにも役立つとロペスは付け加えている。

もう一つの利点は? いつか、自分が書いたことを振り返って、そこから自分がどれだけ成長したかを祝福できること。

5.  自分に対する思いやりが深まる

精神的な問題を抱えている場合にも、単に気持ちが滅入っている場合にも、ネガティブなセルフトークや自分に対する羞恥心、恥を抱いてしまうのはよくあること。自分にやさしくすることは難しいかもしれないが、専門家いわく、自分を思いやる練習が後で大きな効果を発揮するという。学術誌『American Journal of Speech-Language Pathology』に掲載された最近の研究では、マインドフルネスの実践としてジャーナリングを毎日続けると、自分に対する思いやりが深まっていくことが証明された。また、看護師を対象に行われた別の研究でも、ジャーナリングによって自分の気持ちに対する共感力が増し、仕事の疲れを管理するのに役立つと結論付けられている。


メンタルヘルス向上のためのジャーナリングの始め方

woman sitting on a meadow writing down something in her notebook, partial view
Westend61//Getty Images

幼少期の日記に心情を吐露したことがない人も、心配することはない。ジャーナリングとは、単にスマホやノートに書き留めたり、特定のプロンプトに応えてインスピレーションを得るという程度であって構わない。

ジャーナリングのやり方に“正しい”も“間違い”もないけれど、キャンベルが言うには、個人的なプロセスであるべき。

「一番自分らしい方法でジャーナリングを始めることをお勧めします。紙とペンで書くのが好きな人は、そのスタイルで始めてください。メモアプリに入力するのが好きな人はそれで構いません。どちらがいいかわからなければ、両方のスタイルを試してみましょう。冒険心のある人は、ノートパソコンやタイプライターも試してみるといいでしょう」とキャンベル。

メンタルヘルス向上のためのジャーナリングは、完全にパーソナルなものであるべき。また、自分の人生の出来事をすべて記録しようとプレッシャーに感じたりする必要もない(あなたが望まない限り)

ジャーナリングを朝のルーティンに取り入れるにしても、寝る5分前にフリーライティングを楽しむにしても、まずはゆっくり始めることを専門家は勧めている。「ジャーナリングが初めての人は少しずつ始めていき、自分に寛容でいることを忘れないでください。初めはほんの数分ほどを書く時間に割り当て、その習慣が身に付いてきたら徐々に時間を増やしていきます。重要なのは、あなたが継続できるジャーナリングのやり方を見つけることです」とロペス。また、時間をかけてこの習慣を定着させるためには、自分のペースを守り、できるだけ簡単に取り組める方法で実践すること。

メンタルヘルス向上のための10のプロンプト

  1. 今日のハイライト(とくに素晴らしかった出来事)はなに?
  2. 今日落ち込んだ出来事はなにかあった?
  3. あなたが今直面している課題は?
  4. あなたが今感謝している人、場所、出来事は? それはなぜ?
  5. 最近、あなたにインスピレーションを与えてくれた人は誰? その理由は?
  6. 自分を誇りに思える3つのことはなに? その理由は?
  7. 今週、自分を大切にするためにできる(小さな)ことは?
  8. 自分に対して持っている制限的な信念は? その信念を変えるにはどうしたらいいと思う?
  9. 今困っていることを書き留めてみよう。そしたら、あなたの大切な人の目線でそれを読み返してみて。これについて、彼らならどんな言葉をかけると思う?
  10. もし、今の自分の精神的健康や幸福感の一部を変えられるとすれば、それはなに? 変えたいと思う理由は?

メンタルヘルスを向上させるジャーナリングにおいて肝になるのは、一貫性。どんなやり方で、どんなプロンプトや形式を採用するにしても、ジャーナリングを継続することで、あなたのメンタルヘルスはきっとあなたに感謝する。
 
※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: LEXI INKS Translation : Yukie Kawabata

Headshot of 川畑 幸絵
川畑 幸絵
翻訳者

短大卒業後バンクーバー、メルボルンで2年留学した後、外資系客室乗務員として勤務。2018年に退職後、翻訳者としてフリーランスに転身。アメリカで統合栄養学を学んだ経験もあり。