近年、体重や健康に対する意識が高まり、以前に比べてバランスのとれた食事を意識する人が増えている。実際に、「1日に消費できるカロリー」についてグーグルで検索している人の数はなんと、毎月10万人もいるとか。このことから、多くの人が1日に摂取できるカロリーの基準を求めていることが伺える。でも正直なところ、ネット上の矛盾したアドバイスを目にしたら、きっとあなたまで検索する前より混乱してしまうかも。その理由は、摂取できるカロリーの目安は個人差があり、年齢・身長・体重・身体活動レベル・基礎代謝などの要因によって変動し、誰にとっても共通するような万能な答えが存在しないから。しかし、英医療センターBupa Health Clinicsに勤務する臨床医のルーク・パウルス博士が言うには、1日に消費するカロリーの目安を自分で計算できる方法はいくつかある。

話を先に進める前に、これだけは注意して! 健康的なライフスタイルを送るには、カロリー計算をすることよりももっと大切なことがある。例えば、あなたが食べているものにはカロリーだけでなく、栄養もバランスよく食事に含まれているかどうか。カロリーを計算することで、かえってストレスや不安を引き起こしていないかどうかなど、メンタルヘルスにも十分気にかけていく必要がある。

だけど、カロリー(食べものや飲みものに含まれるエネルギー単位)がダイエットをするうえで有益な情報となることは確実。事実、摂取カロリーを抑えて減量を長期的に目指していきたい人に対してイギリスの国民健康サービス(NHS)は、カロリーを計算するように勧めている。1日の消費カロリーを理解していれば、成果もより早く出やすくなる。

今回は、便利な「1日の消費カロリーの計算式」の伝授に加え、1日の消費カロリーがなぜ毎日変動するのかを、パウルス博士がイギリス版ウィメンズヘルスに詳しく教えてくれた。

女性が1日に消費するカロリーは?

woman exercising wall ball
Hello Lovely//Getty Images

パウルス博士によると、平均的な女性が1日に消費するカロリーには、次の要因が関係している。

安静時代謝率 (RMR):「呼吸をしたり、血液を循環するなど、基本的な身体機能を維持するために、体が消費するエネルギー量(別名、カロリー)のこと。年齢や体重、性別によって異なり、一般的には、1日に消費する全体のカロリーの60〜75%を占めています」

非運動性熱産生 (NEAT):「ガーデニングをしたり、部屋の中を歩くというような、意図的な運動でない身体活動を行うために、体が消費するエネルギー量のことです。通常は、1日に100〜800kcalの範囲で消費されます」と、パウルス博士。

運動:ワークアウト中に体が消費するエネルギー量。

食事性熱産生効果(TEF):身体が「食べものを噛み、消化し、蓄える」ために消費するエネルギー量。

パウルス博士によると、これらをすべて合計したものが1日の総消費カロリーとなり、通常は1800〜2000kcalであるとのこと。そのため、国民健康サービスでは、平均的な女性の場合、1日あたり2000kcal前後での摂取を目指すように助言している。摂取カロリーより消費カロリーが多ければ、カロリー不足となって体重は減少し、消費カロリーより摂取カロリーが多ければ、余剰カロリーとなって体重の増加につながり、健康を保つためにはこれらのバランスをしっかりと意識することが重要である。

1日の消費カロリーを計算する方法

もっと具体的に計算したいなら、1日の活動をカテゴリーごとに分けるといい。「それぞれの活動は、運動による代謝(カロリー消費)の度合いを表す値、METs(代謝当量)で測定することができます」と、パウルス博士。普段やっている運動のMETs値は、グーグルで検索すればすぐに出てくる。ここでは、ごく一般的な運動のMETsをいくつか紹介しよう。

・早歩き (時速4.8〜6.5km): 4 METs

・筋力トレーニング: 7 METs

・テニス: 8 METs

・スキップ、またはランニング: 12.3 METs

休んでいるときや、じっとしているときのMETは1、活動が激しくなるほどMETsは高くなる。

パウルス博士式の計算法:METs × 3.5 × (体重) ÷ 200 = 毎分の消費カロリー

例えば、体重が73kgで、MET値が8のテニスを1時間プレイした場合の計算式は以下のようになる。

(8 × 3.5 × 73) ÷ 200 = 毎分10.2kcal。10.2kcal × 60分で、約613kcalを消費する。

体重が73kgで、1日中なにも運動をしなかった場合は、じっとしているときのMET値1を使用する。

1 x 3.5 x 73÷200=1.3kcal/分で、1時間あたり77kcal、もしくは、1日あたり1,848kcalを消費する。

1日の総消費カロリーを計算するには、どのような活動をしたにせよ、この計算法を用いて算出し、安静にしている時間や座っている時間の合計に加算する。

ちょっと面倒に感じた? それならパウルス博士も言うように、消費カロリーを簡単に計算することができる、オンライン上のカロリー計算サイトを見つけて活用してみるのもアリ。

でも、1日の消費カロリーが毎日変わるのはなぜ?

仮に2日間まったく同じ運動をして、まったく同じ食事をしたとしても、1日のカロリー消費量が同じになることはほとんどないという。「それは、あなたの体が毎日同じ方法で食べものを消化することがないからです」と、パウルス博士。「例えば、筋肉がタンパク質というかたちでより多くのエネルギーを必要とする場合は、そうでないときより多くのカロリーを消費します」

なお、身体組成も関係しており、これも常に変化しているとパウルス博士は補足した。「脂肪に比べ、筋肉の量は常に変化するのですが、これが1日のカロリー消費量に影響を与えます。筋肉は脂肪より代謝が高いので、筋肉が多い人は、少ない人より多くカロリーを消費することになります。筋肉は、脂肪よりも速い速度でカロリーを燃焼します」

性別は、1日の消費カロリーにどう影響する?

women running together on remote trail
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「一般的に、女性は男性より消費するカロリーが少ないです」 とパウルス博士。「だから同じ体格をしている男女でも、男性のほうが生まれつき体脂肪率は低く、筋肉は多い傾向にあります。前述した通り、筋肉は脂肪よりも代謝が活発なのです」。とはいえ、これは一般的な事実であり、必ずしもすべての男性が、あなたより1日に消費するカロリーが多いとは言い切れないことも忘れないで。

最後にあなたへのアドバイス

「体重は、健康の重要なファクターではありますが、ほかのライフスタイルの改善と一緒に取り組んでいくべきです」と、パウルス博士。「仮に健康的な体重をしている人でも、過度な飲酒や喫煙習慣を持ち、十分な睡眠をとれない生活を送っていては、健康だとはいえませんよね。健康とは、さまざまな要素から成り立つものであり、あらゆる要素へ気を配ることが大切なのです」

最後に私たちからのアドバイス。やっぱり、カロリー計算だけにとらわれるのはよくない。例えば、筋肉をつけるのに十分なカロリーを摂取できているか、体重を落とすために、摂取カロリーが消費カロリーを超えていないかを確認する目的で、ときどきカロリーを計算するのはよいこと。でもそれが、精神的にも身体的にも悪い影響を与え始めたと気づいたら、カロリー計算から速やかに休息をとるように。

※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: BRIDIE WILKINS Translation : Yukie Kawabata