ダイエットに励む女性なら聞くだけで興味が湧きそうな「プロテインダイエット」。

その効果や作用に関しては気になるところだが、そもそもプロテインダイエットとはどういったものなのか、パーソナルトレーナーの林 健太さんに聞いてみた。

「プロテインダイエットは直訳すると、日常食にタンパク質を摂りましょうということなので、何ら特別なことではありません。意識的にタンパク質を摂っていない多くの方は不足しがちな栄養素なので、もしかすると多くの方がこのプロテインダイエットを必要とするかもしれませんね。痩せる痩せないの話ではなく、ご自身の健康をステップアップするための手段と捉えていただくといいかもしれません」

そもそも英語のdiet(ダイエット)とは日本語にすると日常の食事という意味で、決して減量するという意味がメインではない。しかし、〇〇ダイエットと名付けるだけで多くのダイエッターが飛びついてしまう。 情報が多く飛び交う中で、私たちは適切で正しい情報を自分自身でフィルターにかける能力と判断力が必須だ。

今回は、プロテイン(タンパク質)をダイエットに取り入れることのメリットや、おすすめの食材、そして注意点について解説する。

①プロテインダイエットの定義とは?

冒頭でも説明したように、日常の食事でしっかりとタンパク質を摂ること自体がプロテインダイエットだが、「プロテインを飲んで痩せる方法」と思われている方も多いかもしれない。

特に多いのが食事の置き換えとしてプロテインを利用することで、低カロリーに抑えながらも重要なタンパク質だけはしっかり摂れるため、体重減少に効果があると唱っている商品も多い。

「最近ではタンパク質だけでなく、適度な糖質や脂質も含まれた食事代替えプロテインとも言われるミールリプレイスメントなども簡単に手に入るようになりました。それらをうまく使えばもちろん減量の大きな手助けになりますし、さらには忙しくて食事に時間を割けないときなどは重宝するでしょう」

ダイエットと言ってもバランスの取れた食事をしっかり食べることが重要なことは既にご承知の通り。プロテインと食事の併用こそが真のプロテインダイエットと言える。

②プロテインがダイエット(減量)に効率的な理由
プロテインがダイエットに効果的な理由
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「タンパク質は体の材料になる重要な栄養です。車に例えるなら炭水化物がガソリン、脂質がモーターなどの潤滑油とすれば、タンパク質は車体やエンジンそのものとも言えるでしょう」

そのタンパク質が不足してしまうと体はいつまでたっても進歩しない。すなわち体の基礎代謝の大部分を占める筋肉や内臓も発達しにくくなるので代謝も上がりにくい。

痩せるには代謝を上げて痩せやすい体を作ることが重要。つまりタンパク質が不足すると、ダイエットどころか痩せにくい体になっていってしまう。

さらに、体が消費するエネルギーの一部は食事を摂ることで起こる代謝にある。食事後の消化、吸収という過程で体は熱を生み出す。

この生み出される熱量は栄養素によって異なるが、糖質や脂質は摂取エネルギーの10%にも満たないのに、タンパク質は約30%と言われている。

つまり、高タンパク質な食事は食後の代謝も上げてくれると同時に、消費エネルギーの増加にもつながるため、必要十分なタンパク質を摂取するだけでも、減量に大きく近づくというわけだ。

③プロテインダイエットの方法
プロテインダイエットの方法
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タンパク質が食事で重要なことを理解できたところで、具体的な方法に関しても林さんに聞いてみた。

「まずは一日の食事を通してタンパク質がどれくらい摂れているか計算してみましょう。加工食品は栄養成分表示が義務化されているので一目で分かるようになっています。プロテインドリンクやパウダーが必要かどうかは、その後から判断する方が賢明です。むやみやたらにプロテインを飲む必要はありませんし、まずは食事からのプロテインダイエットを始めることをおすすめします」

特に日常活動が多く、食事量も多い人は不足の心配が少ないが、減量目的のダイエットに取り組む人は食事量も減っているので注意が必要。

プロテインダイエットという名前に惑わされてドリンクやパウダーについつい手を出してしまいがちだが、そもそもプロテインは食品に含まれる栄養素の一つ。

肉や魚、卵や大豆製品を普段からしっかり摂っていればプロテインに頼る必要はない。よく噛むことで前述の食事由来の熱産生も高くなる為、ドリンクやパウダーに頼るよりも質の高いプロテインダイエットに取り組めるといえる。

④プロテインダイエットにおすすめの食材

食事から必要なタンパク質を摂取すると言っても何をどれくらい食べればいいのか悩む方も多いはず。

そこで林さんにおすすめの食材やその目安を聞いてみた。

「食材にもよりますが、肉や魚に含まれるタンパク質は重量の約15~25%です。コンビニで買えるサラダチキンが約120グラム程度で、タンパク質量が25グラム程度なので、基準は分かりやすいと思います。タンパク質の目標量は、食事摂取量や生活習慣などの関係から設定される為、明確な目標値は定められていませんが、健康維持の為には一食最低でも100gの肉や魚を食べ、15~25gのタンパク質を摂るように心掛けてください」

さらに食材としては肉や魚の中でも脂質の少ないものがおすすめだという。

肉であれば牛や豚よりも鶏、魚であればマグロやタラなどを選ぶようにしてください。日常の食事でどうしても過剰になりがちな脂質。タンパク質を摂りたいからと脂身の多い肉や魚を食べていては、さらなる過剰摂取を引き起こし肥満の原因になる。

他にもイカやタコ、貝やエビなどの魚介類は高タンパク低脂質。鶏むね肉の一択だった人は、バラエティに富んだ食事に切り替え、様々な食材からタンパク質を摂取することも、プロテインダイエットの重要な要素だと肝に銘じておこう。

⑤プロテインダイエットの注意点
プロテインダイエットの注意点
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「先述した通り、タンパク質の明確な摂取目標量は定められていませんが、推奨値としては体重1キロあたり1.0〜1.5グラム/日の範囲内と考えておくといいでしょう。(体重が50キロなら、摂取の目安は1日に50グラムから75グラム程度)」

「運動量の多い人はタンパク質が重要と思われていますが、ランニングや軽度の筋トレであれば上記の量でも十分です。もちろん適度な運動によるプロテインダイエットは長期的な健康を守るという意味でも非常に重要です」

さらに林さんはタンパク質だけでなくビタミンの重要性にも目を向けてほしいという。

特にビタミンB群はエネルギーを作り出すために欠かせない栄養素で、中でもビタミンB6はタンパク質の代謝に大きく関わっています。

B群はそれぞれ相関関係にあるので、どれか一つを摂るよりも複合体で摂ることが重要。正しいダイエットを行っていれば不足することは少ないが、間違ったダイエットで食事量が減っている人や、加工品やアルコールの摂取が多い人は要注意。

「正しいプロテインダイエットを行っていれば、ビタミン類も食事からしっかり摂れるはずです。万が一タンパク質はしっかり摂れているけれど、どうしても加工品頼りになってしまうという人は、ビタミンB群のサプリメントを活用することも一つの方法です」

プロテインダイエットはプロテインパウダーやサプリメントを飲むことかと思いきや、大前提の食事だけでも実現可能なうえに、ビタミンのサプリメントも大きなカギを握っているとは目から鱗。林さんのアドバイス通り、まずは日頃の食事でどのくらいのタンパク質を摂取できているのか、調べることからスタートしてみよう。

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林健太
NESTA公認トレーナー SIXPADオフィシャルトレーナー

 幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
 卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
 選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/