2024年3月1日(金)、エンパワメントメディア「COSMOPOLITAN」とフィットネス&ライフスタイルメディア「Women's Health」の媒体横断イベント、「Social Echo Club」が六本木 文喫にて開催された。

「Social Echo Club」は、SNSの投稿やコンテンツ制作など、日ごろからアクティブに情報発信をしているインフルエンサーとエディターが正しく学び、価値観をアップデートしていく場として発足した。記念する第一回目のテーマは「ジェンダー平等」。3月8日の国際女性デーを目前に、ジェンダー平等のあり方を考えるほか、SNSで社会的な発信をする意義と注意点についてのパネルディスカッションを行った。イベントには作家 アルテイシアさん、アイドルの和田彩花さん、臨床心理士・公認心理師のみたらし加奈さん、環境活動家の大野まゆさんを登壇者として招き、各媒体インフルエンサーとエディターが包括的かつ公平性のある情報発信について学んだ。

今回はその「Social Echo Club」の様子を、参加したインフルエンサーへのインタビューとともにご紹介。

発信者として知っておくべき「ジェンダー平等」の考え・価値観とは? 

a person holding a cell phone
Marisa Suda



イベント前半にはフェミニスト作家・ アルテイシアさんが登壇し「国際女性デイに考えたいジェンダー平等の在り方」についての講義が行われた。そこではジェンダー平等についての基本知識から「発信者」として気をつけたいことについての話があった。

フェミニズムとは、「性差別をなくそう」という考え方で、フェミニストは性差別に反対する人をさす(⇆セクシスト)

アルテイシアさんはジェンダー平等の考え・価値観について以下のように説明した。

「『男女はこうあるべき』という『型』を押し付ける社会だと、その型にハマらない人は『女なのに〜』『男なのに〜』と叩かれる。そういう社会ってみんなが生きづらいですよね。

だからこそ『ジェンダーによる偏見や抑圧をなくそう』『みんなが自分らしく生きられる社会にしよう』というのがフェミニズムの考え方です。

『みんな違って当たり前』であって、誰も排除されずにみんなが共生できる社会、個人それぞれの生き方や選択を尊重しようという価値観が、ジェンダー平等であり、フェミニズムの考えです」


「発信者」として誰かを傷つけないために
a group of people sitting in a room
Marisa Suda

現在フェミニズムは「第四波」と呼ばれ、学者や活動家だけでなく、SNSを利用して一般の女性たちが声を上げる時代になった。それによりジェンダーや人権についての意見や情報をより発信しやすい社会になった。しかしその反面、メディアやインフルエンサーなどの影響力が大きく、読者やファンはそれらの情報発信について冷静に目を向けている。そこで「発信者」はどのようなことに注意すれば良いのか。

何となく使っている言葉、無意識のうちに誰かを傷つけていませんか?

何気なく使われている「リケジョ」「女医」「女社長」や「女流棋士」「男性保育士」という言葉も、別の立場にある人には使われることは少ない単語です。アルテイシアさんはこれらは、「〇〇は◯◯であるだろう」というバイアス(=偏見)があるから生まれている言葉だと説明。

「例えば、料理が上手な女性に対して『女子力高いね』という発言を無意識にする人もいるかもしれませんが、ここにも「料理は女性がするもの」というジェンダーバイアスが含まれます」

ほかにも、見かけで判断をして発せられる「日本語上手ですね」という言葉も、褒めているつもりであったとしても、“日本語話者には見えない”と勝手に判断された当事者の多くは、そのたびにモヤモヤした気持ちになると言及。

このような無意識の言動をアンコンシャス・バイアス(=無意識の偏見や差別意識)と呼び、 それにより意図せず誰かを傷つけてしまうことをマイクロ・アグレッション(小さな攻撃)と呼ぶ。これを防ぐにはどのような点に気をつければ良いか。アルテイシアさんは3つの点を紹介した。

性別に結びつけず、そのまま言う
例)料理が上手な女性に対して「女子力高いね」ではなく「料理が上手ですごいね」と性差をつけずに伝える。

自虐めいた“冗談”
自分の容姿や体型について、場を盛り上げようと自虐ネタをいう人もいるかもしれません。いくら“自分は平気”だと思っていても、容姿に対するからかいを助長する可能性があることを忘れないで。

ルッキズム(外見至上主義 / 容姿差別)
体型や顔のつくりなど「変えられない見た目」にコメントするのはマナー違反。「痩せている=美」というルッキズムは根強く、それによる摂食障害など命に関わる問題である。だからこそ多様な美のロールモデルが必要。

アルテイシアさんは最後に、「差別は優しさや思いやりではなくなりません。知識が必要です」と語った。まずは知り・学ぶことではじめて誰かの立場になって考え、誰かを傷つけない行動ができるのではないか。

「自信を持って『フェミニスト』というワードを使いたい」参加者の声

「Social Echo Club」にはウィメンズヘルスからモデルやアクティビスト、ヨガインストラクターなど、影響力のある5人が参加。「発信者」として普段からフィットネスやウェルネスなどに関する情報発信をしている彼女たちはこのイベント経て何を考えたのか。


YUINAさん(アクティビスト・フィットネストレーナ)

a woman smiling in front of a sign
Marisa Suda

Q1. 日常で感じている偏見は?
フィットネス界においては、ルッキズムやボディイメージの観点でバイアスを感じることがあります。例えば、最近整体に行きましたが『女性は〇〇な状態の方が綺麗になりますよ』など、『女性のからだはこうゆう方が美しい・魅力的』というようなバイアスを感じられる発言が多くありました。何を美しい・魅力的と思うかは人それぞれですし、お客様の身体的性と性自認が一致するとも限らない。私もお客様と接するときは言葉を慎重に選ぶように心がけています」

Q2. 発信者として心がけていることは?
あえて自分とは全く違う意見を知ることを意識しています。自分では許せない部分や、共感できない部分があったとしても、その人が『どうしてそう思うのか』かを知る努力をしています。また専門用語を使いすぎないことも意識しています。新しい情報ばかりだと疲れてしまうし、なるべく難しいものではなく身近に感じてほしいからです」

Q3.本日のSocial Echo Clubの感想は?
「 このイベントを通して、自信を持って『フェミニスト』というワードを使いたいと思いました。ジェンダー平等に関する情報発信を始めた当初はロンドンで勉強していたこともあって、自分のプロフィールやアカウントに『フェミニスト』という言葉を使用していました。しかし日本に帰国するとその言葉は浸透しておらず、ネガティブなイメージを持ってる人は実際多かったです。それを踏まえて、『フェミニズム』『フェミニスト』という言葉をあえて使わない方法でジェンダー平等についての情報発信をしていました。しかし、講義でも紹介されていたように、エマ・ワトソンは私の憧れのフェミニストで、そんなかっこいい人がフェミニストなら私もなりたいと思えたように、私も『フェミニスト』としてインパクトのある存在になりたい。だからこれからもっと自信を持ってこの言葉を使おうと思いました」

HARUKAさん(ヨガインストラクター)

a person smiling for the camera
Marisa Suda

Q1. 日常で感じている偏見は?
「自分自身がヨガインストラクターとして『健康』についての情報発信をしていますが、私が体調を崩したりすると『何で体調を崩したんですか?』とか『自分への意識が足りなかったんですか?』など『ヨガのインストラクターは全員健康でなくてはいけない』と押し付けられていると感じたことがあります」

Q2. 発信者として心がけていることは?
「『こうした方がいい』『こうしない方がいい』とか『こうするべき』という言い方をしないことを心がけています。本当に人それぞれなので。相手に押し付けるような言い方ではなく『自分にとっては〜だから〜です』と言うような表現方法を意識するようにしています」

Q3.本日のSocial Echo Clubの感想は?
「 自分の中でもルッキズムやフェミニズムについて考えていたことはありますが、『フェミニズム』という言葉に対して、自分の中で大きく捉えすぎていました。しかし今回の講義でジェンダー平等・フェミニズムの考え方は『誰も抑圧されない、誰かを否定するのではなく、個人の生き方や選択が尊重される社会であってこうするべきを押し付けない、それぞれが好きなものを選べる社会』と聞いて、気持ちが楽になりました。フェミニズムは自分が傷つけられた当事者でなくても、自分を含めて全員が尊重されるという社会を目指すための考え方だということを発見できました」


MAYURIさん(モデル)

a woman standing in front of a white wall
Marisa Suda

Q1. 日常で感じている偏見は?
「自分は“ハーフ”ですが、日本生まれ・日本育ちなのにも関わらず『日本語が上手だね』と言われることがあります」

Q2. 発信者として心がけていることは?
「私は、男の人、女の人と考える前に、みんな人間なので、基本の人間としての優しさがあれば差別の問題は起こらないと思います。だから私が何か発信して、男の子がどう思うか、女の子がどう思うかではなく、人間が聞いてどう思うかしか考えていません。私自身がそういうことにすごく敏感だから、私が自分の投稿をみて気持ちが良いかを考えてから発信するようにしています。また私にとってはSNSは娯楽で楽しむものだと思っているので、SNSで差別などについては語りません」

Q3.本日のSocial Echo Clubの感想は?
「 自分のことを愛するのって難しいけど、まずは自分との対話だと思う。自分はハーフとして日本で生きてきてバイアスを感じることもあるけど、私はそんなちくちくした言葉に対して何も思わない。そんなことで気持ちを持って行かれる時間はないから。それを今回のイベントで再確認できました」


ALLYさん(ヨガインストラクター)

a person smiling for the camera
Marisa Suda

Q1.日常で感じている偏見は?
「 私はヨガ講師をしていて、『ヨガは女性がするもの』というイメージを持たれることが多いです。ヨガの運動や呼吸法って男女問わず必要なものなのに、まだ『女らしさ』みたいな固定感念があるのかなって。男性が、ヨガのレッスンは女性が多くて行きづらいと聞くと、やっぱり悲しい気持ちになりますね。だからレッスンの時は、性差とか年齢差とかはいったん置いといて、周りの目を気にせず自分にフォーカスしてもらうようなキューイングを心掛けています」

Q2. 発信者として心がけていることは?
「ただその時のありのままや自分らしさを大事にできるような発信を心掛けています。ヨガのインストラクターだから、女性だから……○○だからで囲むんじゃなくて、フラットな同じ人間として理解してもらえるように意識しています」

Q3. 本日のSocial Echo Clubの感想は?
言葉って曖昧なものだなって、痛感しました。私が『おいしい』って言っても相手には「甘い」「しょっぱい」の違いさえ伝わっていなくて、私が思っている感情と全く違うんだなと。時には、私が相手を思いやって発した一言も、相手を傷つけてしまうことだってある。その言葉のギャップを越えるためには、思いやりだけじゃなくて、勉強して知識を増やすことが必要だと今日の講演を通して感じました。誰かの気持ちをラクにしてあげられる一言を伝えられるように、意識的に行動してどんどん日本をよくしていきたいです」

HARNAさん(コンテンツディレクター)

a person smiling in front of a whiteboard
Marisa Suda

Q1.日常で感じている偏見は?
「仕事でやり取りしている会社は、圧倒的に男性が多いです。特に、決裁者・管理者が男性ばかり。ビジネスでやり取りがある男性が、男性社員に対しては「○○さん」と呼んでいるのに対して、同世代の女性社員には『○○ちゃん』と呼んでいて、彼から出る何気ない一言にモヤつきを感じていました。でも、それに対して『やめたほうがいい』ってはっきり言えない自分にもモヤモヤしてしまうんです。その不快感を取り除きたいと感じていました」

Q2.発信者として心がけていることは?
ソーシャルメディアが持つ『影響力の強さ』というメリットを活かして、極力、ソーシャルグッドな発言だけをするようにしています。以前は、ジャンルを問わず発信していたこともありましたが、発信の意義や必要性のないものに対してSNSを使わなくなりました。私自身、ソーシャルメディアのディレクターをやっていることもあって、SNSのパワーを感じつつも、憶測で拡散される恐れなど、デメリットの多さも身を持って実感しています。仕事でたくさんのSNSから受け取る情報に疲れてしまっているのもありますね。私が発言することで、誰かが自分事化できるような内容なら積極的に発信していきたいです

Q3.本日のSocial Echo Clubの感想は?
新たな価値観やワードの発見があって、ジェンダーの見方に対しても変化を起こしていかなきゃいけないなと感じました。例えば、Q1でお話したような、ビジネスパートナーに対して感じている不快感やモヤモヤなど、会社に波風立てないようにしていたことに対しても、身近なことだからこそ行動がしやすい。だから、まずは身近なところから変えて行かなきゃいけないんだなと感じます

Headshot of Mizuki Onodera
Mizuki Onodera

インターン中の現役大学生。エル・デコ編集部でのサマーインターンを経てウィメンズヘルス編集部にジョイン。高校時代のフランス留学をきっかけに、自然を愛するナチュラルな暮らしや、QOLを高める暮らしにインスパイアされる。その後大学で再び渡仏し、仕事におけるメンタルヘルスについて学ぶ。心と体にヘルシーなライフスタイルについてはもちろん、恋愛におけるヘルシーなリレーションシップについても発信していきたい。ヒップホップダンスやボクササイズの経験あり。今後は編集部の先輩方の影響で、テニスやランニングにも挑戦したい。趣味はカメラとナチュラルワイン巡り♡