「トイレの仕方って知っている?」なんて大の大人に聞いたら怒られてしまうかも。でも、実は間違ったやり方をしている人が多いって知っていた? 産婦人科医・中田真木先生によると、デリケートゾーンの臭いや不快感の原因は、トイレの時、デリケートゾーンや腟に尿を残していることが大きいという。しかも、放置していると腟炎や膀胱炎など病気に繋がることもあるから、将来困らないためにも正しいトイレの仕方を改めてチェックして(「」中田先生)。
当てはまっていない? 臭いの原因にもなる間違ったトイレの仕方
前述したように、デリケートゾーンが臭ってしまうのは尿の拭き残しが大きな一因だという。特に更年期になると、下着の臭いが気になる人も多い。まずはデリケートゾーンが臭ってしまう原因を中田先生に教えてもらった。
「デリケートゾーンが臭う原因は、排尿時に腟内に入り込んだ尿が後からデリケートゾーンに垂れてきて不潔になるため。足をあまり開かずに排尿すると、腟に尿が入り込んでしまいます。
さらに歳を取って女性ホルモンの分泌が減ると、尿道周りの粘膜が薄くなっていきます。特に閉経の前後は変化が起こりやすく、40歳に差し掛かると尿の出口『外尿道口』の左右に位置している『陰唇(いんしん)』が真ん中で合わさって、開きづらくなる。すると排尿時に尿が腟に入り込みやすくなり、拭き残した尿に含まれる有機物が分解して、悪臭が強くなります。40歳を過ぎると腟や外陰部の粘膜は抵抗力が低下し、腟炎や膀胱炎などトラブルが増えるんです。
臭いに気付くと、尿が漏れているんじゃないかって心配になる人も多いと思うんですが、拭き方で解決することがほとんど。まずはトイレの仕方を見直してみましょう」
見直してほしい! 大人の正しいトイレの仕方
では、デリケートゾーンを清潔に保つためにはどうしたらいいのか? 中田先生に正しいトイレの仕方のコツを教えてもらった。
【トイレの仕方1】まずは姿勢をチェック。大きく股を開いて、前傾姿勢をキープ
「足を開くことで陰唇が広がります。正しい姿勢をとれているときは、尿が陰唇に触れずにまっすぐ落ちる音がします。そうすると、腟に尿が入り込んでいない証拠。また、体型体格によって出口が狭い人はうまく左右の陰唇が開かないこともあるので、その場合が陰唇を手で広げてあげることも必要になります。スリムなパンツスタイルだと脚が開きづらいので、片足を抜いて排尿することをおすすめします」
【トイレの仕方2】次が拭き方。トイレットペーパーを当ててじっと5秒待つ
「よくトイレットペーパーは『前から後ろ』に拭くという方を拝見しますが、実はNG。ペーパーを前後にゴシゴシ動かすと、トイレットペーパーのくずが粘膜に付着して残ります。こうして残った繊維のくずに大腸菌などが付着すると、粘膜は炎症を起こします。腟壁の炎症は隣接する尿道にも波及し、ひどい時には頻尿や尿意切迫感の原因になると考えられています。
効果的な尿の吸い取り方は、トイレットペーパーを陰唇の間にしっかりあてて5~10秒当ててじっと待つこと。
使用するトイレットペーパーにもおすすめがあります。出先のトイレは詰まり防止を優先させるため、少量の水でもほぐれやすいトイレットペーパーが置いてありますが、家で使うものは吸水力を強化した温水洗浄便座用ペーパーがよいでしょう。使わなくなった下着を小さく切って使う手もあります。紙より吸水力が高く、尿を効率的に吸い取ることができます。ただ下着はトイレに流さないように注意してくださいね」
トイレの仕方を学んだら……デリケートゾーンのケア方法も実践!
現在進行形でデリケートゾーンの臭いやかゆみが気になる人は、一刻も早くケアしたいはず。トイレの仕方だけじゃなく、デリケートゾーンの清潔な環境を保つためにはきれいに保つ習慣が大切だと中田先生は言う。
「私が診察をしていて感じるのは、臭いやかゆみ悩みを抱えている方はデリケートゾーンを洗い足りていない人が多いですね。ケアの基本としては、外陰部と腟の入り口を洗って清潔に保つようにしてください。特に大陰唇と小陰唇の間にある、『陰唇間溝』には紙ねんど状のかすが付いている人も多いので念入りに。汚れカスが溜まると、雑菌が増殖して腟炎や膀胱炎などトラブルの原因になるので、清潔に保ちましょう。
石鹸でデリケートゾーンを洗うと、沁みてしまうという人をたまに見かけますが、それは石鹸の成分のせいというより、肌が荒れて傷んでいる可能性が高いです。沁みる人は、デリケートゾーン用ソープや敏感肌用のソープなどご自身に合うものを見つけてケアしましょう。
余談ですが、ヨーロッパの人はデリケートゾーン周りが綺麗な人が多いと言われています。その理由は、ヨーロッパのバスルームには伝統的にビデが設置してあって、ベッドに入る前にお湯と石鹸でデリケートゾーンを清める習慣があるため。日本だとあまり一般的ではないので、文化的にも陰部を洗い足りていない人が多いんですよね」
デリケートゾーン環境を清潔に保つために おすすめのウェア
【ショーツ】トランクスタイプ
左右の陰唇をあまり寄せないトランクスタイプがおすすめ。ショーツのクロッチ(股の部分にあたる内側部分に縫い付けられた布)が狭いものは要注意。特にナプキンやおりものシートを使用するときは、クロッチが広いものを使いましょう。
【ボトムス】股上がゆったりしているもの
ゆるっとしたシルエットのものがおすすめ。股のあたりに空間を作ることで通気性がよくなりムレを防ぎます。左右の陰唇が合わさって腟の出口が密閉された状態になると、デリケートゾーンの環境が悪くなってしまいます。
いかがでしたか? 中田先生によれば、デリケートゾーンの臭いやかゆみがある人も、正しいトイレの仕方やケアを続けていけば、次第に清潔な状態に戻ってトラブルが落ち着くそう。次にトイレに行くときからすぐに変えられる習慣、ぜひ試してみて!
次回【後編】は、うんちの正しい仕方をご紹介。
お話を伺ったのは……?
三井記念病院 ・中田 真木(なかた・まき)先生
1981年医学部卒業、医師免許取得。文京区在住。
三井記念病院産婦人科嘱託、日本産科婦人科学会専門医、日本女性医学学会専門医、日本排尿機能学会専門医、日本女性骨盤底医学会理事。専門は女性の骨盤底再建外科。
その他の活動として、学会での子宮脱の手術しない治療に関する講習会や出産時の排尿管理に関する調査。特技は英語やフランス語のレシピやユーチューブをみて料理すること。
生活雑貨やコスメなどの記事編集の経験を積み、2023年5月から「ウィメンズヘルス」に参加。コスメやアロマテラピーの資格を持ち、正しい知識を伝えることを目標に日々勉強中。フードやサスティナブルな分野に興味があり、週2日のノーミートデーを実践するなど日常生活でのアウトプットを心掛けている。学生時代はラクロスとソフトテニスに没頭、今は漫画に影響されバスケにハマり中。休日はキャンプやフェス、山登りなどアウトドア派。