不安やパニックの原因は呼吸の仕方にあった!

30 December 2018

不安やパニックの原因は呼吸の仕方にあった!

イギリス版ウィメンズヘルスのスタッフが、セルフケアのテクニックでメンタルヘルスを再建。その記録から学べることは?

話すのには疲れた。でも、助けが必要なことに変わりはない。最後にパニック発作を起こしてから1ヶ月と15日が経過した。私の中では長いほう。それでも、不安定な気持ち、異常なまでの警戒心と絶え間ない不安は消えず、一度たりとも安堵できない。

不安への対処法を早急に学ばなければ。

そう思い、90ポンドの “ブレスワーク (呼吸法)” クラスに参加した。正しい呼吸を身に付けることで落ち着きを取り戻し、パニック発作と決別しようと思ったのだ。

「誰にでも事情はある。でも、それをここで語る必要はないわ」。トークセラピーで全てを語り尽くしてもなお不安だらけの私の耳に、その言葉は優しく響いた。

“現代のウェルネス”

ブレスワークスタジオは最近突然増え出したけれど、私が通うのは、まさに “現代のウェルネス” を統合したロンドン北部のヨガスタジオ。 懸命に生きるあまり疲れ切った20~30代を対象に、生き生きしたスポーティーなスタッフがクンダリーニヨガ、霊気、ゴングバス (銅鑼の音色を用いた瞑想) を展開している。

私が習っているのは、ヨガの呼吸法とは異なる 「トランスフォーメーショナル・ブレス (変容の呼吸)」 というもの。


パニック発作の治療法

聞くところによると、この呼吸法の目的は、生徒が心の悩みに向き合い、深すぎてトークセラピーでは届かない “障害物” を取り除くことにある。私を担当するレベッカ・デニス先生いわく、「胸と呼吸で絶え間なく息をして、呼吸器系を最大限まで開かせること」で実現するものらしい。

「これで長年しがみついてきた心や体の傷を手放すことができ、どこから来るのか分からない不安にも、うまく対処できるようになる」そう。

確かに非科学的な響きだけれど、東洋では一般的な話。横隔膜の動きが他の臓器を刺激し、「完全なる酸素交換」 が行われると主張したハーバード大学の循環器専門医、ハーバート・ベンソン博士によって、1970年代には西洋でも普及した。

「完全なる酸素交換」 の理論では、体から出て行く二酸化炭素が多ければ多いほど、より多くの酸素が取り込まれ、心拍数が下がり、血圧が安定する。ベンソン博士によると、心拍数の低下と血圧の安定は不安反応の正反対で、パニック発作を減らすには不可欠。


パニック発作が呼吸で楽になる理由

呼吸によって精神的な障害物が本当に消えるのだろうか。それを証明する文献は予想通り少ないけれど、呼吸・不安・パニック発作の関係性を調べた文献は山ほどある。

応用精神生理学・生体自己制御の専門誌に掲載された2015年の論文レビューによると、ゆっくりとした深呼吸は、神経系を交感神経 (ストレスモード) から副交感神経 (リラックスモード) に切り替える。

一方、英サウサンプトン大学が2017年に行った研究では、一般的な処方薬では改善が見られなかった不安神経症患者の身体的・精神的な症状が、週5回20分ずつのヨガ呼吸で改善した。

正しい呼吸が精神的にプラスの効果をもたらすことは、科学的にも証明されているとか。


不安発作の症状

でも、正しく呼吸できないと大変なことになる。英国肺財団の臨床アドバイザー、スティーブン・スピロ教授によると、「不安な時は必要以上に息をしてしまうので、血中の二酸化炭素濃度が下がる」。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの薬理学専門家、サンジーヴ・カンボジ博士いわく、「これが血液のアルカリ性度を強くして、脳にアラーム信号のようなものを送る」 そう。

呼吸が極端にヘタだと、ただの不安がパニック発作になることもある。呼吸が速くなると、体が “戦うか逃げるか” のストレス反応を起こすからだ。

カンボジ博士の話では、「あなたの身が脅威にさらされていると中枢神経系が感じると、交感神経が活発になる」

「その後、脅威が迫っているという情報は、脳の扁桃体 (恐怖中枢) に伝えられる。すると一連の生化学的現象が起き、副腎からストレスホルモン (アドレナリンとコルチゾール) が分泌される。そして、脳の酸センサーがpH値の乱れに気付くと、パニック発作が起きる」

過呼吸とテタニー(手足の痺れ)、指がしびれるような感覚が続くことも多い。こんな状態に陥るのは、誰だってイヤ。


横隔膜呼吸

私も、その状況を何とかして避けたい。不安に対する治療法がないのなら、うまく対処する方法だけでも身に付けたい。

すると、私の呼吸リズム (案の定、胸にもお腹にも届かない浅い呼吸) をチェックしたデニス先生が、次のテクニックを教えてくれた。2回続けて息を吸う。1回目の空気はお腹へ (ベンソン博士の横隔膜呼吸法に似ている)、2回目の空気は胸へ送り込み、すぐに短く息を吐く。

私のお腹の上で、デニス先生の手が浮き沈みするのを見つめながら、このテクニックを45分間ひたすら繰り返した。

「深い瞑想と同じで、この呼吸法は心理状態を変えるの」 とデニス先生。

「溢れてくる気持ちと戦おうとしないで」。不安を抱える人にとって、それは恐ろしいこと。それでも私は目を閉じる。

最初のうちは集中できず、その惨状をケラケラ笑うことしかできない。胸に空気も入ってこない (ブレスワーク理論によると、体は対処できない恐れを胸に溜め込んでいる)。でも、呼吸が流れに乗り出すと脳が酸素でいっぱいになり、繭の中に沈んでいくような感覚になる。記憶がひょこっと顔を出す。あのときの映像が浮かび、あのときの感覚が全身に蘇る。実に奇妙なものだ。


ブレスワークの効果

20分間にわたる2回目のブレスワークを終えると (おすすめは3回)、パニック発作の兆候が出始める。喉が詰まり、苦しさで少し喘いでしまう。でも、デニス先生の励ましを受け、胸の障害物に向かって空気を送り続ける (嘘っぽいかもしれないけれど、本当にそこに障害物があるように感じる)。

6ヶ月のトークセラピーで一度も触れることのなかった超リアルな記憶を、心と体が呼び起こし始める。病室で横たわる私の体は、命をも脅かす重度の敗血症性ショックで衰弱し、鎮痛剤の点滴で心理状態もおかしい。泣きたいのを我慢して弱々しい声を出し、その記憶が再び薄れるまで呼吸を続ける。

ふと疑問が頭をよぎる。不安に対処するって、息をするだけのことなの?

パニック発作が起こりそうな気がするのは一瞬で、ブレスワークが終わると本当に安心できる。不安から抜け出せない惨めな自分にイライラすることもない。

今になって驚くほどハッキリしたのは、あの学生時代の入院生活が、神経質で終わるか、心の病を患うかの重要な分岐点だったということ。これまで全然気づかなかった。


結果的にパニック発作は改善したのか?

最後のブレスワークから10日が経過した今。不安定な気持ち、メールに対する恐怖心、週半ばでの急激な落ち込みは消えていない。よって “変容” はしていないかもしれないけれど、知識が身に付いたのは確か。自分の呼吸に詳しくなったし、苦しいだけだった呼吸を味方につける術を学んだ。このスキルを磨き続け、パニック発作を過去のものにしてみせる。

※この記事は、UK版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text:Roisín Dervish-O'Kane Translation:Ai Igamoto Photo:Getty Images

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