食物繊維パウダーと聞くと、真っ先になにを思い浮かべる? おばあちゃんが飲んでいるもの? それとも、便秘改善のために飲むものだと思っている? もちろんそれも、間違ってはいない。

現に、食物繊維パウダーに魅力的なイメージを持っている人は少ないはず。

ジェニファー・アニストンやヴィーナス・ウィリアムズは、愛飲中のプロテインパウダーを公に紹介したり宣伝したりしている。一方で便通をよくする食物繊維サプリを支持するセレブは、今のところほとんどいない。でも、本当は支持されるべきで、そうなる日はきっと案外近いかも。

プラントベース食やトレンドの食物繊維サプリ(例えば、体重減少と緩く関連付けられているサイリウムハスクなど)の台頭や、腸の問題に対するスティグマの軽減など、さまざまな文化的要因が重なったおかげで、今食物繊維サプリ市場に新たな関心と認識が生まれているという。

今年発表された世論調査によると、アメリカでは成人の3人に2人が消化器系に繰り返し問題を抱えている。特定の疾患においてはとくに女性が影響を受けやすい傾向にあり、過敏性腸症候群(IBS)の発症率は男性の約2倍も高くなっている。同様に55歳未満の成人の大腸がんの発生率は、近年で驚くほど急増している(1995年の11%から2019年の20%へ増加)。

「個人的な見解ですが、私の若い患者さんたちは早期発症の大腸がんの増加(チャドウィック・ボーズマンの早すぎる死が引き金となった可能性がある)や、すべての年齢層に影響を与えている肥満の蔓延にもっとも懸念しています」と話すのは、消化器と肝臓の専門医であるシンシア・クワイヌー医学博士。

今更びっくりすることでもないけれど、食物繊維を十分に摂取できている人はほとんどいない。食物繊維は有益な腸内細菌叢や規則正しい排便習慣を維持するために必要不可欠。栄養と食事のアカデミーによると、女性の1日の推奨摂取量は25gであるのに対し、平均的なアメリカ人は1日に10〜15gしか摂取できていないそう。

食物繊維は体内で重要な役割を果たしている

食物繊維とは体が完全に消化できない炭水化物の一種であり、水溶性と不溶性の2種類がある。水溶性食物繊維は水に溶け、消化管でゲル状になり、体内の廃棄物を外に押し出す役割があり、不溶性食物繊維は水に溶けず、便を柔らかくしたり便のかさを増やして排便をスムーズにする役割がある。専門家いわく、消化のメリットをすべて得るには、食事から両方の食物繊維を摂る必要があるそう。

「食物繊維は便のかさを増やすので、消化管と呼ばれる管を便がスルッと通り抜けられるようになるのです」と話すのは、胃腸科専門医のサマンサ・ナザレス医学博士。「こうして便秘を予防し、痔や憩室炎(大腸にできる小さな袋が炎症を起こして痛みを伴う疾患)の発症リスクを減らしてくれます」

もし魔法を使ってあなたが消化管をくぐり抜け、大腸まで冒険できたとするなら、食物繊維が腸内細菌を養い、排泄のプロセスが始まる前から消化における重要な役割を果たしてくれていることがいかによく分かるだろう。

「食物繊維は、私たちの大腸に生息する健康的な微生物叢のエサにもなってくれているんです」とナザレス医学博士。「微生物叢は単に“無害な傍観者”でなく、脳や免疫機能、体重、血糖値を調節するなど、数々の側面で私たちの健康に大きく寄与してくれています」

食物繊維は、心臓発作や脳卒中による死亡リスクの減少とも関連している。

ナザレス医学博士は、果物や野菜、豆類、全粒穀物などのホールフードで作られた食事から1日に必要な食物繊維を摂ることを勧めているが、それがどうしても難しいときには食物繊維をサプリで補うのはいい選択肢。

「出張が多いときや、食事を自分で選択できないときには、私も食物繊維をサプリで補っています」とナザレス医学博士。サイリウムハスクに水を混ぜて飲み、1日の必要量を満たすようにしているそう。

クワイヌー医学博士は、より実用的なアドバイスをくれた。

「オートミール1食分やリンゴ1個に含まれる食物繊維は4gです。1日にリンゴを8個も食べている時間は誰にもありませんから、私はサプリで摂っています。食事から15g、サプリから15gを摂取するようにしてみてください」

食物繊維の供給源はあちこちに存在している

group of food with high content of dietary fiber arranged side by side
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食物繊維の粉末サプリには、植物由来でお馴染みの原料がいくつか使われている。もっともよく耳にするのはサイリウムハスクで、糖尿病や減量のために処方される薬「オゼンピック」の代替薬になる可能性も秘めているとか(ちょっと大袈裟ではあるけれど、食物繊維は満腹感を増幅させるから)

ナザレス医学博士によると、サイリウムハスクはオオバコの種子外皮からできており、便秘を改善するのに役立つ水溶性食物繊維(ちなみにこれは、「メタムシル」の食物繊維パウダーの主成分でもある) 。「水に混ぜると水分を吸収してゲル状の物質を形成します」。この物質こそが、便が消化管を通って外に出るのを助けている。

もう一つ人気な食物繊維の供給源は、片栗粉。そう、ジャガイモのでん粉。「これは小腸では消化されず、有益な腸内細菌のエサになるため無傷の姿で大腸に到達します」とナザレス医学博士。次に、グアー豆の種子から作られるグアーガム、そして、植物に含まれている水溶性食物繊維のペクチンが有名。食品ラベルを読んでいると、イヌリンを目にすることもあるかもしれないが、これもチコリの根など、植物に含まれている水溶性食物繊維。ナザレス医学博士いわく、イヌリンは腸の健康をサポートするプレバイオティックとしても使用できるそう。

食物繊維の粉末サプリは毎日安全に摂取することができるけれど、消化器系に問題が起きるのを回避するために、まずは推奨量よりも若干少なめの量から始めてみて、徐々に摂取量を増やしていくのが安心。添加糖類など摂りたくない成分が含まれていないか、成分表示を確認することも忘れないように。なにかしらの薬を服用している人は、副作用や相互作用を防ぐために、医師の許可を得て服用するようにしよう。

過敏性腸症候群など、特定の消化管疾患を抱える人はとくにだが、サプリメントはすべての人に適切なものではないことも心に留めておこう。「過敏性腸症候群は複雑です。ある人には効果のあるものが、別の人にはまったく効かないことだってあるのです」とナザレス医学博士。

多くの女性が食物繊維サプリを活用している

happy african american woman standing at the cuisine table in the home kitchen drinking dietary supplements, looking away and smiling friendly, healthy lifestyle concept
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お通じをよくするために飲んでいる人もいれば、より深刻な腸の慢性疾患に対処するために飲んでいる人もいて、アメリカでは毎日の食事に食物繊維サプリを取り入れ始めている人が増加中なのだそう。

アメリカ版ウィメンズヘルスのライフスタイルディレクターを務めるリンジー・ゲラー(30歳)は、ストレスが溜まったときや旅先でも腸の活発な動きを維持する目的として、2019年からサイリウムハスクのサプリを摂っている。

「私はほぼ毎日摂っています。朝食のスムージーに小さじ1杯、ヨーグルトやピーナッツバター、プロテインパウダーにも小さじ1杯混ぜて摂取しています」とゲラー。「私がとくに実感している効果は常にお通じがよいことで、サプリを摂らなかった日の違いは自分で気が付くほど明らかです」

NBCニュースのエンタメ記者であるクロエ・メラス(37歳)にとってサイリウムハスクは、長年抱えていた消化器の問題に画期的な変化をもたらしてくれたもの。彼女は23歳で潰瘍性大腸炎(UC)という大腸の粘膜に影響が生じる炎症性腸疾患であると診断された。それから最初の10年間はステロイドや免疫抑制剤のような医薬品ばかりを服用していたけれど、効果はまちまちだったそう。

「ステロイドを数ヶ月服用しましたが、それが原因でムーンフェイス(満月様顔貌)を発症したんです。ステロイドにはいろんな副作用がありますからね」 とメラス。「体は触覚に敏感になり、誰かとハグをすることもできなくなりました。全身に痛みが走るんです」

2014年に結婚した夫のブライアン・マッツァは起業家でありフィットネスのインフルエンサーで、最新のウェルネストレンドを常に教えてくれていたとメラスは語る。そして2020年に地元の栄養食品店で彼が買ってきてくれたサイリウムハスクを他のサプリメントやビタミンと一緒に水に混ぜて飲み始めて以来、独自の“食物繊維ウォーター”を作るために徹底的に研究するようになったそう。

「飲み始めてすぐに、お通じとむくみに効果が現れました」とメラス。「サイリウムハスクの効果についてたくさんリサーチし、それ以来ずっと愛飲しています」。薬と適切に組み合わせて服用したことで、症状がかなりラクになったと話している。

メラスの医師もまた、メラスがサイリウムハスクを摂ることを支持しているけれど、それで潰瘍性大腸炎が「治った」と言及するのは控えているという(メイヨー・クリニックによると、現時点でこの病気の完治させる治療法はない)。だがメラスの潰瘍性大腸炎は2年前から寛解しており、最近初めて通常の大腸内視鏡検査を受けている。

「本当に本当に長い旅でした。14年もかかりましたから」と、メラス。「そんなに経っていると思うと怖いですね。数ヶ月で治るものだと思っていました。食物繊維の重要性をもっと早く知っていればよかったです」

食物繊維はすべての年齢層に必要なもの

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メラスの友人であるシャノン・レースは、メラスの体験や自身が抱えるIBSと乳糖不耐症の問題にインスパイアされ、食物繊維市場に大きな革命を起こすために腸の健康(gut health)会社Bio.meを設立。

現在では2種類の食物繊維パウダーを販売している。加水分解グアーガムと難消化性のジャガイモのでん粉(片栗粉)を含む「Daily Prebiotic Fiber」と、サイリウムハスクを含む「Fiber Rescue」の2種類、そして錠剤タイプの「Synbiotic」を展開中だそう。

「まずは、日常生活にスッと溶け込めるような製品にこそチャンスがあると思いました。単なる製品というだけでなく、消費者のライフスタイルの一部になれるようなものです。ジュースや水に溶かして飲めるような無味無臭のパウダーを販売するメーカーは多いですが、それでは若い人に医療的な印象を与えてしまい、現代の消費者向けではないなと感じたんです」とレース。

若い女性のキッチンに馴染むような洗練された製品でありながら、高齢顧客を遠ざけるほど若々しいイメージを与えない製品を作りたいと考えていたレースはパッケージに焦点を当て、Bio.meの開発に費やした科学や研究を台無しにするような派手なデザインを避け、シンプルさの中にある洗練された印象を与えるモノトーンのパッケージを採用することにした。

レースは、パッケージのアプローチと腸の健康の重要性を消費者に教育するBio.meの取り組みによって、食物繊維パウダーは「便秘を抱える50歳以上の人」が摂るものというような古いイメージを払拭できるのではないかと胸を膨らませている。

もちろん、Bio.meにも食物繊維市場の競合他社がいる。Instagramで広く知られるSeed(独自のシンバイオティクスを販売する企業)はすでにソーシャルメディアの特定の領域で自社の存在を確立しており、インフルエンサーや女優のラナ・コンドルと組んで健康志向の高い20〜30歳代の女性にリーチしている。

Bonnyは「おいしくて、おなかスッキリ」とか「食物繊維はあなたをトイレに行かせるもので、それを味わう必要はない」といったユーモアのあるキャッチコピーと身体機能に焦点を当てた戦略アプローチをとっており、Nakedはオーガニックの食物繊維のみを取り扱い、たった一つの原料(バオバブの果肉)だけで作ったシンプルな製品を提供している。

それぞれに強みを持つ競合他社がいる中で、Bio.meが選んだ方針と自社製品に自信を持つレース。「科学は目を引くような効果のないダイエット法を広めるためにあるのではなく、全体の健康においていかに食物繊維が重要であるかを示すためにあるものです。それを、私は多くの人へ伝えていきたいです」

※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: AMY WILKINSON Translation : Yukie Kawabata

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Amy Wilkinson
Amy Wilkinson is an entertainment editor who also specializes in health and wellness. When not editing or writing, she can be found teaching Pilates as a comprehensively certified instructor.
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川畑 幸絵
翻訳者

短大卒業後バンクーバー、メルボルンで2年留学した後、外資系客室乗務員として勤務。2018年に退職後、翻訳者としてフリーランスに転身。アメリカで統合栄養学を学んだ経験もあり。