マグネシウムは正常な身体機能に欠かせない栄養素。でも、その割には、ビタミンCやカルシウムほど効果効能が広く知られていない。
「マグネシウムは必須微量栄養素、つまり、食事やサプリメントから少なめに摂取するべき栄養素の一種です」と説明するのは、キートリー医学的栄養療法クリニック共同オーナーで公認管理栄養士のスコット・キートリー。少量でいいとは言っても、マグネシウムは無数の身体機能を支える“補因子”。言い換えれば「マグネシウムがないと、体が正常に機能しないということです」
米国栄養士会のスポークスパーソンで公認管理栄養士のソニア・アンジェロンによると、実際のところマグネシウムは、タンパク質の分解、血糖値の調節、筋機能、エネルギーの産生といった300以上の体内化学反応に関係している。「マグネシウムには、全身の細胞膜にカルシウムとカリウムを届けるという役目もあります」
要するに、マグネシウムは働き屋さん。でも、この栄養素は残念ながら不足しがち。米国民健康栄養調査のデータを見ても、アメリカ人の48%は、年齢層に関わらずマグネシウムが不足している。
情報までに、成人女性は年齢および妊娠中・授乳中かどうかによって、1日310~360mgのマグネシウムを摂取するべき(アメリカ版ウィメンズヘルスの数値)。この量を下回ると、体が効率的に機能しなくなるかもしれない。今回は、アメリカ版ウィメンズヘルスからマグネシウムの8つの効果とマグネシウムを含む食べ物を見ていこう。
マグネシウムの効果効能
ここからはマグネシウムの働きを具体的に見ていこう。
1.運動パフォーマンスを向上させる
アンジェロンいわくマグネシウムは「正常な筋収縮に不可欠」で、筋けいれんを防ぎ、運動パフォーマンスを向上させることが分かっている。これには科学的な裏付けもあり、スポーツ科学専門誌『Journal of Sports Sciences』によると、バレーボール選手25名を対象とした少し昔の予備調査では、1日350mgのマグネシウムを摂取した選手のジャンプ力がプラセボ薬を摂取した選手よりも高かった。
米国骨代謝学会誌『Journal of Bone and Mineral Research』に掲載された女性2500名を対象とした研究結果も、マグネシウムの摂取量が多い女性は、少ない女性より筋量と筋力が優れていたことを示している。
2.心臓の健康によい
「マグネシウムには、心拍数を安定させる作用があります」とアンジェロン。「マグネシウムは平滑筋弛緩薬として働くため、心房細動と高血圧にも有効であることが分かっています」
栄養学専門誌『Journal of Human Nutrition and Dietetics』掲載の論文によると、マグネシウムのサプリメントは、特にマグネシウム不足の人の心疾患の危険因子(悪玉コレステロール値、善玉コレステロール値、血圧)を改善させる。
3.うつ病の予防になる
「マグネシウムは脳内の一部の受容体をブロックし、細胞を過剰な刺激やダメージから守ってくれます」とアンジェロン。家庭医学専門誌『Journal of the American Board of Family Medicine』に掲載された8800名以上を対象とした調査結果も、マグネシウムが不足している65歳以下の成人はうつ病になりやすく、マグネシウムの摂取量がもっとも低い人たちはうつ病の発症リスクが22%も高いことを示している。
それでも、マグネシウム不足が確実にうつ病を引き起こすとは言い切れない。「むしろ、うつ病の人には、マグネシウムが不足しがちな食生活を送る傾向があり、マグネシウムのサプリメントを飲むことで、その不足が解消されると考えたほうがいいでしょう」とキートリー。「もちろん、うつ病そのものに対処する必要はありますが」。うつ病の症状が見られるときは、メンタルヘルスの専門家に相談を。
4.不安を感じにくくなる
栄養学専門誌『British Journal of Nutrition』によると、約3200名を対象とした調査の結果、マグネシウムの摂取量が多い人は、うつだけでなく不安のリスクも低いことが分かった。マグネシウムが不足すると「ストレスレベルが高くなります。それが不安を引き起こす可能性は十分にありますね」とアンジェロン。「マグネシウムを摂取するとコルチゾール値が下がり、代わりにGABA(ガンマアミノ酪酸)値が高くなるとも言われており、その結果、不安が軽減することも考えられます」
5.血糖値が安定しやすくなる
マグネシウムには、体内のカルシウムと張り合う習性がある。これは必ずしも悪いことじゃない。というのも、体内のカルシウム量が多すぎると、グルコース(糖)を細胞に移動させてエネルギーに変換するインスリンの産生量が減少するから。そうなると「血液中の糖が増え(血糖値が高くなり)、問題が生じます」とキートリー。
アンジェロンによると、この問題を防ぐためにマグネシウムは、体がインスリンを上手に使うのを助け、血糖値を安定させる。糖尿病専門誌『Diabetes Care』掲載の研究結果も、体内にマグネシウムが十分あると、2型糖尿病(体がインスリンを正常に作れなくなる/使えなくなる病気)の発症リスクが下がることを示している。
6.炎症を抑える
体内の炎症は、日常的な疼痛にも深刻な病気(がんや糖尿病)にも関係するので極力抑えたほうがいい。
「マグネシウムはグルタチオンという抗酸化物質の合成に必要な成分ですが、マグネシウム自体に抗炎症作用はありません」とキートリー。でもアンジェロンいわく、マグネシウムは、免疫系の強化に役立つ活性型ビタミンDの産生も助けるそう。つまり、マグネシウムには間接的な炎症抑制作用があるということ。
7.PMSにも効く可能性がある
急激な腹痛などの症状を引き起こすPMS(月経前症候群)も、マグネシウムで改善するかも。「マグネシウムが平滑筋弛緩薬として働き、激しい腹痛を和らげてくれるかもしれません」とアンジェロン。医学専門誌『Journal of Caring Sciences』によると、女性126名を対象とした小規模の研究で、1日250mgのマグネシウムを摂取した人たちに腹部の張り、気分の落ち込み、不安の軽減が見られた。また、科学専門誌『Magnesium Research』掲載の論文も、マグネシウムで急激な腹痛が和らぐ可能性を示している。
8.睡眠の質の改善に役立つ
「マグネシウムは、心身をリラックスさせ、睡眠時間を増やすうえでも役立つ可能性がありますよ」アンジェトン。「マグネシウムには、寝つきをよくするメラトニンの分泌量を調節する作用や、睡眠を促す神経伝達物質のGABAを健全な量に保つ働きがありますから」
補完医療専門誌『BMC Complementary Medicine and Therapies』によると、不眠症の成人151名を対象にした研究で、マグネシウムのサプリメントを摂取した人は、しなかった人よりも眠りにつくのが17分早かった。
マグネシウムを含む食べ物
米国立衛生研究所によると、マグネシウムは植物性食品と動物性食品の両方に含まれている。含有量が特に多い食品は以下の通り。
・カボチャの種
・チアシード
・アーモンド
・ホウレン草
・カシューナッツ
・ピーナッツ
・豆乳
・黒豆
・ピーナッツバター
・ジャガイモ
・お米
・オートミール
・バナナ
・サーモン
・牛乳
マグネシウムはサプリメントからも摂取可能。アンジェロンによると、通常、マグネシウムのサプリメントはセリアック病、2型糖尿病、アルコール依存症の人に処方される。過剰なストレスやカフェインは、体内のマグネシウムを枯渇させてしまうので注意が必要。キートリーいわくマグネシウムは、持久系アスリートにも不足しがち。
マグネシウム不足の症状
マグネシウム不足の症状は、マグネシウムが不足している期間によって大きく違う。
初期症状は以下の通り。
・食欲の低下
・吐き気
・嘔吐
・疲労感
・脱力感
これを長期間放置すると下の症状が現れる。
・しびれ
・こむら返り
・発作
・不整脈
・カルシウム不足
・カリウム不足
・マグネシウムの副作用
アンジェロンによると、マグネシウムのサプリメントの潜在的な副作用は、以下の2つ。
・軟便や下痢
・胃のムカつき
アンジェロンいわくマグネシウムの過剰摂取は、低血圧、不整脈、稀とは言え昏睡状態を引き起こすこともあるので注意が必要。
マグネシウム値が気になる人は、かかりつけ医に相談し、血液検査を受けてみよう。その結果、必要と判断されれば、適切な治療が開始される。
※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Korin Miller Translation: Ai Igamoto