日本で生活していれば、朝の天気予報などでも耳にする旧暦の話。実はこの旧暦を知っていると、何かを始めるのに良いタイミングが分かり、日々のトレーニングも効率良く行うことができるのだ。しかし詳しく知ろうとすると、私達が見慣れているカレンダー(西暦:グレゴリオ暦)と、日付の違いがあり戸惑うかもしれない。

簡単にいうと、現在使っているグレゴリオ暦は太陽の運行に沿って作られたものであるのに対し、旧暦は月の満ち欠けでひと月の長さを決めていた。月の満ち欠けの周期は約29.5日なので、12ヶ月は354日になってしまい、一年に約11日ずつずれてしまう。そこで旧暦では約3年に一度うるう月を設けて13ヶ月とし、季節と月のずれが大きくならないように調整したのだ。

とはいうものの、農作業をはじめ生活を送る中ではより季節を把握する必要があった。そこで、太陽の動きをもとに1年を24等分した「二十四節気」が中国で考案され、日本でも取り入れられた。一年で最も昼が長い日を夏至、最も昼が短い日を冬至、昼と夜の長さが同じ日を春分・秋分とし、季節を知るための目安になった。

今回はこの二十四節気を感覚的に捉えやすいように、“地球暦”というものに当てはめて見てみることにする。地球暦とは太陽系を一兆分の1に縮小(正確には火星まで)して一枚の紙に落とし込み、春分から始まる円の一周で一年を表す暦である。年度の始まりである春分から左回りに一日約一度ずつ進み、一年で一巡りする。月ごとにページをめくるグレゴリオ暦とは違い、一年を円で表すことで、巡りゆく季節の中で今の地球の、つまり自分の立ち位置が分かりやすくなる。

地球暦

季節ごとの養生のポイントとは?

地球暦の図に示した円のスタートにあたる春分は、太陽が真東から昇って真西へ沈み、昼と夜の長さがほぼ同じになるころ。この日から夏至までに昼がだんだんと長くなり、夜が短くなる。この時期には冬の間に溜め込んだ不要なものを、体外へ排出するようなことがポイントとなり、山菜などの苦味のあるものなどを食すと良いとされる。

春分から円を矢印の方向に上った先の夏至は「一年で最も昼間の時間が長い日・陽のエネルギーが最大限に高まる日」とされ、2021年は6月21日に夏至を迎えた。陽のエネルギーが最大限に高いといっても日本は湿気が多く、むくみや冷えに注意を払い、代謝を促進することが夏至の時期の養生になる。

そして夏至が終わると円の矢印が下方に向かうように、冬至に向かってエネルギーが段々と下降気味になっていく。秋分は昼と夜の時間がだいたい同じになるが、春分とは違い「陰の気」が強くなって徐々に夜が長くなっていく。陰と陽の入れ替えの時期であるため、心身のバランスを保つために身体を動かすことも大切。ただし夏のように汗をかきすぎない程度のもので、心と体を整え巡らせていくようなヨガなどがおすすめである。

このように円の軌道に沿ってエネルギーの動きをイメージすることで、季節の節目までにすべきことがビジュアル的にも認識しやすくなるのではないだろうか。

今は円の左下に位置する頃なので、これから冬至に向かって行くことになる。冬至は一年のうちで最も昼の時間が短い日であり、この日から徐々に昼が長くなり、夜が短くなっていく。

また冬の真っ只中で寒さが極まる頃とも言われている。冬至に向かっていくこの時期は自分の中に貯蔵しているエネルギーを大切に使うこと。春の芽吹きに備えてしっかりとした内側(骨や筋肉)を作っておくことを意識したトレーニングが適している

例えばラジオ体操をいつもの2倍ほどの時間をかけて行ってみるのもおすすめ。簡単な動作だが、ゆっくり動くことでじわじわと身体の中が温まり、冬場のウォ―ミングアップとして適した動きになる。

骨や筋肉を作るためのおすすめの方法は、アイソメトリック(等尺性筋収縮)技法を用いたヨガのポーズだ。アイソメトリックとは、「関節は動かないが、筋肉が収縮している状態」をいう。

例えば腕相撲で2人の力が均衡してまったく動かない時、絶対に動かない壁を押している時などはアイソメトリックが生じていると言える。筋肉の収縮状態を維持しているので、筋肥大効果が高い方法である。また本人の出力できる以上の負荷がかからないので、過負荷になることが少なく安全なトレーニング法であるとも言える。

ここでは、ヨガのポーズでお馴染みの猫のポーズと橋のポーズのアイソメトリックバージョンを紹介する。いずれの動きも、呼吸を止めないこと気をつけながら行ってみよう。

〈猫のポーズのアイソメトリックバージョン〉

猫のポーズ アイソメトリックバージョン


四つん這いの姿勢になり、両足首を上下に重ねる。片手のひらを後頭部に当て、息を吐きつつ頭と手のひらで押し合い、両足首も上下に押し合う。吸う息で力を抜き、この動作を数回繰り返す。足首の上下、後頭部の手のひらも変えて反対も同じように行う。


〈橋のポーズのアイソメトリックバージョン〉

橋のポーズ アイソメトリックバージョン


両膝を立てた仰向けの状態で、両手で腰骨をつかんでおく。息を吐きながら腰を上げようとし、両手は腰骨を押し下げようとする。続いて息を吸いながら腰の力を抜き同じ要領であと数回押し合い、その後にシャヴァ・アーサナで休む。

自然が絶えず変化しているように、人間の体も絶えず変化し続けている。季節の変化を感じるゆとりを持ちながら、自然の移ろいの中にセルフケアの指針を見つけていくのはいかがだろうか。

監修
久保木み規(kuboki minori)
​Roman【ロマン】主宰/セラピスト
https://minorinoroman.weebly.com/

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さおり
ヨガ・ピラティスインストラクター/保育士

沖ヨガ、ピラティスをベースに《キツくないのに、身体が変わって楽しい!》をモットーにレッスンをしている。マタニティーから、キッズ、最高年齢78歳の方まで幅広い年齢層の方々と大好きなヨガ、ピラティスを楽しんでいる。

インスタグラム:@yoga_pila_sao