走ったあとにストレッチを忘れたことは、みんなだって一度どころか何度もあるはず。確かにシャワーに直行して食事を済ませ、大急ぎで仕事に行けば、ストレッチをスキップしたぶん時間に少し余裕ができる。でも、長い間ストレッチをサボっていると、そのうちツケが回ってきて、体の回復が遅れたりケガをしやすくなったりする。そこで今回は、ランナーが知っておくべきストレッチの基礎知識とランニング後にオススメのストレッチを紹介したい。
ランナーがストレッチをするべき理由
走ったあとにストレッチをすると、ランニングで疲弊した筋肉に送られる血流の量が増えるため、その筋肉の修復と回復が早くなる。また、体に溜まった乳酸と老廃物を取り除き、つらい筋肉痛や関節痛で次のランニングをダメにしないためにもストレッチは役に立つ。
さらに、ストレッチを続けていれば、ランニングに必要な筋肉の柔軟性と可動域が高まって、肉離れや使い過ぎによるケガ(オーバーユース)もしにくくなる。
ウォームアップにダイナミック(動的)ストレッチを組み込んで、ランニングに向けて体の準備を整えることも大切。ランニング後のストレッチと同様、ランニング前のダイナミックストレッチは、肉離れのリスクを下げてパフォーマンスを向上させる。これまでの研究により、スタティック(静的)ストレッチ(ランニング“後”に推奨されるタイプのストレッチ)をランニング前に行うのは逆効果であることが分かっているので、走る前はダイナミックストレッチに徹しよう。
ランニング後にストレッチをする際のポイント
- ストレッチはゆっくりと。反動をつけたり無理をしたりしないよう注意して。
- 違和感や痛みが出るまで伸ばさない。
- ランニング後のストレッチはそれぞれ最大30秒キープして、左右の脚で1~2回ずつ繰り返す。
- ランニングのパフォーマンスを妨げる可能性や、筋肉が引っ張られたり裂けたりする可能性のあるストレッチは避けること。次のセクションで紹介するストレッチは無難なオプション。
- もう一度言うけれど、ランニングの“前”にするべきなのはダイナミックストレッチ。スタティックストレッチはランニングの“あと”に取っておこう。
ランニング後にオススメのストレッチ13選
ここで紹介するのはランナーズワールド編集部が厳選したストレッチ。走ったあとの気分や筋肉の張り具合に応じて、いくつか選んでもいいし全部やってもいい。このリストには、特定の筋肉を集中的にケアするディープストレッチと、複数の筋肉群を同時にケアする全身ストレッチも含まれている。
それぞれのストレッチを30秒ずつ、左右の脚で1~2回ずつリピートしよう。
1.仰向けで行うハムストリングのストレッチ
- 仰向けになって脚を伸ばし、上半身をリラックスさせたまま、片脚を持ち上げて自分のほうに近付ける。
- バリエーション:仰向けになって片方のヒザを曲げ、胸の前に持ってくる。その足に伸縮性のないバンドか紐をひっかけ、そのバンドか紐がピンと張るまで足を押し出して脚を伸ばす。
- ハムストリングの上のほうが伸びているのを感じるはず。
2.仰向けで行う臀筋のストレッチ
- 仰向けになり、足の裏を床にピッタリつけたままヒザを曲げる。
- 片方の足首を反対のヒザに乗せ、下にある脚の太ももを両手で掴んで、両脚を胸のほうに引き寄せる。
- 下の脚を掴んだまま、天井に向かって伸ばす。
- お尻の横の筋肉が伸びているのを感じるはず。
- お尻と手前にあるヒザの角度を変えれば、ストレッチが深くなる。
3.鼠径部のストレッチ
- 床に座り、足の裏を合わせてヒザを左右に広げる。
- 脚の筋肉を軽く使って、ヒザを床に近づける。
- 背筋を伸ばしたまま両足を体のほうに持ってきて、ストレッチを深くする。
4.脚を伸ばして行うふくらはぎのストレッチ
- 左脚を前に出してヒザを曲げ、足の裏を床にピッタリつける。
- 右脚を後ろで伸ばし、かかとを床に押しつけて壁に手をつく。
- 右脚を伸ばしたまま、右ふくらはぎが伸びているのを感じるまで壁に体重をかける。
5.ヒラメ筋(ふくらはぎ下部)のストレッチ
- 壁の横に立ち、片脚を前に出す。後ろの脚を伸ばして、かかとが浮かないように注意しながら前の脚のヒザを曲げる。
- 腰を引いて両ヒザを曲げる。
- 後ろ脚のふくはらぎ下部が伸びているのを感じるはず。
6.股関節屈筋のストレッチ
- 床に片方のヒザをつき、反対の脚を前に出してヒザを90°に曲げる。
- 背筋を伸ばし、肩と腰をスクエアに保ったまま腰を前に押し出す。猫背になると伸び感が弱くなるので要注意。
7.立った状態で行う大腿四頭筋のストレッチ
- 片脚で立ち、反対のヒザを曲げて、その脚の足首を片手で掴む。
- その足の甲を伸ばし、体をまっすぐにすることで、ヒザを曲げているほうの太ももの前面をしっかりとストレッチ。
- 近くの壁に片手をつくとバランスを取りやすい。
ランナーにオススメのディープストレッチ
大腿四頭筋、ハムストリングス、臀筋などを入念に伸ばしたいときは、ランニング後に次の部位別ストレッチを試してみて。
8.壁を使った大腿四頭筋のストレッチ
これはランニング後の大腿四頭筋をケアするためのストレッチ。
- 壁を背にして片方のヒザを床につく。
- 前にあるヒザを曲げ、後ろにある足のつま先を壁に当てる。
- 上半身を前に押し出し、後ろ脚の太ももの正面をストレッチ。
- 足首に問題がある人は細心の注意を払い、腰が圧迫されないように上半身を立てること。
9.ヒザを曲げて行うハムストリングのストレッチ
これはランニング後のハムストリングスをケアするためのストレッチ。体がしっかり温まった状態で行おう。
- 椅子か台の前に片脚で立ち、その上に反対の足を乗せる。
- 上にある脚のヒザを深く曲げ、胸を太ももに近づける。
- 胸を下げたまま、上のヒザをゆっくり伸ばす。
10.あぐらで行う臀筋ストレッチ
これはランニング後の臀筋をケアするためのストレッチ。
- あぐらをかいて背筋を伸ばす。
- 足をできるだけ体に近づけ、スネと上半身を平行にする。
- 背中が丸まらないように注意しながら腕を伸ばして、上半身を前に倒す。
ランナーにオススメの全身ストレッチ
ここからは複数の筋肉群を同時にケアするストレッチを紹介しよう。ランナーに無視されがちな上半身の筋肉もしっかりカバー。
11.下向き犬
これはランニング後のハムストリングス、ふくらはぎ、アキレス腱、背中、肩をケアするためのストレッチ。
- 足を腰幅、手を肩幅に開いて床につく。
- ヒザを伸ばして腰を高く上げたまま、両足のかかとを下ろす(床につかなくても大丈夫)。
- 手のひらと指を床に押し付ける。手と足の間で床を押し広げるようなイメージ。
- 左右のヒザを交互に曲げて体重が乗る脚を移しながら、ストレッチを深くする。
12.仰向けの背中ひねり
これはランニング後の臀筋、腰、背中上部、肩、腕、胸部をケアするためのストレッチ。
- 仰向けになって脚を伸ばす。
- 右ヒザを胸の前で抱きかかえ、右足を左ヒザの裏に引っ掛ける。
- 体を左側に倒して、右ヒザを床につける。
- 床の上で右腕を右に伸ばし、頭を右に向けて右腕の先を見る。
- この状態で体をリラックスさせてから反対側でリピートする。
13.肩の前屈ストレッチ
これはランニング後のハムストリングス、ふくらはぎ、肩、胸部、腕をケアするためのストレッチ。
- 足を腰幅に開いて立つ。
- 体を腰から前に倒して、体の後ろで手を組む。
- 頭のてっぺんが下を向き、大腿四頭筋がピンと張っている一方で、首がリラックスしていることを確かめる。
- 腰を痛めないよう、腰に手を当ててから上半身を起こす。
※この記事は、イギリス版『Runners World』から翻訳されました。
Text: The Runner's World Editors Translation: Ai Igamoto
ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。