日本で愛されている、しょうゆやみそなどといった発酵食品。なかでも麹菌から生まれる麹は、和食中心の日本人にとって欠かせない発酵食品だ。そんな麹を手作りすると、さらにパワーアップするって知っていた? そこで今回は、麹クリエイター・麹マスターで日本麹クリエイター協会代表を務める鈴木ひろみさんに、手作り麹の持つパワーと魅力について伺った。
麹菌は弥生時代から食べられていた?
日本人に親しみ深い「麹」。実は麹菌は弥生時代から存在していたという。
「麹菌は日本発祥で、お米から自然と発生した野性菌。その菌を発見し、発酵に使われたことが始まりです。麹菌は目に見えない微生物ですが、過去の日本人から脈々と受け継がれ、今も麹が存在しています」と鈴木さん。
黄麹菌と黒麹菌とは?
「麹菌には種類があります。まず黄麹菌(きこうじきん)と呼ばれるものは、お酒を造るときなどに使う一般的な麹です。甘酒にすると甘い物ができます。
次に黒麹菌(くろこうじきん)は、もともと泡盛などで使う麹菌で、酵素量が多くクエン酸を含みます。そのため酸っぱい麹ができあがり、塩と合わせると梅風味の塩麹が完成します。おしょうゆと合わせるとポン酢のような味わいに。また黒麹の甘酒は爽やかさが特徴。ずっと食べ続けられるおいしさなのでおすすめです」
麹菌の種類やかけ合わせによって、さまざまな味に変化するみたい。自家製麹をストックしておけば、味のレパートリーが増えそう。
市販の麹と自家製麹の違いとは?
「麹は、白米に麹菌を繁殖させて作るのが一般的。日本麹クリエイター協会では、黄麹菌と黒麹菌という2種類の菌を使います 。それぞれの菌を玄米・白米・麦といった、無農薬の穀類に繁殖させ、6種類のオリジナル麹を作っています。
さらにその6種類の麹から、塩麹、しょうゆ麹、甘酒ができ、個性豊かな18種類の調味料を作ることが可能です。手作りをすると、一般的にスーパーなどで販売されている麹とは風味が異なり、味わい深いものができますよ」
自家製麹の魅力とは?
麹には食物をやわらかくする働きとうまみ成分や肌をグッと若返らせるのに有効な酵素が含まれている。また麹を摂取すると腸内環境が整い、肌トラブルの悩みが減るんだとか。
「手作り麹は市販のものよりも麹菌をたっぷりかけているので酵素が多いです。とても体が元気になりますし、美容にも効果的です。市販の麹には保存料が入っており、流通させるために火入れをしているので、どうしても酵素量が少なくなってしまいます。せっかく麹を食べるのであれば、手作りしたものがおすすめです」
麹のメリット1: 腸内環境が整い、便秘解消にも◎
「麹には老廃物を体外に排出する力があり、特に食物繊維が豊富な麦や玄米の麹を選ぶ事で便秘の解消に繋がります。便秘持ちでない人も麹を食生活に取り入れたことによって、1日にバナナ2本分の便が出るようなった、いうケースもあります。自家製麹でつくる発酵調味料にはたくさんの菌がいますので、腸内環境が整います。さらに、腸内環境が整うとセロトニンが分泌され、幸福度が上がり、イライラすることが減ります。精神的な不調にも麹は効果的なので、気になる方はぜひ試してみてください」
便秘解消におすすめの麹
「便秘解消におすすめなのが、麹と丸麦を掛け合わせたものです。日本でも手に入る丸麦とは、玄米よりも4倍食物繊維を含む穀物。またビタミンB1などを含む栄養満点な玄米は、消化しにくいことが難点です。しかしそれを麹にすると、玄米の消化しづらい働きを抑えることができるのです」
麹のメリット2: 美肌効果やエイジングケアにいい!
「麹はビタミンB群が豊富。エイジングケアとしても有効な栄養素なので、張りのあるお肌を手に入れたい人にはおすすめ。麹を毎日食べていると、ファンデーションがいらなくなるほど、肌がキレイになります。また、麹によって腸内環境が整うのでニキビといった肌荒れを防ぐこともできます」
おすすめのスキンケア方法
「麹を使った手作り化粧水もおすすめ。精製水に、手作りした麹を混ぜるだけで、簡単に化粧水を作ることができます。こちらの化粧水は無添加なので、冷蔵庫で保管しても1週間しか持ちません。そのため、私は1週間おきに作っているのですが、本当に簡単ですぐにできるのでお手軽です。残った化粧水を容器に入れかえれば、ヘアスプレーとしても活躍します。髪がサラサラになりますよ。
また、私は麹のパックを週に1回のスペシャルケアとして行っています。目周りと口回りを避けて麹を塗り、5分間おいて流すだけの簡単パックです。洗い流す際、酵素が分解してお風呂の排水管までお掃除してくれます。もちろん自然のものなので、地球にも優しいのがうれしいですね」
麹のメリット3: ダイエットをサポート
「麹には代謝を促進させるビタミンB1が多く含まれているので、炭水化物をしっかり代謝してくれます。ダイエット中の方は塩麹やしょうゆ麹を、塩やしょうゆがわりに使用することをおすすめします。人によって効果は変わりますが、ただ毎日の食事にオリジナル麹を入れるだけで、-8kgスルッと痩せたという人も。
とはいえ、麹は糖質なので、大量摂取は控えていただきたいです。例えばダイエット時には、濃縮タイプの麹を大さじ1杯、2杯を目安に食べることをおすすめします」
麹のメリット4: 疲労が回復し、パワーがつく
「ビタミンB1を含まない白米などの精製された炭水化物を食べると代謝機能がアップしますが、その分疲れやすい体へ。しかし麹には疲労回復物質であるビタミンB1が豊富。麹を取り入れることで、疲労回復効果のあるビタミンB1を補うことができるのです。
また麹によって腸内環境が整うと、セロトニンが分泌されます。セロトニンは、夜になるとメラトニンという物質に変化するので寝付きがよくなるという働きもあります」
おすすめの食べ方とは?
「まずは塩やしょうゆの変わりに、塩麹やしょうゆ麹に変えてみてください。また、塩麹やしょうゆ麹を使って、オリジナルドレッシングを作ってみるのも◎。市販のドレッシングに使用されている油は酸化していることが多く、肌荒れなどの原因になりかねません。例えば手作りの塩麹・しょうゆ麹・甘酒を、腸にいいとされるアマニ油やリンゴ酢、バルサミコと混ぜるだけで、簡単においしいドレッシングが完成するので、手作りするとよいでしょう。
また、納豆との相性も抜群です。納豆のタレは化学調味料なのでできるだけ使わず、しょうゆ麹とアマニ油をかけて食べるのがおすすめ。ちょっと夜に小腹がすいたときに食べてもいいですね。食べる前に少し置いておけば菌も増え、より腸内環境が整いますよ。
さらに麹は肉につけるだけで、ホロホロに柔らかくなる効果も。うまみ成分をグッと引き出し、保存もよくきくようになります」
自家製麹作りは誰にでもできる?
日本麹クリエイター協会では、温度管理や湿度などを考慮した"麹箱"を開発。自宅での麹作りをより手軽にしたアイテムだ。
「麹箱は30cm×30cmで、一度で作れる麹の量は1kg。作り方は単純作業ですが、箱に入れてから48時間後に麹が完成します。麹作りに大切なのが、保温と保湿。温度のバランスが崩れると、麹になれないこともあります。麹箱は木製なので風通しがよく保温に優れているため、一定の温度を保つことができます。
酵素量をより増やすためにも温度が重要になってきます。酵素は58~60℃くらいの温度で一番活躍するため、70℃を超えてしまうと酵素が減るので要注意です。
しょうゆと黒麦麹がセットになっている黒麦麹のしょうゆ麹KITは、自宅で簡単にしょうゆ麹を作ることができるので、ぜひお試しください」
日本クリエイター麹協会の手作り麹を購入して、普段の食事に取り入れてみよう。麹の魅力をもっと知りたいと感じたら、自家製麹菌にチャレンジしてみて!
麹の保存期間はどのくらいなの?
「冷蔵でキープする場合は、1週間くらいで使い切ってください。塩分のある塩麹やしょうゆ麹にした状態であれば、冷蔵庫で2~3カ月キープできます。甘酒には塩分が入っていないので、1週間程度で食べきりましょう。温度が高いと酵素が使われていってしまうので、もし使いきれないようであれば冷凍したほうがいいです。酵素量を保つこともでき半年くらいは持ちますよ」
麹を使えば、ギルトフリーなスイーツが♡
「砂糖の代わりに甘酒を入れれば、麹入りの肌や腸にもいいクッキーやパンケーキ、チョコレートなどが作れます。罪悪感なくスイーツを楽しめますね」
ただ砂糖がいっぱいのスイーツを食べたあとは、決まって後悔する。でも自家製麹からできた甘酒入りスイーツだったら、食べたあともハッピーが続くこと間違いなし!
麹をあえるだけ・かけるだけ・食べるだけで、いつものレシピがおいしくなるのも魅力の1つ。
麹からつくる自家製発酵調味料には、ビタミンB1たっぷり。麹が完成したら、すぐに甘酒やみそ、しょうゆに使える。
毎日の食生活に麹を取り入れて、流行りの菌活にチャレンジしてみては。菌活を通して腸内環境を整え、今こそ免疫力アップを目指して!
主にSNS周りを担当。オーガニック・ヘルシーフード・K-POPなどのリサーチ力が持ち味。オーガニックワイン、ヴィーガンフードなどのキーワードから、土壌を始めとする環境問題などにも興味を持ち、記事へとつなげている。 2022年までウィメンズヘルス編集部に在籍。