加齢と共に量を増やすべき7つの栄養素
元気に走り続けるためのガイドライン。
最高の走りというのは、完璧な栄養管理によって実現するもの。長距離走やテンポの調整、スピード強化のトレーニングに励むのもいいけれど、適切な燃料を補給しないと求めている結果は出ない。
これは年齢を問わず全てのランナーに言えること。でも、高いパフォーマンスを維持するためには、年齢に合わせて摂取する栄養を変えるべきなの?
この問いに2人のスポーツ栄養士が答えてくれた。その内容をランナーズワールドからご紹介。
食生活は加齢と共に変えるべき?
ひとことで言えばイエス。ランニングに必要な栄養素の種類と量は、19~50歳まであまり変わらない。米国立衛生研究所によると、最大酸素摂取量(VO2 MAX)、筋量、代謝は25歳を過ぎた頃から少しずつ低下する。でも、主要栄養素と微量栄養素を増やすのは50歳を過ぎてからで大丈夫。
「筋量が少なければ少ないほど、代謝は遅くなります」と話すのは、公認管理栄養士のナタリー・リッツォ。「そのせいで、加齢と共に体重が増えてしまう人もいますね」
公認管理栄養士のエイミー・グッドソンが言うように、運動と健康的な食生活をずっと続けてきた人は、この状況をある程度食い止められるけれど、代謝は10年ごとに2~3%ずつ低下する。また、加齢と共に胃酸の量が少なくなるので、栄養の吸収率も低くなる。
加齢と共に増やすべき栄養素は?
グッドソンとリッツォによると、50歳を超えてから増やすべき主要栄養素と微量栄養素は以下の7つ。
*推奨栄養所要量は米国立衛生研究所のデータから。
1.タンパク質
理由:タンパク質は筋肉の増強と維持に役立つので、加齢に伴う筋量低下の抑制に効果的。
量:推奨栄養所要量は体重1kgにつき1日0.8g。よって、体重が68kgの人であれば1日55g、体重が82kgの人であれば1日65gのタンパク質が必要となる。でも、長期医療専門誌『The Journal of of Post-Acute and Long-Term Care Medicine』に掲載された2013年の論文レビューによると、健康な高齢者であれば、体重1kgにつき1日1~1.2gのタンパク質を摂取するべき。つまり、体重が68kgの人には1日69~81g、体重が82kgの人には1日81~98gのタンパク質が必要ということになる。これは、国際陸上競技連盟が2019年に改定したタンパク質摂取量ガイドラインとも一致している。
おすすめの食材:脂肪が少ない牛肉や鶏肉、魚、卵、牛乳、チーズ、豆類、ギリシャヨーグルト、大豆
2.食物繊維
理由:食物繊維は胃腸の働きを正常に保ち、コレステロール値と心臓病のリスクを下げるのに役立つ。
量:男性は1日30g、女性は1日21g。
おすすめの食材:全粒穀物、フルーツ、野菜、豆類
3.カルシウムとビタミンD
理由:カルシウムとビタミンDは密接に関連している。ビタミンDがないと、体はカルシウムをうまく吸収できない。また、骨と免疫系を強くして炎症を抑えるためには、カルシウムとビタミンDの両方が必要になる。
量:51~70歳の男女には1日600IU、71歳以上の男女には1日800IU。
おすすめの食材:ビタミンDが豊富なのは、脂が多い魚、カルシウム/ビタミンDが強化された牛乳やシリアル、卵、マッシュルーム、タラ肝油。シード、チーズ、ヨーグルト、イワシ、サーモン、牛乳、アーモンドにはカルシウムがたっぷり。
4.ビタミンB12
理由:赤血球の形成、神経機能、DNA合成にはビタミンB12が必要。でも、50歳以上の成人の10~30%は胃の酸性度が低下して、ビタミンB12がうまく吸収できなくなる。
量:男女ともに1日2.4mcg。
おすすめの食材:魚、牛肉、豚肉、鶏肉、卵、牛乳、乳製品、ビタミンB12強化シリアル
5.カリウム
理由:カリウムは、筋肉を収縮させたり、鼓動を能率的に打ったりという日常的な身体機能に欠かせない電解質。カリウム不足は高血圧、心臓病、糖尿病などの問題につながりかねない。どれも年齢にかかわらず気を付けるべき疾患ではあるけれど、高齢期に入ったらなおのこと要注意。
量:男性は1日3,400mg、女性は1日2,600mg
おすすめの食材:アプリコット、レンズ豆、プルーン、レーズン、どんぐりカボチャ、ジャガイモ、バナナ、大豆、インゲン豆
6.オメガ3脂肪酸
理由:オメガ3は、体内の炎症と心臓病のリスクを減らし、善玉コレステロール(HDL)とトリアシルグリセロールの量を増やす。また、加齢と共に低下する認知機能の維持にも役立つ。
量:男性は1日1.6g、女性は1日1.1g
おすすめの食材:フラックスシードオイル、チアシード、クルミ、サーモン、ニシン
7.鉄分
理由:赤血球が筋肉に酸素を届けられるのは鉄分のおかげ。鉄分は、糖(運動中の筋肉の主な燃料源)を代謝する上でも重要な役割を果たす。
量:男女を問わず1日8mg
おすすめの食材:鉄分が強化されたシリアル、牡蠣、レンズ豆、ホウレン草、牛肉
栄養不足のサインとは?
リッツォによると、極度の疲労、頭痛、めまいは栄養不足の明らかなサイン。カルシウムが不足すると、爪がもろくなったり、骨関連のケガが増えたりすることも。また、便秘や消化器系の問題は食物繊維不足のサイン。
グッドソンの話では、ワークアウト後のリカバリーにやたら時間がかかる場合にも栄養不足が疑われる。
上記のような症状が見られたら、迷わず医師に相談しよう。実際に栄養不足の可能性はあるけれど、こういった症状は他の病気にも比較的よく見られる。
とはいえ、グッドソンが言うように、症状の有無にかかわらず定期的な健康診断は受けておくべき。
「健康診断を毎年受けて自分の状態を把握しましょう。そして、手遅れになる前に必要な対策を講じましょう」
マルチビタミンのサプリメントを飲めば済むと思っているかもしれないけれど、栄養不足の診断には血液検査が必要になる。マルチビタミンが体に悪いと言っているわけではない。でも、まず医師に相談した方が安全で確実。それに、普段から高品質で栄養豊富な自然食品が中心の食生活を送っていれば、マルチビタミンに頼る必要はたぶんないはず。
Text: Danielle Zickl Translation: Ai Igamoto