パフォーマンス力向上のために摂るべき5種類の微量栄養素って?
自己新記録を出す秘訣は食事の摂り方にある。
ランニングの自己ベストを伸ばしたい? ハムストリングスの活性化、スタミナ強化、スプリントよりも手っ取り早く自己新記録を出す方法があるみたい。その詳しい方法をイギリス版ウィメンズヘルスからご紹介。
米オハイオ州立大学の新たな研究では、試験的なサプリメントを30日間摂取した女性たちが5kmのタイムを平均54秒伸ばし、走った直後に25分間自転車をこいだうえ、90秒の踏み台昇降テストの結果を40回から44回に向上させた。
彼女たちは、もともとサイクリストだったわけじゃない。この劇的なパフォーマンスの向上をもたらしたのは、私たちに不足しがちな5種類の栄養素。
微量栄養素とは?
オハイオ州立大学の研究で使われたのは「微量栄養素」のサプリメント。主要栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質)とは違い、話題にあがることはほとんどない。
「でも、微量栄養素であるビタミンやミネラルは、健康を維持するうえで非常に重要な役割を果たしています。体液バランスから細胞代謝まで、体の全てに影響を与える栄養素です」と話すのは、スポーツ栄養士のアシュリン・ピゴット。「微量栄養素は食事から摂取するしかありませんが、通常は少しでいいので、幅広く食べていれば大丈夫です」
にもかかわらず、微量栄養素欠乏症は驚くほど流行している。イギリスでは女性の3分の2が鉄(赤血球が体中に酸素を運ぶのを助けるミネラル)不足、5人に1人が亜鉛(免疫系が細菌と戦うのと助けるミネラル)不足という状態。
この見過ごされがちな微量栄養素欠乏症が、女性の運動パフォーマンスに大きな影響を与えている。この研究論文の筆者でオハイオ州立大学人間栄養学教授のロバート・ディシルヴェストロによると、若い女性には特に、何らかの微量栄養素が不足している。「しかも多くの場合、不足するのは運動中の細胞の働きに関与する栄養素です」
微量栄養素不足の要因のひとつは生理。摂食障害を専門に扱うスポーツ栄養士のレニー・マクレガーによると、経血量が平均的な(重すぎず軽すぎずの生理が5日間続く)女性は、1回の生理で約1mgの鉄を失う。
月経過多で生理が重い人は、鉄の喪失量が5~6倍になることも。「生理周期に応じた体の変化や栄養摂取の重要性を十分理解している女性は少ないですね」とマクレガー。「普段からエクササイズをする人は特に、それを理解する必要がありますよ」
微量栄養素が最も不足しがちな人は?
「エクササイズをする人、中でも特にランナーは、さまざまな理由から鉄が不足しがちです」と説明するのは、英マンチェスター・メトロポリタン大学栄養学上級講師のバルトシュ・ブチコフスキ博士。「ストロークのたびに、その圧で少量の赤血球が破壊されます」
持久力を必要とする運動では、発汗を通して鉄が失われることもある。また、運動中は腸への血流が減少するため腸壁に微細な裂傷ができ、そこから鉄が逃げていくこともある。
鉄が不足すると、運動中の筋肉に送られる酸素の量が減ってしまう。アスリートが有酸素持久力の測定に使う最大酸素摂取量(筋肉、心臓、肺が摂取する最大の酸素量)も、血液が運べる酸素量によって決まるけれど、それにはもちろん鉄が必要になる。
サプリメントで補うべき微量栄養素とは?
鉄は不足しがちな微量栄養素の一例にすぎない。「ベジタリアンやヴィーガンの台頭により、ヨウ素やビタミンB12が不足する人も増えています」とマクレガー。イギリスでは大半の人にビタミンDも不足している。「冬は特にそうですし、超アクティブな人は、基準量以上のビタミンDを摂取する必要がありますね」
マクレガーいわくエクササイズを頻繁にする人は、ビタミンDの血中濃度が90以上でなければならない。でも、その値を自分で測定するのは不可能。だからこそ「ビタミンDはサプリメントで補いましょう」とマクレガーはアドバイスする。
レバーや牡蠣に多く含まれる銅も不足しないよう注意が必要(レバーや牡蠣ほど多くはないけれど、アーモンドとごまにも銅が含まれている)。基準量以上の銅を摂取すれば、サイクルタイムが上がることを示す研究結果も存在する。ディシルヴェストロ教授によると、銅はシトクロムC酸化酵素(好気性エネルギー代謝の末端酵素)の一部。
他の銅酵素は、筋肉痛の主な要因である酸化ストレスと戦う。ディシルヴェストロ教授によれば、ヴィーガンでも十分な銅を摂取することは可能。
人口の20%には亜鉛も不足している。これまでの研究により、亜鉛不足は筋肉痛を悪化させることが分かっているので、何とかして避けたいところ。亜鉛不足を補えば、最大酸素摂取量も高くなる。
「鉄欠乏性貧血やビタミンD欠乏症のような微量栄養素欠乏症は、血液検査で分かります」とピゴット。「でも、欠乏症を防ぐには、幅広い食材をバランスよく食べるのが一番です」
最も不足しやすい5種類の微量栄養素
1.鉄
鉄分を補うと、筋肉に届く酸素量が増えるので、持久力と最大酸素摂取量がアップする。
赤身の肉に勝る供給源はないけれど、ホウレン草や鉄が強化されたシリアルからも摂取できる。肉以外の食材に含まれる鉄は体に吸収されにくいので、ビタミンCの摂取量を増やして吸収を促進しよう。
2.銅
銅は、筋肉のエネルギー生成過程の最終段階で使われる。筋肉痛を引き起こすフリーラジカルを体から取り除くのにも役立つ。
レバーと牡蠣。ヴィーガンでもアーモンドやごまをふんだんに食べていれば、十分な銅を摂取することは可能。
3.亜鉛
亜鉛は筋肉の回復に不可欠なので、体が亜鉛不足になると筋肉痛になりやすくなる。亜鉛は、免疫系や最大酸素摂取量の向上もサポートする。
甲殻類、脂身の少ない肉、卵には亜鉛がたっぷり。ヴィーガンなら、ホウレン草、豆類、ナッツ、シードで補って。
4.ホスファチジルセリン
適量を摂取すれば、運動後の疲労が緩和し、反射神経が良くなり、ランニングやサイクリング中も疲れにくくなる。
食事から摂取するなら脂ののった魚、もつ、大豆がオススメ。植物性なら、少量ではあるけれど白豆から摂取可能。
5.カルニチン
カルニチンは、細胞のミトコンドリアに脂肪酸を運ぶのに使われる。このプロセスが停滞すると、ワークアウト中に力が湧かない。
カルニチンを最も多く含むのは赤身の肉。乳製品、タラ、アスパラガスにも少量のカルニチンが含まれている。
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Emily Pritchard Translation: Ai Igamoto