忙しい毎日の自炊は大きな負担。

かといって外食ばかりになると栄養も偏り、太ってしまう人も多い。そんな時にパーソナルトレーナーの林健太さんがおすすめするお手軽メニューがあるという。

「どこのスーパーでも売っているお刺身は、自炊に手が回らないときに最適です。豊富なタンパク質や不足しやすい良質な脂質を含むのは当然ですが、魚以外にも注目すべき食材があります」

刺身のパックには魚だけでなく、薬味や彩りの食材が入っている。魚以外の食材は単なる飾りつけとして認識されていたり、臭い移りが気になり食べないという人も多いが、そこにも多くの栄養が隠されていると林さん。

「これらの食材には意味や役割があります。特に植物に含まれるフィトケミカルには抗酸化作用やアンチエイジング作用があるので、捨てることだけは避けましょう」

実はお刺身のパックに隠されている、多くのアンチエイジング食材を解説してもらった。

①ワサビ

薬味の代表であるワサビは、実はキャベツやブロッコリーと同じアブラナ科の野菜。

アブラナ科の野菜には抗がん作用があるとされており、アメリカ国立がん研究所が作成したデザイナーズフードピラミッドにも掲載されたほど。

「ワサビの辛み成分であるアリルイソチオシアネートには抗菌、殺菌効果があるので魚の生食には欠かせません。すりおろして細胞が壊されることでアリルイソチオシアネートが生成されるので、辛みの強いワサビほどその効果が期待できます」

他にもアルコール分解で生じる毒素から肝臓を保護してくれる働きもあるので、晩酌の際の刺身にワサビは欠かせない。

薬味独特の苦味や辛味が苦手という人もいるかもしれないが、克服と共に健康的に若返ると考えておこう。

②ツマ

assorted sashimi
DigiPub//Getty Images

「大根にもワサビと同じアリルイソチオシアネートという成分が含まれています。細胞を壊すことで生成されるので、よく噛んで食べることが重要になります」

さらに大根には消化酵素が多く含まれている。タンパク質や脂質の多い食品はどうしても胃腸の滞留時間が長くなるので、肉や魚とは非常に相性が良い食材。

口直しによく噛んで食べることで消化も促進し、さらには肌荒れ防止効果も期待できるそう。

「ニキビや肌荒れに対する一番初めの対処法と言えば外側からのスキンケアかもしれませんが、そうしたケアでなかなか変化が感じられないという人は、腸の環境に問題があるかもしれません。日頃からよく噛んで食べることと、添えられている消化促進の薬味を残さないこともスキンケアの一つです」

ツマは刺身の盛り付けに高さとボリュームを出し、購買意欲もかき立てる重要な存在。魚から出る水分を吸収し、鮮度も保ってくれるのでまさに影の立役者だ。

③大葉

和風ハーブの代表格でもある大葉の栄養素は、野菜の中でも群を抜いて優れている。もちろんサラダのように大量に食べることは稀なものの、少量でもその健康効果は期待できる。

「βカロテンの含有量は野菜の中でもトップクラスです。βカロテンは体内で必要に応じてビタミンAに作り替えられ、強力な抗酸化作用を発揮します。粘膜の保護や肌の新陳代謝にも関わるので、内側からのアンチエイジングには欠かせない栄養素です」

さらには老化の原因ともなる活性酸素を除去する能力が非常に高い。たかが数枚の大葉でも、栄養密度の高い野菜なので必ず食べるようにしてほしいと林さん。

「香りの元となるペリルアルデヒドには抗菌、防腐効果はもちろんのこと、脳神経因子であるBDNFの減少を食い止めてくれることで、抗うつ効果も期待できます」

心身の健康やアンチエイジングに最も効果を発揮してくれる野菜が大葉と言っても過言ではない。

④菊
sashimi with ice in container
Furuya Chihiro / EyeEm//Getty Images

刺身に彩りや美しさを添えるタンポポのような小さな花は食用菊。おそらく最も目にするものの、食べることがない食材かもしれない。

しかしその色を見て分かる通り、緑黄色野菜としての栄養が豊富。飾りとしてのイメージが強い菊も、花弁を散らすことで見た目も鮮やかになり栄養だけでなく食感も楽しむことができる。

「抗菌や抗酸化作用はもちろん、美肌や美白効果で有名なグルタチオンの産生能力を高めてくれる栄養素が含まれています。グルタチオンは肝機能を高め、解毒作用にも働きかけるためアンチエイジングに役立ちます」

中国では古くから延命長寿の花として、薬としても用いられてきた菊。歴史に学ぶアンチエイジング食材だ。

⑤紅たで

聞き慣れない食材名かもしれないが、刺身に添えられている小さな赤紫の葉っぱが、紅たでと呼ばれる薬味。ピリッとした辛みと見た目の美しさで刺身にアクセントを加えてくれる。

「辛みの成分であるポリゴジアールは抗菌効果殺菌、抗菌効果に優れています。また、色素成分のレスベラトロールは、老化の制御に働くサーチュイン遺伝子を活性化させてくれます」

紅たでは、本葉が出る前の若い芽(スプラウト)であることから、栄養や酵素を豊富に含んでいる。その中の特異的な成分がメラニンの形成を抑え、シミのできにくい肌を作り上げてくれる。

「刺身に添えられている薬味の抗菌、抗酸化作用は、言い換えるなら食材そのものへのアンチエイジング。鮮度を落ちにくくする作用もあるので、食材の老化防止とも言い換えられます」

主役を引き立てる名脇役は、料理にはなくてはならない存在。

彩や風味を添えて味を引き立てるだけでなく、我々の肉体の鮮度も守ってくれる。

Headshot of 林健太
林健太
NESTA公認トレーナー SIXPADオフィシャルトレーナー

 幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
 卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
 選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/