「炭水化物は体に悪い」と何度も聞かされてきた人にとって、その考えを払拭するのは難しい。でも、これは加工された炭水化物(精白パンや甘いキャンディ)を食べすぎている場合の話。今回は、最近注目を浴びているレジスタントスターチ(デンプン)のメリット、豊富に入っている食品をご紹介する。

炭水化物は1種類だけじゃないし、体に悪いものでもない。その一例として、全粒穀物には健康とパフォーマンスの最適化に欠かせない栄養素が豊富。食物繊維には、お通じを改善し、コレステロール値を下げ、心臓を元気にする力がある。炭水化物はトレーニング前後の燃料補給にもぴったり。

そして最近、体重の増加を防ぎ、腸の健康をサポートする炭水化物として注目を浴びているのが“レジスタントスターチ”。

大半の食べものが処理される小腸で分解されて単糖類になる一般的なデンプンと違い、消化されにくく、大腸のなかにある結腸に到着するまで姿を変えない。そのためレジスタントスターチは食物繊維に分類される。

一部の地域や民族は、レジスタントスターチの恩恵を長きにわたり受けてきた。そして近年の研究により、このデンプンが“本当に”体によいこともわかってきた。運動する人ならレジスタントスターチを取り入れたほうが得をする、その理由をみていこう。

レジスタントスターチをもっと摂るべき理由

これまでの研究結果は、レジスタントスターチが糖尿病、一部のがん、肥満といった多種多様な問題の予防に役立つ可能性を示している。その理由は、このデンプンが結腸の細菌によって消化される仕組みにある。レジスタントスターチは、善玉菌の数を増やして腸内細菌叢を元気にするプレバイオティクスとして働き、結果的に消化器系と免疫系の状態を改善させる。ハードなトレーニング期間中は、これがとくに重要になる。

また、消化管の細菌がレジスタントスターチを食べると、酪酸エステルをはじめとする短鎖脂肪酸が産生される。そして、この短鎖脂肪酸が代謝の調節や免疫力の強化に役立つ可能性もある。高価なコンブチャを買わなくても、これだけの恩恵が受けられるなんてすごい。

普段の食事にレジスタントスターチを取り入れれば、体重も減りやすくなるかもしれない。例えば、肥満学専門誌『Obesity』と栄養学専門誌『Nutrition Journal』に掲載された論文によると、r絵ジスタントスターチの摂取量を増やせば、食欲を調節するホルモン(レプチンなど)の量が変わり、満腹感が終日にわたって続くようになる。これは食べすぎを防ぐうえで大事な要素。

栄養学専門誌『Nutrition Journal』掲載の論文によると、研究チームは70名の女性に4種類の朝食パンケーキを出した。この4種類のパンケーキは、普通のデンプン、ホエイプロテインを加えた普通のデンプン、レジスタントスターチ、ホエイプロテインを加えたレジスタントスターチのいずれかで作られていた。その結果、ホエイプロテイン入りレジスタントスターチを含むパンケーキを食べたあとは、ほかの種類のパンケーキを食べたあとより脂肪燃焼率と満腹感が高くなることがわかった。この研究結果は、レジスタントスターチとタンパク質の組み合わせが体重管理に役立つ可能性を示している。

レジスタントスターチで脂肪燃焼率が高くなるのは、レジスタントスターチの“産生熱量”が高い分、体が消費するカロリーが増えるから。食物の産生熱量は、食物分子を分解するに必要なエネルギーの量。レジスタントスターチの分解には、普通のデンプンより多くのエネルギーが必要になる。しかも、レジスタントスターチは消化されないので、その食べもののカロリーの一部としてカウントされない。

精製糖質や甘い炭水化物は消化されやすいのに対し、レジスタントスターチは消化に時間がかかるため、摂取するとインスリン感受性が高くなり、食後の血糖値が下がる。その結果、アメリカだけで3000万人以上が抱える2型糖尿病のリスクが下がるという。

さらに、レジスタントスターチは赤身肉の摂取による大腸がんのリスクも下げるという研究結果も存在する。ワークアウト後、ハンバーガーでタンパク質補給をしている人にとっては朗報。

でも、一般的な食生活で摂りうる量のレジスタントスターチを使用した大規模な研究結果がない限り、このデンプンで体重が減るとはいい切れない。

レジスタントスターチの摂取量を増やす方法

別の栄養学専門誌『The Journal of Nutrition』の論文によると、驚異的なメリットがあるにも関わらず、理想的なレジスタントスターチの摂取量(1日10~15g)を満たしているアメリカ人は非常に少ない(正式な推奨摂取量がないため)。

普段からレジスタントスターチと食物繊維の摂取量が少ない人は、膨満感やガスといった消化不良の症状を防ぐため、少しずつ摂取量を増やしていったほうがいい。

摂取量を増やしたいなら、この7つの食品を取り入れてみて。

1.ミューズリ

porridge with blueberries, nuts and banana
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シリアル食品の一種。デンプン質の食品は“生”で食べたほうがいい。レジスタントスターチの構造は熱によって壊れてしまうので、調理済みのオーツ麦には生のオーツ麦よりアミロースというレジスタントスターチが少ない。そのため、非加熱のオーツ麦、ナッツ、ドライフルーツを使ったミューズリは朝食にピッタリ。ヨーグルトをかけてもいいし、ミルクにひと晩浸してもいい。

2.グリーンバナナ

close up of bananas growing on tree
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皮が緑色のグリーンバナナは、完熟したバナナよりもレジスタントスターチが80%も多い(バナナのレジスタントスターチは完熟すると糖に変わってしまうため)。ランニング後のスムージー、ヨーグルトやシリアルのつけ合わせには、熟しておらず甘味の少ないグリーンバナナを使ってみよう。ベーキングには、未熟なバナナを乾燥させて砕いた調理用バナナの粉がオススメ。

3.ジャガイモ

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茹でたジャガイモは冷蔵庫で冷やしてから使うといい。調理後に24時間ほど冷ますと、アミロペクチンという消化性デンプンがアミロースというレジスタントスターチに変わるので、消化される炭水化物の量が減る。

4.お米

directly above shot of rice in bowl on table
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お米に含まれるレジスタントスターチの構造は炊飯過程で失われてしまうけれど、炊いたあとに冷やしてあげれば、いくらかは難消化性に戻る。つまり、炊きたての玄米よりも冷めた玄米のほうがヘルシー。臨床栄養学専門誌『Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition』掲載の論文によると、もっとも効果的な冷却時間は24時間だという。

お米は1週間分炊いてから小分けにしておき、チャーハン、穀物ボウル、ランチのサラダなどに使おう。この“温めてから冷ます”テクニックを使えば、ほかの穀物製品(パスタなど)のレジスタントスターチの量も増やせる。冷めた穀物やジャガイモを温めることでレジスタントスターチがどのくらい増えるかは、今後の研究で明らかにされていくはず。

5.カシューナッツ

flat lay of cashew in glass bowl
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ナッツのなかでも、カシューナッツにはレジスタントスターチがとくに多いといわれている。スナックとしてそのまま食べてもいいし、オートミール、ヨーグルト、サラダのトッピングにしてもいい。

6.豆類

top view of leguminous seeds on rustic wood table
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インゲン豆、黒豆、ヒヨコ豆などの豆は、レジスタントスターチのヘルシーな供給源。調理後の豆100gには3~5gのレジスタントスターチが含まれており、冷蔵庫で数時間冷やせば、その量がさらに増えるそう。

7.大麦

barley grains
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大麦もレジスタントスターチを含む全粒穀物の一種で、温かいスープや穀物ベースのサラダにピッタリ。全粒穀物には“白い”精製穀物よりもレジスタントスターチが多い傾向にある。

※この記事は、ランナーズワールドから翻訳されました。

Text: Matthew Kadey, M.S., R.D. Translation: Ai Igamoto